ふしぎラビリンス6~授ける想い~
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話はこれからという時に昼になってしまった。
私は私の仕事をしなくてはならない。
「くうっ……早く太極山に行きたいのに……!」
せっせと昼飯を作っていると外から翼宿と井宿が戻ってくるのが見えた。
窓から身を乗り出すと、すぐに井宿がこちらに気づいて手を振ってきた。
「南央はあそこで何をしてるのだ?」
「ああ、飯作ってんねん」
「全員分なのだ?」
「せや。あいつの気ィよくしたったら皿が増えるで」
「それはいいことを聞いたのだ」
……聞こえてますから。なんだよ、気を良くさせたらって。
「南央はん!!ホンマ、南央はんの飯、最高ですわ!!」
「そうー?もー、これもやるよ!!」
………って、これかぁ!!!
昼になり、ぞろぞろとやってきた男たちに飯を渡していると、思わず皿を手渡す手が震えた。
「……ぷっ、あれなのだ?」
「せや。単純やろ?」
翼宿に井宿!!!
めちゃくちゃ見られて笑われている……!
翼宿に単純だと言われるなんて……!不服!!
「今日の飯はなんやろな~」
その手に乗るかぁ!!
「はい!」
「あ?」
「オイラ達、まだ何も言ってないのだ」
「いらないよ!!それあげるから早く食べちゃって!」
「なんや?どないしたん?」
お世辞の言葉なんて……いらない。
……違う。ホントは嬉しい。
だけど……うわべだけの言葉が欲しいわけじゃないんだ。
「いいよ……無理して言わなくても増やすからさ」
「君は思い違いをしてるのだ」
悶々としていると、井宿が言葉をかけてきた。
「思い違い?」
「そうなのだ。オイラは君と今日初めて会ったのだが、君の手料理は本当に美味しいのだろう」
「なに言って……」
「見てみるのだ。ここの者、皆いい顔で食べてるのだ」
そう言われて顔を室内に向ける。
机に顔を向き合わせてここの人達が私の作ったご飯を食べている。
「ホンマやで。なんや、あいつら前よりガッついて食べよるわ」
「君にかける言葉もきっと本心なのだ」
「本、心……」
井宿はそう言うと、私から皿を受け取る。
「それに世辞が言えるほど、気の利いた者達だとは思えないのだ。翼宿を含めて」
「なんやとォ!!」
「だっ!翼宿が怒ったのだー!」
「待たんかい!井宿!!あ、これ、もろてくで!お前も早う来い!食うで!」
バッと皿を受け取ると翼宿は井宿を追いかけていく。
ぽかーんとしていると、そこに遅れて攻児がやって来た。
「よう。今日も腹減ってん。いっぱい食べさせてぇな」
「攻児……私の作ったご飯、美味しい?」
「なんや急に……」
そうだね、急だよね。
私は攻児にも一皿多く手渡した。
「お前さんの料理は格別に美味いで。もう南央なしでは生きていかれへんわ~」
「……うわ、嘘っぽい」
「嘘なんて面倒なもん言わんで?俺。みんな、そう思ってるんとちゃう?」
攻児が爽やかに笑う。すぐに翼宿を見つけると、皿をいくつも集めだして両手いっぱいに持った。
「ほな、行こうや。腹減っとる言うたやろ」
持ったのは私の分だったのか。
「……はいはい。しょうがないなー。一緒に食べてあげるよ」
ああ、どうしようか。今ものすごく嬉しいよ。
私……ここが好きだ。
「よし!食べた!!井宿も食べた!?」
「頂いたのだ。美味しかったのだ!」
「それはどうも!じゃあ……」
さあ、これであとは……やることは1つ!
「太極山!連れて行って!」
「だっ?」
「……またかい……」
「とことん、行きたいんやなあ……」
驚く井宿と呆れる翼宿と感心する攻児を、私はにこにこと見る。
「当然!だってこれから大変なんだよ!」
「大変、とは……君は何が起こっているかわかるのだ?」
「わかる!!」
教えてあげなくては。まだ誰も予知していないことなら太一君にも危険を知らせなくては。
平気だろう。
この世界の者じゃないとか、美朱の事とか、散々口にしたことだってある。
私は平気だ。この先の事だって口に出来る。
そう、思っていた……。