ふしぎラビリンス6~授ける想い~
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「攻児、どないしてもあかんか?」
「あかん!!」
ああ、さっきからこればっかりだ。
あかん、あかん……うるさいわー!!!
「攻児!!いいじゃん!!」
「なんでそないなこと言えんねん!南央がおらんくなったら……」
攻児がガシッと両肩を押さえてくる。
「誰がここの飯、作んねん!!!」
………な。やっぱりそこだよな。
それしかねぇよな。
「あー、うん、そうだねー」
「なんや?その冷めた目ぇは」
「いや、だってさあ……」
「オレはお前なしじゃ、生きられへん言うたやろ?」
うわ。
意味が違うよ。言われたくねー。
「別に一生戻ってこないってわけじゃないんだからさぁ」
「………ホンマに、そうやろか………」
攻児の声が急にしおらしくなった。その目も今は翼宿に向けられている。
「……前にもあったんや。そん時もすぐに戻ってくるやろ、思てた」
前……。
それは翼宿が美朱たちの元へ、頭の座を攻児に任せて行った時のことを指していた。
「あん時と、同じ感じや……」
「攻児……」
翼宿もまた顔つきが真剣になる。
「アホやなあ、お前は。攻児が送り出してくれへんと、オレはどこにも行かれへん」
「幻狼……せやな。すまん。愚痴ってもうた」
「そんだけ南央を手放したくなかってんのやろ?……本気でなあ」
「あ、バレとった?」
「飯がどうのこうのは後付けやな」
「それも本心や!!うりゃっ」
「わっ」
話に聞き入っていると、攻児がそのまま抱きしめてきた。
「なんだよっ!」
「早う戻ってこんとオレら死んどるかもしれへんで?」
「はあ!?ちょっと!行きづらいこと言わないでくれない!?」
きつく締まる腕を引き離そうともがいた。
だけども一向に緩まる気配がない。
くっそ……どいつもこいつも馬鹿力め。
その日の晩、私はせっせと料理に没頭した。
できるだけ日持ちのするようなものを
「よし、こんなもんだろ」
ガッツリ漬け物系が多くなるのは言うまでもない。
ふと、目の端に人影が見えた。
「うん?旺牙?」
もうなんとなくわかるようになった。
どこがどう違うからなんて説明はできないけれど、彼が放つ気と言うものが、独特だった。
「まだ起きてたのか」
「あんたもね」
いつもと同じような会話。
だけど何となく、これまた何となくだけど、何かが違う。
「明日、頭と山を降りるんだってな」
「うん。よくよく考えたら、この山から外って久しぶりなんだよね」
「嬉しいのか?」
「え?うん、そりゃあねー。安心しなよ。翼宿は私が護ってやるから」
「……………」
流し台にある道具を洗う。これも綺麗にしておかなくては。またしばらく触れないのだから。
「……外にはあの化け物がいるかもしれない。怖くないのか?」
「え?別に……いや、見たくはないけどさ」
カシャカシャと水の中で洗う。
こっちに集中していたら、聞き捨てならない言葉が聞こえてきた。
「頭とあの七星士を頼るなよ」
……なんだって?
思わず手が止まる。
「おい。誰が……誰を頼るって?」
「あんたが、頭とあの七星……」
「旺牙!!」
気づいたら旺牙の胸倉を掴みあげていた。
ツツツ……と水が腕を伝う。
「私は!
「……攻児はんの力を手に入れただけでは無理だ」
「お前……!攻児にも失礼だ!!」
なんでこんなこと言うんだ!
腹が立って胸倉を掴む手にも力が入る。
その私の手首を旺牙は、ギリと握りしめた。
「アッ……痛ッ……」
ビリビリとした痛みに耐えきれず、指から力が抜けて手を離す。
それでも旺牙は離そうとしなかった。
「あんたの手首は、すぐに折れそうだ」
「はあ……?ふざけん……ッ……いてえ!!」
痛すぎて片方の手で離そうとするものの、その手すら掴まれる。
「な、なんなんだよっ……」
思わず逃げ腰に体を後ろに下げる。
でもまだ両手はしっかり握られ、間合いをとることすらできない。
「今のあんたじゃ、ただの足でまといだ。化け物にも対応出来ない。結果、お前は化け物に襲われ、頭の手を煩わせるだけだ」
「だ、から……ついて行くなって、言うのかよ……!こっちだって、それなりの理由があるんだ!!放せ!!」
行く理由はあるんだ。
翼宿の故郷に美朱達が現れるかもしれないんだ。
この物語がまた、進もうとしてるんだ!
「頭の役に立ちたいと、頭を護ろうと思うか。護るためなら死なないと約束できるか」
「当たり前だ!!放せよ!!」
ふいに片方の手が離れた。
だがまだ掴まれている方は強く引かれる。
ドンッと旺牙の体にぶつかった。
「だったら……使いこなしてみろ」
そう至近距離で呟かれた瞬間、私の口は旺牙の口に塞がれていた。