ふしぎラビリンス2~居場所は自分で~
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「こいつなん?異世界から来たっちゅうのは」
「おう。ホンマかどうかわからんけどな」
目の前で翼宿と攻児からの視線が私に向けられる。
み、見られている!!顔がいい!
「……おい、お前……」
は、話しかけられた!!
これは本当に私に声をかけているんだろうか。
ほんとに?私に?
「なんかキョロキョロしとんで」
「……お前や!お前!そこの露出狂のお前や!」
「あ!はい!……いや。最後の、何?」
会話してることにテンションが上がったのに、一気に下がった。
露出狂、だと?
「けったいな服で山に入りよって……なんやその服は」
「まあ、待ちぃや、幻狼。まずは服やで。目のやり場がないわ。旺牙!渡したってや!」
「へい」
攻児が脇に控えていた旺牙を呼びつけると、彼は私に服を手渡した。
ありがたい!受け取ってそれを素早く着込む。
「もうええか?」
あれ?気づけば3人が3人とも視線を外している。
「お気づかい、すんませ……」
「あとで難癖つけられたら厄介やからな」
「せやせや。着替えは見たらあかんで。幻狼もようわかってきたやん。あれであとで金を要求されたら割に合わへんからなあ」
……一瞬、感謝した心を返してくれ!!
あれでとはなんだ!あれで、とは!
「難癖なんてつけませんよ……あのぉ……私、どうやったら帰れますかね」
「……その前に聞きたいことあんねん」
そう言うと翼宿は神妙な顔つきのまま、小さく呟いた。
「お前……何モンや」
「……………」
そのまっすぐ見下ろされた目が、“正直に話せ”と言っている気がした。
眼圧がすごいから。
「自分でもわからないんですよ。ただ……仕事してたら紅い鳥が……」
「紅い鳥やて?」
そうか。今ならわかる。
あの鳥は……朱雀だったのか。彼らもまた何かを察したのか、顔を見合わせた。
「意識を失う前に……何か聞こえたんですけど……」
「何かてなんや?」
「……“巫女の力に。巫女を助けよ”って」
「巫女やて?」
「それ、あのコのことやろか」
「美朱なんか……。お前は美朱を知っとるんやな」
「だから一方的に……」
「あいつは元気にしとるんやろな!?鬼宿……鬼宿も一緒なんやろ!?」
現実を突きつけられる。美朱は鬼宿も現代に戻ったんだ。鬼宿は転生して、そして……いずれ……。
そういうことか。私は、“今”から彼女の力になれ、と。
それならいっそ……最初からだったらよかったのに。
「元気だと思いますよ。鬼宿だってちゃんと転生……」
そうだ。転生はしたものの彼には記憶がない。
鬼宿だった時の記憶はいま、ここにも……。
「翼宿!玉!玉持ってる!?」
「!!」
「おお……異界の娘はんは大胆やなあ……」
「……頭は立派なもん、持ってはります」
「旺牙!なに言うとんのじゃ!!」
「せや。オレの方がええもん持っとる」
「おのれは黙っとれー!!お前もなんちゅーこと口にするんや!」
えーと……なにが始まったの?
「あ、違う!“石”のこと!これっくらいの石の玉!!」
そう言い直すと翼宿はわなわなと震えだした。
攻児に至っては声を殺してくつくつ笑っているし、旺牙も一瞬、それこそ息をフッと吐いただけだが、あれは笑ったに違いない。
「紛らわしい言い方すんな、ボケェ!!」
「間違っただけじゃん!!」
「えらい違いやわ!!」
「勘違いしたのは幻狼だけやけどな」
「なっ!?なんやて!?」
「ねえ!!もういいから!それより持ってるの!?」
「あ?お前はこれのこと言うとんのか?」
自分の腰に下げている巾着から青い石を取り出した。
とても、綺麗な石だった。
「うん……それだよ。なんだよ……ずっと持ってるなんてさ」
「何なんやこれ……こっちに戻ってきた時にもう持っとったんや……なんや気になってしもてな」
翼宿の手のひらに乗せられた石を覗き込んだ。
綺麗な石。これが……鬼宿の記憶。
「……大事に持ってて。これはとても大切なもの」
「やっぱ大事なもんやったか」
ああ、覚悟を決めなきゃいけない。
朱雀が私を選んでくれたのなら……私はそれに応えなくては。
たとえ……この世界にもうあなたは生きていなくても。
「お願いがあります」
私はその場に膝をついた。
何をどうしたらいいかなんてわからない。
私に出来るとも思えない。だけど……。
来た以上は、何か理由がある。
その理由を知るためにも、私は……この世界で生きていかなくちゃいけない。
それにはあなたに頼るしかない。
「ここに、置いてください」
この人から離れるわけにはいかない。
いつ彼女達がここに来るのかわからないのだから。
ここにいなくては……。
言葉を失う3人の前で、私は頭を深々と下げた。