ふしぎラビリンス8~翼宿の故郷~
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「翼宿!そこにもいるのだ!!」
「チッ……ようけ出てきおって……!うっとうしーんじゃ!!」
翼宿と井宿は村の中で突如現れる魔物をなぎ倒していく。しかし、現れて燃やそうとすれば、その魔物はまた地面へと消え去った。
その様子を見ていた井宿が、ふと違和感を覚える。
未だ魔物に対して炎を送り出す仲間の名を呼んだ。
「翼宿!待つのだ!!」
「ああ!?なんや!!」
「おかしいのだ。さっきから……攻撃してこないのだ」
「あ?」
井宿の呟きに、翼宿の動きも止まる。
確かに2人とも止まっているはずなのに、目の前の魔物は威嚇するだけで向かってこない。
「どう言うこっちゃ?」
「……………」
井宿は今、自分らがいる所を思い直す。
気がつけば随分と村の端まで来てはいないか?
「………翼宿、これは囮なのだ」
「なんやて?」
なにかに気づいた井宿が踵を返して村の中に戻っていく。
するとどうだろう。大人しくしていた魔物が襲いかかってきた。
「チィッ……なんやこいつら……いきなり来おったで!?」
「やはり……オイラ達を引き付けていただけなのだ!翼宿、戻るのだ!!」
「くそっ……村には……あいつが、おんねんぞ!!」
攻撃を交わしながら先に走る井宿に翼宿もすぐに追いついた。
気ばかりが焦る。あの家には家族も、そして南央も残してきた。
「無事でおれよ……!」
翼宿達は襲いかかる魔物を倒しつつ、村の中へと戻っていった。
「な、なんなん……これぇ……」
翼宿達が離れたあと、“それ”はすぐに現れた。
犬のような獣。牙をむきだしに、私の前で唸っている。
「愛瞳さん!中にいてください!!私が倒します!」
「せ、せやけど……1人でなんて」
「大丈夫です!!」
短剣を鞘から引き抜いた。
脇を締め、構える。感覚が目覚める。
これは……旺牙の力。
「………来いよ。私が切り刻んでやる」
その瞬間、魔物が飛びかかってきた。
「南央ちゃんッ……!!」
「愛瞳さん!?なんでっ……」
まだそこにいたのか。
彼女は薪を手にするとそれを魔物に投げつけた。魔物は頭を振りかざせば、いとも簡単に薪は弾かれた。
しまった。そんなことをしたら標的が変わる。
なのにそいつは、変わらず私に襲いかかってきた。
「遅い!!」
短剣を振りかざす。体がものすごく軽い。身のこなし全てが今までと違うようだ。
相手の動きも手に取るようにわかる。すぐに背後に立つことが出来た。
「残念だったね。終わりだよ」
魔物に短剣を突き刺そうとした時だった。
横からガッと押し倒された。目の前にいた魔物とは比べ物にならないくらい、早い動きだった。
「くっ……」
起き上がろうとしたところに、2本の前脚が私の肩に乗る。爪が、両肩にくい込んでくる。
「いッ……」
「南央ちゃん!!」
倒された時に短剣は既に落としていた。
くそっ……反動だ。
力を使った反動で右腕に力が入らない。
しびれを通り越して動かすことすら出来ないでいた。
魔物の目と目が合った。
「っ………」
何とも言えない感覚が襲ってくる。
押し退かさなくてはいけないのに……動かせることができる左手や足を使えばどうにか出来るかもしれないのに……どうして、動けない……?
次第に魔物の姿が変わり始める。
こ、こいつ……
「……斂芳(れんほう)………」
後ろでひとまとめにした髪をなびかせ、奴は不敵に笑っていた。