君との出会い
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これはまだ、オイラと君が出会った頃の話………。
突然現れた君は、オイラの名を知っていた。しかも七星名を。
初対面で見破られたのは初めてだった。理由を話すからと口を開けば懇願され、聞いてみれば……この者は信じ難いことばかり言った。
どうして面倒を見る、なんて言ったのだろう。でもオイラが手を差し伸べ無かったら、この者は独りなのだ、とその時は思った。
大事な金銭を使い、彼女の入用のものを買い揃えた。この世界の服の着替えまで手伝わされた。
部屋も出費だが別々の部屋を取ったというのに、勝手に一つにされた。
そして今……。
「井宿、そこにいるよね!?」
「……いるのだ」
オイラは厠の前にいる。
なぜ……オイラが………。
「ふぅ……ひとまずスッキリしたわ」
「そういうことは口に出さないで欲しいのだ」
「あら、女は言うなってこと?やだ、井宿って理想高いの?」
「……………」
付き合ってられない。この数刻で彼女のことがわかってきた。
遠慮がない。そして、恥じらいもない。
こんなものなのだろうか。
……いや、自分の知る人の中にはいない。たぶんこの者だけだ。
「井宿、ここってお風呂もあるんでしょ?汗流したい」
「……それは湯に浸かりたいと言うことなのだ?」
「そうそう!ある?」
「共用のがあると言っていたのだ」
「共用!?混浴!?」
「……男女は別なのだ」
「あ、なんだ。もうビックリするじゃない」
「その発想にこちらがビックリするのだ」
「だって何でも有りそうだもの。この世界って」
屈託のない顔で笑う。なんでもあり、で片付けられるのだろうか。
異世界の人間はどうやらオイラの持つ感覚とは違うらしい。
「井宿!早く早く!!」
「……早く、とは?」
「お風呂行こうよ!」
「だあ!?」
なぜ、オイラがこの者と行かなくてはいけないのだ。
面倒は見る、とは言った。言ったが……ずっと一緒にいなくてはいけないのだ?
それは勘弁して欲しい。
今まで独りの時間が多かった。人に構ってやれるほど出来た人間でもない。
それに……干渉し合うのは……居心地が悪い。
「じゃあいいわよ。一人で行ってくるわ」
「ゆっくり入ってくるといいのだー」
思いっきり顔を作って笑い、送り出した。
こういう時、この面は便利だ。
少しだけ彼女は不満そうに口を尖らせながらも、その場から去っていった。
これで暫く一人になれる。このあとどうすればいいのか考えられる。………はずだった。
「ーーちり……!!」
部屋で静かに一人でいると、何かが聞こえた。
「ーーーちちり……!!!」
まただ。また……聞こえる。
今のは……紛れもなく……オイラの名を呼ぶ声。
段々と近づいてくる。
「ちちり………!!井宿ったらーーー!!」
「なんなのだっ!?」
スパーン!と勢いよく開け放つ。その声の主が目に入りオイラは硬直した。
「ちちりぃ~~!!」
オイラの姿を捉えたかと思ったら、そのまま体に衝撃が降りかかる。次いで鼻先をくすぐる石鹸の香り。
首にポタポタと落ちてくる水滴。
オイラは飛びかかられたと察した。
動け……ない。引き剥がさなければ。
なんだ。この者は何を考えている!
それなのに、彼女はお構いなしに体をぎゅうぎゅうと締め付けてくる。
「な、何をするのだ……!?」
「出たっ……出た出た出た!!」
「………は?」
肩のところで顔を埋めながらも必死に叫んでいる。
これは……彼女は刺客とかではなさそうだ。
「何があったのだ?」
そうであれば話は変わってくる。とりあえず離れてもらわねばと肩に手を置けば、ぐっしょりと濡れた服に手が思わず引っ込む。
「ちゃんと拭かなかったのだ!?」
「……出ると思ったのよ……いつか出ると!!」
バッと顔を持ち上げたと思ったら、いきなり自分から離れた。
触れていた箇所を見れば、前身頃はしっとりと湿っている。
「……オイラの服まで濡れてしまったのだ……」
なんと面倒なことを……と見上げると立ち上がった彼女はオロオロと行ったり来たりしている。
「一体、どうしたというのだ……」
しかも、きちんと見れば着の身着のままで出てきたのが丸わかり。
大きく乱れているし、水分を吸って肌に密着しているところもある。
その長い髪は下ろされ、ポタポタと水が滴る。それがまた背中を濡らしている。
本能的に見たらいけない、と目を逸らした。
「とりあえずちゃんと拭くのだ。床が濡れる」
「……どうしよう……脱衣場にブラ置いてきてしまったわ……とりあえず羽織ってきただけだったから……」
「は?」
やっと口を開いたと思ったら、聞いたことのない言葉を言い放った。
何を置いてきた、と?
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