ふしぎラビリンス1~夢は現実に~
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「柳宿のことも知っとんのか……?」
ああ、だめだ。何も考えられない。
「……?っ、おいっ!」
足の力がなくなって、カクンと崩れ落ちた。
項垂れる私を翼宿が瞬時に腕を掴むものの、すでに地面に座り込んでいた。
「……そ、か。死ん……死んで、るんだ……」
私は一体……どうしてこの世界に来たのだろう。
来るのが遅すぎるよ……。
「……頭、どうされるんですか」
「チッ……呆てしもて……しゃあない。連れて帰るで」
「ええんですか?女やないですか」
「
「……へい」
翼宿は私に服を貸した人と話が済むと、スタスタ歩き出した。
数人のお仲間さんも彼に続く。
「……背中、乗れますか」
「……え?」
旺牙と呼ばれていた人が、私の前にしゃがみこむ。
「早く。頭たちに追いつけなくなる」
「あ、はい……」
体をギシギシ言わせながら背中に覆いかぶさる。本当にどうしてこんなにも体が痛いんだ。
彼はしっかり私を支えると立ち上がった。
途端に視野が高くなって、小さい頃以来の感覚に心臓がドキドキする。
「もっと重心傾けてください。力も抜いて。逆に重い」
「あ、すんません」
重いと言われてしまった。すごすごと体を預ける。
ゆらゆらと揺れる中、彼は私をおんぶしていると言うのに足早に翼宿たちに追いついた。
暫く歩いてもらうと、不意に睡魔に襲われた。
ああ、だめだ。眠い。眠いぞー……。
この広い背中……乗り心地良すぎ……る。
「ぐう………」
「…………重い」
よっ、と言う小さな声とともに、一度大きく体が上下した。
「なぜ俺が……」
低い声が聞こえて意識が覚醒してくる。
あ、やば……寝てた。と思っていると、水着の肩の部分が引っ張られる感覚がした。
そしてすぐにパチンと肌に当たった。
「いてっ!」
「あ」
「ちょ、なに……痛いんだけど!?」
「ああ、悪い……」
あれ?この人、服も貸してくれて、おんぶまでしてくれた人……だよね。
「旺牙さん、だっけ?」
「ん」
まったくもって無表情。しかも敬語だったのは最初だけかい。
そして気づく。はて、貸してもらった服をなぜ着てない?
こんなとこで水着姿ってただただ恥ずかしいんだけど。
「うんー?」
首を傾げていると、彼が淡々と話し始めた。
「怪我の手当をしろと頭からの命令を受けた。全身打ち身のようだが、擦り傷もあるのが見て取れる。で、それを脱がせようとしたら、あんたが起きた」
律儀にも説明してくれた。無口ではないらしい。
私は“それ”と言われた水着を見る。
「ああ、なるほど。これね、水着って言ってさ。密着してるから脱ぐの大変………っておい!!脱いだら裸になるじゃないか!せめて女の人がするもんじゃないの!?」
我ながらノリツッコミしてしまった……。
「ここに女はいない。俺は命令された。実行しなければ俺が困る」
「あ、そう……いいよ。自分でやる」
「やりづらそうな所にも傷がある」
「…………」
くそ、どこを確認して見られたんだ。
にしても痛い。傷に気がつくと余計に痛い。
「痛いなぁ、もう……」
「……たったそれだけの怪我で痛がるのか……」
「なんか言った?」
「……いや」
ええ、ええ!
あんたらにはこれくらいの怪我は日常茶飯事なんでしょうねー。
こちとら滅多にないんだよ。
ちくしょー……この薬、しみる!
「あんたは……巫女なのか?」
「え?……なんで?」
「巫女は異世界から来ると言い伝えられている」
「……ああ、ね」
「あんたがその巫女か?」
もう一度、聞かれた。
薬を塗る手を止めて近くにあったシーツを手にした。
「私は巫女じゃない。それよりも服、なんかない?着替えたい」
素っ気なく言い放つと、彼は考え込んだ。
「ない」
「いや、あるだろ!」
「女物はない」
「……いいです、男物でもなんでも。お願いですからなんかちょうだい」
わかってるよ、もう。
だけどこのまま水着でいるなんて嫌だ!
何が悲しくて陸の上で水着姿でいなきゃならんのだ。水中やプール場内ならいくらでも着ていられるけど。
「少し待ってろ」
「お願いしまーす」
早くねー、なんて言うとジロリと見返された。
……無表情、怖ぇ………。
暫くすると彼は戻ってきた。
だけど……扉を開けて、お辞儀をして、誰かを先に通した。
「!!」
そこから入ってきたのは……紛れもない。
翼宿と攻児だった。
夢にまで見た彼らのツーショット。
その人たちが今、目の前に颯爽と現れた。