ふしぎラビリンス6~授ける想い~
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「旺牙!!」
勢いよく扉を開けた。
床に膝をつく旺牙の前で、今まさに井宿が印を結んでいるところだった。
どう考えてもおかしい。私は躊躇わず井宿に駆け寄ると腕を掴んだ。
「何してんだ!!」
「南央?……あ、解けてしまったのだ……」
意識が削がれたことで、旺牙の拘束が解かれる。
途端に体がグラっと傾いて、慌てて前にしゃがみこむとその体を抱きとめた。
「井宿!旺牙に何したんだ!!」
キッと井宿を睨んだ。彼は困ったように眉を下げている。
「井宿!!」
「オレがそいつ、出ていかんように縛っとれて言うたんや」
不意に聞こえてきた翼宿の声に、私は耳を疑った。
「翼宿……何、言って……」
「旺牙は翼宿が待てと言うのに聞かなかったのだ」
横から井宿が言いづらそうに口を開いた。
「こいつ、山を今すぐにでも出る言うねん。そないなことさせられへんやろ。せやから井宿に頼んだんや」
翼宿の言葉を聞いて、目の前で一言も話さない旺牙を見る。
「……旺牙、あんた何してんだよ……」
「……………」
目線を外したその表情は暗い。
「旺牙!!」
声を荒らげると、旺牙は私の体を腕で退かした。
旺牙は肩膝を床につき、頭を下げた。
「頭、言うた通りです。俺はこいつに手ぇ出しました」
「ちょ、何言って……!」
旺牙に駆け寄ろうとすると、翼宿が声を張った。
「南央。お前は下がっとれ」
その声の威圧にビクリと体が止まる。
中に割って入りたいのに動けない。
「南央……今は翼宿に任せるのだ」
井宿がそっと肩に手を置いてくる。
私は井宿を見て、そしてまた視線を翼宿と旺牙に向けた。
「何しとんねん……お前がこいつに手ェ出したやて?」
「………へい」
「お前が!……何しとんねん!!」
「………すんまへん」
ち、がう。
違う!違う!違う!!!
「旺牙は私に力をくれたんだ!!!」
「「!」」
「……………」
翼宿と井宿が驚くのがわかった。
旺牙は私に一瞬、目を向けたもののすぐに視線を床に落とした。
「力……君は旺牙の力を得たというのだ?」
「そう!!」
「……ホンマなんか……」
「そうだよ!手を出すとかそんなんじゃないんだ!こいつにそんな気があるわけじゃなくて、ただ私が弱いから……!」
「……違う」
旺牙は低く呟いた。
その声と言葉に、私は話すことを止められた。
「旺牙……?」
「下心ならあった。お前に力をやると言ったのは、ただの名目に過ぎない」
何……言って……そんな事言ったら……救いようがないじゃないか。
「でも!殴られたわけでもない!!なんでもない!!旺牙は、あの時とは違う!!」
「違わない。俺も一緒だ」
「旺牙!!お前、もう黙ってろよ!!」
頼むから……どんどん追い込むなよ。
だけど、旺牙は頑なだった。
「違わない。お前の意思を無視してやれば、全てそれは強要。強姦だ」
「旺牙……」
ダメだ。こいつじゃ話にならない。
「翼宿!違うんだよ!」
「何が違うんや?お前の意思があったて言うんか?」
「そ、れは………」
ぐ、と喉に詰まる。正直驚いた。嫌というより驚きの方が強かった。
でも、前の……あの時はただただ嫌だったこととは違うとハッキリわかる。
やっぱり、違う!!
「旺牙は私のダチだ!!だから、違う!!」
そう叫び声を荒らげると、それを聞いていた旺牙が、くっと鼻で笑った。
「あんた、相当バカだな」
「なに………」
「あんたをダチだと思って見てるやつはいない。あんたがこれまでのうのうと過ごせたのは何故か、まだわからないのか?」
「おい、旺牙」
今度は翼宿が口を挟む。
「頭、こいつはアホです。わからせんといつまで経っても治らへんですわ」
「……別に言う必要あらへん」
「言わへんと、こいつは平気で風呂場に入り、平気で暑いからと脱いで、平気で部屋に寝惚けて入ってくるんです」
「………………」
「こいつのせいで若いもんらは生殺しにおうてます」
………え、なに?
なんだって?と思う頃には、翼宿がわなわなと震え出す。
あ、これ……キレるぞ。
絶対、怒鳴るぞ。
「………………」
あれ……?怒鳴らない?
変わりに、ぐっと両肩に手を置かれる。
その手の力が強くて、そして目の前にある顔が苦痛に歪んでいて……私は度肝を抜かれた。
「お前は……もうこの山に置いとかれへんな」
吐き捨てられるように言われた言葉が、何度も頭の中で繰り返された。