ふしぎラビリンス6~授ける想い~
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「……オイラ、おじゃま虫なのだ?」
「!!!」
はっ、としたと同時に、翼宿がドーン!と私を押す。
!?
「な、何がや!」
「翼宿!痛いっ。井宿も邪魔なわけないじゃん」
「そうなのだ?とてもそうには見えなかったのだ……」
顔をしかめる井宿に挙動不審な翼宿が突っかかる。
「君たちは恋仲なのだ?」
「「はあっ!?」」
ど直球で投げられた言葉に、私たちは同時に反応した。
「ちょ、なんで?何がどうしてそうなった?」
「そう取れなくもないほどの雰囲気だったのだ」
「雰囲気!?」
「じょ、冗談やないで!!こいつが珍しゅう震えとったからなあ!!」
「誰が!?震えてないし!!」
「ガタガタ震えとったやないか!!」
「震えてない!!」
言い合いは終わりを知らなかった。
呆れた井宿がため息をつき、もう一度笠に手に持つ。
「ひとまず、オイラだけで太極山に行ってみるのだ」
「おう。お前だけやったら行けるやろ」
「当然なのだ」
井宿は今度こそ、笠の中に消えていった。
目の前で初めて消える姿を目にして、マジマジと残された笠を見た。
手にしてみても、なんらおかしな所もない、ただの笠にしか見えないのに。
「変なヤツやろ」
「井宿が?」
「せや。術なんぞが使えて、神出鬼没やねん」
「それは変というより、すごい、だよ」
「そうかあ?」
「うん。だけど、私にとっては翼宿もすごい」
「オレぇ?どこがや。火ィ出せるだけやで」
いや、それがすごいって言うんだよ。
翼宿はハリセンを手にする。
見慣れたポーズだ。そして不思議だ。
持っただけなのにその姿は勇ましく見える。
「私も、強くならなきゃ……」
「あ?」
「せっかく攻児の剣の腕、もらったんだから使いこなせないと」
「無茶したらあかんで?」
「する!」
「おい!!」
「しないと、翼宿たちの横に並べない」
「……お前……」
そうだ。
旺牙や攻児ならいざ知らず、私なんて七星と肩を並べられない。
朱雀は言った。“巫女の助けに”と。
でも、このままでは助けることは到底出来ない。
「まずは手が痺れないようにしないと!」
呆れてため息をつく翼宿の横で、私は固く誓った。
「それで俺のところに来た、わけか」
私は夕食を持って旺牙の部屋を訪ねた。
旺牙は言いつけ通り、部屋から必要最低限出ることはなく、回復に徹している。
それでも手には砂の入った袋を持ち、いかにも筋トレしてましたと言わんばかりだ。
「傷開いても知らないよ」
「もう完全に塞がってる。腕は動かしてないと鈍るんだ」
「……そか」
ラフな服装のまま袖だけを脱ぎ、旺牙はダンベルを持っているかのように腕を動かす。
途端に二の腕に拳よりも大きいのではないかと思われるほどの筋肉が盛り上がった。
「いいなあ、それ」
「………見んな」
「いいだろ。減るもんじゃなし」
「そんなにガッツリ見られたら減りそうだ」
それでも規則正しく動くのは変わらない。
「明日からだ」
「え?」
「頭に明日からお前の稽古つけられるように許しをもらっておく」
「お、旺牙……!」
なんていいやつなんだ!
そうなんだよ!早く旺牙に稽古つけて欲しかったんだ!!
勢いあまって、旺牙に飛びついた。
「うっ……おま……危うく膝が腹に当たるところだった!」
「旺牙!ありがとう!!明日からまた頼むね!!」
「…………」
馬乗りになって、旺牙の顔を両手で挟み込んだ。
ああ、このまま撫でくりまわしたいくらいに嬉しいぞ。
「お前なあ……」
旺牙が手で私の体を退かす。
はいはい、降りますよ。
でも、そんな態度も気にならない!
よかった。やっぱり旺牙の教え方は上手いから上達した気分にもなる。
「……気を許しすぎだろ………」
「え?なんか言った?」
「別に」
聞き取れなくて顔を寄せると、旺牙はサッと避けて持ってきた夕食を食べ始めた。
「持ち場に戻れ」
相変わらず素っ気ないけど、不思議と嫌味を感じなかった。
「はーい。じゃね~」
ヒラヒラと手を降れば、私は明日に備えて仕事を終えることに意識を向けた。