ふしぎラビリンス6~授ける想い~
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「これで大丈夫なのだ」
「ありがとう」
自分の首に触れると包帯が巻かれてある。
随分、大げさな巻き方だ。
「また、引っ掻かれては困るのだ」
「………そんなこと言ったって……」
寝台に腰掛けていた私は、膝の上に置かれている自分の手を握りしめた。
話せなくて歯痒い。こんな気持ちを本当にするとは思わなかった。
「オイラ、今から太極山に行ってくるのだ」
「!!」
「一緒に行ってみるのだ?」
「行………」
行きたい!!でも……行ってなんになる?
この事態を伝えることすらできない。
「太一君は、何かご存知かもしれないのだ」
井宿は目線を合わせて座り込む。今度は少しだけ、井宿が見上げる高さになった。
「君は頑張り屋さんのようなのだ」
「……え………?」
「この手を見れば、ここ数カ月で出来たものだとわかる。突然会得してしまった力を、どうにか受け入れようと必死に剣を握り続けた証なのだ」
井宿の目線が、私の手に落ちる。
手を開けば皮が何度も裂け、更には硬くなり始めた箇所もある。女の子らしくない手。
「翼宿も、それには気づいているのだ。だから心配するのだ」
「心配?私、心配させてる?」
不思議だ。井宿の言葉はストンと胸に届く。
素直に聞かなきゃ、そう思えてくる。
「人が心配をするのはいい事なのだ。その人を気にかけているという証拠だから。そして、人が生きる糧(かて)にもなるのだ」
「生きる、糧……」
「翼宿は真っ直ぐな男なのだ。人一倍、人情に弱い部分もあるのだ」
「それ、わかる」
へら、と笑うと、井宿もその笑顔に深みが増した。
まだ面はついてるけれど。
「君が不安に思うことはないのだ。行ってみるのだ?太極山に。翼宿も一緒に」
「井宿……」
ああ、井宿は気づいてたんだ。
私が口に出せないことで歯痒い思いをしていたことを。一瞬で読み取ったんだ。
「井宿って、やっぱ実は最強でしょ」
「だ?そんなことないのだ」
またそうやっておどけて見せる。
ふん、もう信じられないもんね。
「ウソだね。術だってすごいし、面が外れたら“俺”とか言うんでしょ。好きな人には攻めちゃってさ」
「だぁ?君は何の話をしてるのだ?」
あまりに理解ができなかったのだろう。
本当に、いや、まじで痛い子を見るような目で見られた。
あ、しまった。
ただの変な人だという印象を植え付けてしまった。
「ホンマに行くんか」
「だっ!選ばれた者には行けるはずなのだ!少なくとも君は普通の人ではないから特別なことでもない限り、行けると思うのだ」
普通の人ではないと言われたら、それはそうなのかも知れないけれど……。
「え、やだ。井宿には言われたくないな」
「………だ、だあ……手厳しいのだ……」
苦笑いを浮かべると、井宿は手に持っていた笠をふわりと上に投げた。
そこから眩い光があたり一面を真っ白にした。
「っ……」
思わず目を瞑る。
これで太極山に行ける。そう、思っていた。
ドンッーーー!!!
気づいたらそこは……薄気味悪い場所だった。
「え………ええ~………」
なんだってこんな所に。
しかも周りを見回しても翼宿や井宿はいない。
そしてこの薄気味悪い空間。どう考えてもいい場所じゃない。
「どうしよ~……」
そもそもどうしてだ?
井宿の笠からの光を浴びたかと思ったら、体が弾かれる感覚がした。
私は変なところに飛ばされたのか?
まさかの井宿、失敗?いや……そんなわけない。
「ここ、どこなんだ……」
とりあえず誰かいないものか、と歩き出す。
草なんてものは生えておらず、石がゴロゴロとした地面。
至るところに岩がそびえ立ち、薄暗い上空には得体の知れない鳥が飛んでいる。
でも、生きているものが存在している。
それだけで何故か救いとなった。
意識は集中させる。
いつ誰が襲ってきてもいいように、私は短剣に手をかけた。
その時、ス…と何かが動いた気配がした。
「誰!?」
薄暗さの中で何かが動く。目を凝らし短剣を引き抜いて構えた。
「誰!?出てきなよ!!」
じ、と見据えれば、その姿は目の前に現れた。
長い髪。地面にまでついてるんじゃと思えるくらいまっすぐな髪。
そしてこちらを見る、鋭い眼差し……。
こ、こいつは………。
「
紛れもない、これから戦わなくてはならないその人だった。