ふしぎラビリンス2~居場所は自分で~
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「……ここに、置いてくれやて?」
「お願いします!」
翼宿の声が一段と低くなった。
ああ、これは“翼宿”ではなく、完全に山賊の頭・幻狼の雰囲気だ。
「ここがどこかわかっとんのか」
「わかってます。ここを追い出されたらどうしていいかわかりません」
「村に連れてったるわ。そこで世話になったらええやろ」
「ここがいいです!!」
「…………」
「お願いします!」
「……この山に女はいらんねん」
「そこを……何とか……」
ああ、それを言われたら困る。
男にはなれない。だけど……。
ここで諦めるわけにはいかない!!
「ちょいとその剣を拝借!!」
「っ………」
私は近くに立っていた旺牙の腰に差してあった剣をスルリと抜いた。
抜いた途端、無表情だった男に焦りの表情が浮かんだ。翼宿も私が手にした剣に手を伸ばすものの、私は数歩下がって逃げた。
「おい!何する気やねん!!」
「私!掃除、洗濯、家事、その他もろもろ、結構できますよ!いい物件ですよ!どう見ても男所帯のこの屋敷を綺麗にします!清潔第一に!だから……」
剣を首に当てた。
だけども刃は首にじゃなくて……掴んだ髪の束に……あてられた。
「おい!」
翼宿の声を無視して私は一気に引いた。
束ねたところから髪が切り落とされる。
「女と思ってもらわなくて結構!優しさも求めないから!だから、ここに住まわせて!」
「お、のれは……」
「あーあ……なんちゅーことを」
攻児が落とされた髪を拾い上げる。
落ちた毛束を見て意外にも長く伸びていたことを知った。
「髪を切るっちゅうのはそれだけの覚悟があるんやろな?」
「……あるよ」
彼もまた思い出しているのだろうか。仲間が長い髪を切り落とした瞬間を。
私も、目に焼き付くくらい読み込んだあの瞬間を。
「ええやろ。お前の根性、認めてやる」
「ほ、ほんとに!?」
「せや。お前、名前は何や」
「あ、……南央、です」
「南央か。ほんなら、南央。今日からここに住まわせたる!」
や、やった!ああ、よかった!
とりあえず寝床は確保できそうだ!
「にしても、や。お前が簡単に剣を奪われるとは思わんかったで、旺牙」
「……すんまへん。油断しとりました……」
翼宿が私から剣を奪うと、それを旺牙に無造作に投げた。
あぶなっ!と思ったのもいらぬ世話だったようで、旺牙はパシッと柄を掴むと、しなやかに鞘に収めた。
「こいつは剣の扱いがいっちゃん凄いヤツや。よう懐に飛び込んだなあ。切り殺されとっても知らんで」
「へ、へえ……」
もしかしなくても切り落としてたのは髪じゃなくて、首だったかもしれないわけか。
……もう二度としない。
この人には近づかないでおこう。
「頭……叱責はどない事でも受け入れます」
「叱責!?私が剣を取ったから!?」
「剣を奪われるやなんて有り得へんことや……」
あれ、この旺牙って人、時々口調変わるなあ。
「今のは誰も想像しとらんかったわ。気にせんでええ、と言いたいところやけどなあ。どない思う?攻児」
「こいつはそんなんじゃ気ィ済まへんやろな」
「へい。何でも、罰は受けますよって」
うわ、なんか大変なことになってきてるよ。
私のせいなのか?そうだろうね、これね!
「ほんならお前に言い渡したる」
旺牙は翼宿の前に片膝をついた。
私は、固唾を飲んで見守るしか出来なかった。
「お前に」
何言われるんだろ。痛いことじゃないよね?
か、可哀想だよ、それは……!
「こいつの面倒、見てもらうことにする。よし、もう決めたで」
「…………へい」
…………は!?
「ちょ!え!?」
「ほなここの事は教えてやり。攻児、行くで」
「はいよ」
………いやいや待ってー!!
さっき近づかないようにしようって決めたとこ…!!
「た、翼宿!ちょっ……!」
手を伸ばすも、無情にも目の前で扉が閉まった。
もう彼らの姿は見えない。
「うそーん……」
「それはこちらの台詞だ」
……やっぱしこいつ……!
人によって口調使い分けてやがる……!!