ふしぎラビリンス8~翼宿の故郷~
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私たちは家の庭先についた。そこに花に水を与える1人の女性がいた。
足音に気づいたのか顔がこちらに向いた。
「あ、あ、あ………」
その女性はこれでもかと言うくらいに驚いた顔をしていた。
「あんた………俊宇!?俊宇なん!?」
「おう。ちーっと様子見に……」
「おかあちゃーーーん!!!」
「「!!」」
今度はものすごい勢いで家の中に入っていった。
呆気に取られることばかりだ。隣で井宿もポカンと……いや、表情は変わってなかった。
「“しゅんう”?」
「あ、井宿はそこを気になったんだ。翼宿の名前だよ」
「名……」
「なんやお前、そないなことも知っとるんか」
知ってますとも。
少し優越感に浸っていた。だから聞かれたことに素直に答えてしまった。
翼宿が先に家に入った後、井宿が聞いてきた。
「もしかして君は……オイラの名も……」
「うん?井宿の名前?“ほ”………ッ」
途端に喉が熱くなる。
なんでー!?
これは言っちゃいけないのか!?
「………………」
ぎゅっと目を閉じて心中で誓う。
もう、言わない!!言わないよ!!
「あっつぅ、………もうホント勘弁してよ……ごめん、井宿。なんか言えないみたい」
「………いや、別にいいのだ」
この時点でわかると答えているようなものなのに、どうして言わせてくれないのか。
喉をさすっていると家の中から呼ばれた。
「翼宿が呼んでいるのだ」
「だね」
井宿に続いて翼宿の家の中へと入った。
「俊宇の姉の愛瞳ですー!よう来てくれはりましたわー!」
メチャクチャ美人。こんな可愛い人が翼宿のお姉さんだなんて……信じられない。
いや、それよりも……。
「わあ、久しぶりに女のコ見たかも」
「……それもどうなのだ」
思わず降りかかる鋭いツッコミを受け、井宿を凝視してしまった。
え、なに今の。めっちゃ低い声。
「だ?どうかしたのだ?」
……あ、あれ?
なんかもう……いつもと同じ、だねぇ?
「ううん。何でも……」
何か違和感を感じていたところにどんどん料理が運ばれてくる。
「えっ?あ!すみません!!料理なら私が……!」
「ええんよー!お客さんやないの。いっぱい食べてってやー!」
か、可愛い……。何この愛くるしい人。
しかもこの喋り方っ……!
「翼宿と同じなのに、なんでこうも……っ」
「おい!聞こえとんで!」
ゴツ、と頭を小突かれる。
こんなのももはや日常茶飯事だ。
「コラ!俊宇!お客さんに手ぇあげるんやない!」
「ええんやコイツは!!」
「なに言うてんの!!ったく、堪忍なあ?」
「え!あ、いえ……」
どうも居心地が……。そんな対応に萎縮してしまう。
「俊宇。しばらくおるん?」
「せやな。ここら辺で気色悪いもん出とらんか?」
「気色悪いもん?なんなんそれ」
まだここでは見かけないらしい。ということは、まだ美朱は来ないのだろうか。
「ここ使ってなー」
と、一室にポイッと押し込まれた。私に続いて入れられる井宿と翼宿が唖然とする。
「って、おい!!なんでこいつもやねん!!」
「堪忍なあ。寝れる部屋、ここしかないねん」
「掃除したらええやろ!!」
「はあ?あんた、あの荷物見てないん!?姉ちゃんらの荷物がまだたんまり残っとんのよ?」
「知らんわ!!捨てたらええやろ!!」
「あ、あんた……よう言われへんで、そないなこと……恐ろしいコや……!」
ヨロヨロと口元を覆う愛瞳さん。
それでもすぐに立ち直って、というか今のやり取りはただのノリとツッコミのノリだな。
「ええやん。男のコ同士、仲良う寝たら」
「……………」
「姉ちゃん!!アホやな!?」
「あはっ、ですよねー」
そういえば今“姉ちゃん”って言った。
「こいつ、男ちゃうで!」
「はははっ、またそないな冗談。あんた、冗談も下手になったん…………女のコぉ!?」
ズンズンと寄ってこられて、マジマジと顔、いや、足先まで見られた。
「あ、あの……?」
「ホンマに、女のコなん?」
「……ですけど」
「嫌やわあ!あたしったら!!!あんたもなんでこんな格好しとるん!?」
……と、言われても。
「えっ、これ手作りやろ!?これも、これも……!?」
私の服を触ってはめくり、中を覗けば驚愕された。
なんなんだ……?
勢いありすぎてついていけない。
「おいおいおい!何しよんねん!!」
愛瞳さんを止めに入る翼宿の向こうで、井宿は既に明後日の方を向いている。
「あかんやん!こないな格好!!布切れやん!ちょお、おいで!!」
「えっ、いや……あの?」
腕に愛瞳さんの腕が絡み付いてくる。
……胸、当たってる。………なんか切ないな。