ふしぎラビリンス6~授ける想い~
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井宿は太極山に行ってから数日して、ひょこっと現れた。それはちょうど、旺牙と稽古している時だった。
「戻ったのだ!」
「井宿!」
井宿は私と旺牙の姿を捉えると周りを見回した。
「翼宿はいないのだ?」
「頭なら今、副頭と会合に出てはります」
「そんなものがあるのだ?」
「へい。頭としての役目がありますよって」
「しっかり翼宿も大人になったのだー」
まるで子供が大きくなった、とばかりに言う井宿に笑いがこみ上げてくる。
「おっさん臭いよ、井宿」
「だ!?」
「私と年近いのに」
「そうなのだ?」
「……ちょっと待て。あんた、いくつだ」
旺牙がぐい、と肩をつかんで振り向かせてくる。
「あれ?言ってなかった?22……いや、23になったかな?」
「「!!!」」
その場にいた2人が硬直した。
おい、それはどっちの反応だ?
「なんやお前、そないに上やったんか」
まさかの下だと思われてた!!
ここは翼宿の部屋。
年の話がまだ続いていた。
「15、6と思ってたで」
「そんな子供じゃないよ!!わかんないわけ!?」
「わかるかい!」
「だがあまり驚いてないようなのだ」
「お前っちゅーヤツで慣れとるからな」
「………それはどういう意味なのだ」
「外見はなんの意味も持たんっちゅーことや」
「言えてるー!」
「お前もや!!」
しかし驚いた。翼宿は知ってたけど旺牙も私よりも下だった。
なのにあの扱いか。上等だ。
「南央、顔が怖いのだ」
「ふっ。今度旺牙に会ったら“姉ちゃん”って呼ばせようかと思って」
「だ、だあ……随分とやることが幼稚なのだ」
「なんか言った!?」
「失礼しましたのだー!」
井宿にくわっと襲いかかる真似をすると、翼宿が不貞腐れたように机に頬杖をついた。
「オレは言わへんぞ」
「何が?」
「お前のことや!!年上やからて、呼ばへんぞ!」
「“姉ちゃん”って?」
「せや!!言わんで!!」
何を言うかな、この人は。
「言わせるつもり、ないけど」
「おう。………て、そうなん?」
「翼宿は弟とは思ってないし。いや、思えないし?」
「っ………なんや、それ……!」
ふい、と頬杖をついたまま横を向いた。
井宿が小さく「安心したのだ?」と翼宿に呟いた。
うん。弟って言うより、ペットみたいだよね翼宿って。
……言えやしないけど。
結局、なぜ翼宿の部屋にいるのかというと……。
「
「せや。ちーっと里帰りしてくるさかい」
「何か家の人に……」
「ちゃうねん。たまには帰ってけえて、うるさいねん。まあ、あの化けモンが出んとも限らんし、様子みてみよかと思てな」
話を聞いていて、胸がざわっとした。
これは、いわゆる………。
とうとうその時が来たのだろうか。
「翼宿……」
「なんや?」
「私……、私も行きたい」
「なんやて?」
突然、何を言い出したのかと翼宿が目を見開いた。
井宿でさえも、じ……とこちらを見ている。
「あ、えと……ダメならここにいる、けど……」
本当は絶対に行きたい。でも……ついて行く理由もない。
「お前連れてったら……ここのもんらにドヤされそうやな」
そうだ。私はここの料理人。
行ったら誰がごはんを……。
「…………そないに行きたいんか?」
翼宿がどこか、はにかむように笑ってくる。
そして何かを吹っ切ったように呟いた。
「………ええで」
「えっ?」
「面白いもんとかなんもない村やけど、一緒に行くか」
「行く行く!!行かせていただきます!!」
や、やった!!許可が降りた!!
「では、オイラはこの辺で……」
「ん?井宿も一緒だよ?」
「は?」
「だっ?」
2人の素っ頓狂な声がほぼ同時に重なった。
「なんで井宿も連れてかなあかんねん」
「オイラも別に興味はないのだが……」
「なんやとォ!!」
「ダメ!!一緒に行こう!いいじゃん!どうせ暇だろ!?」
「ひどい言い草なのだぁ……」
こうしてウダウダ言う井宿と、わけもわからず2人を連れていく羽目になった翼宿とこの山を久しぶりに出た。
………なんて、簡単に行くわけもなくて。
「あかん!!!それだけはあかんで!!」
今、目の前に仁王立ちする攻児に、私と翼宿は思わず苦笑した。