ふしぎラビリンス8~翼宿の故郷~
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目を見た時の嫌な感じはこれだったのか。
目を見てはならない。そう意識が働いてすぐに目を閉じた。
「……へぇ、知ってるんだ。オレの力」
当たり前だ!
操られてたまるか!
それなのに
「いッ!?いてーーー!!!」
「目、開けなよ」
「開けるかぁ!!!痛い!放せ!!」
「うるさいな。その口は閉じなよ」
誰が!!
更に叫んでやろうとした。
それなのに……それは出来なかった。
唇に、なんか柔らかいものが当たった。
「南央ちゃんっ……!」
「うンッ!?」
な、なんっ……なんでこいつに……
キスされてんだーーーー!?
ジタバタともがこうにも肩を掴まれて、痛みが襲ってそれどころではない。
動揺して驚いて、つい目を……開けてしまった。
「!!」
まずい、と思った時には目が離せなくなっていた。
そいつが口を離してさらに目を合わせてくる。
キィンとする耳鳴りのような音が頭に響いた。
「烈火!!神焔ーーーー!!!」
ボウッと炎が瞬時に避けた斂芳にむかっていく。
その声の主を聞いてホッとした。
「南央!大丈夫なのだ!?」
力を入れられず地面に倒れ込んだままでいると、井宿が駆けつけてきた。
声を出して返事をしたい。だけど……その声が出ない。
「翼宿!南央の様子が変なのだ!!」
「なんやて!?」
斂芳と睨み合ったままの翼宿が顔を向ける。
「おい!どないしたんや!!」
少し離れたところから声をかけられる。
本当にどうしたんだ。答えなきゃ。心配させてしまう。
それなのに、先程から襲ってくるこの感覚は……なんだ?
「無駄だよ。そいつはもうオレのあやつり人形だ」
「ああ?」
翼宿が聞き返した時には既に私は傍にいる井宿を押しのけていた。
「南央!?待つのだ!!」
井宿の手が私の腕を捉えた。それも右手……剣を掴もうと伸ばした手だった。
「はな……せ……」
「南央……君は……」
「おい!井宿!!どないした!!」
見たくもないのに翼宿の前にいる斂芳に目を向けた。
斂芳は私を見て、ニヤリと笑った。
頭がガンガンする。
聞こえないはずの声が聞こえる。
“そいつらを殺せ”とーー。
頭の中で何度も囁かれる。斂芳はその呪いの言葉を残してスゥ……と闇に消えていった。
心臓がドクドク言う。
“殺せ”と脳内に響き続ける。
「はな、せ……井宿……逃げろ……っ」
「!」
ブン、と掴まれたままの手を振りあげた。
井宿の懐ががら空きになったところで、その腹部に蹴りを食らわせていた。
「ぐっ……」
ああ、私は、何をやっているんだ……。
「お前、何やっとんねん!!」
翼宿が駆け寄りながら制止する、その声すらも聞き流していた。
片膝をついた井宿が錫杖を構える。
「翼宿っ!南央は操られているだけなのだ!」
「ほ、ホンマなんか!?」
一度、ごほっと咳き込むと井宿は立ち上がった。
その光景にズキリと心臓が痛む。
思いっきり入ったはずだ。今の私は旺牙の力を借りている。
私は剣を構えた。
「旺牙の構えや……」
翼宿がポツリと呟く。
私は愚かだ。旺牙からもらった力を、本来護るべき人たちに向けている。
奥歯がギリリと音を出した。
「翼宿、心配いらないのだ。すぐに解く」
「できるんか?」
「当たり前なのだ」
旺牙の力を借りて、素早く井宿の錫杖に斬りつけた。
「っ………翼宿!南央を取り押さえててくれ!!」
「おう!任しとき!!」
翼宿が私と井宿の間に割って入ってくる。
「ええか。オレはあいつを羽交い締めにできるんやで。ナメたらあかんで!!」
「!!」
翼宿の俊足は、旺牙のものより速かった。
先回りして逃れようとしてもあっという間に後ろから羽交い締めにされた。
「すまんな。ちーっと我慢しとき」
「っ……放せ!!」
「放せるかい!!井宿!早う!」
翼宿の声が頭の後ろから降りかかる。
その声に井宿が目の前に立つと、ピッと2本の指を立てて眉間に触れた。
「うっ……」
力が抜ける感覚に襲われる。
立っていられなくてカクンと膝から崩れ落ちた。
翼宿の腕が咄嗟に腹部に回る。その腕に全体重を預けて、私の意識はそこで途切れた………。