ふしぎラビリンス6~授ける想い~
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私が攻児の力を受け取った経緯を話すと、攻児は机に突っ伏した。
「嘘やろ……」
「ごめん……でもあの時は知らなかったんだ」
「……ちゃう。謝るんはオレの方や。すまん。何遍もしてしもたんがあかんかったんや」
正直ものすごくいたたまれない。こんなこと恥さらしもいいところだ。
ほら、井宿は呆気に取られているし翼宿だって……。
「………………」
「……翼宿?」
「お、」
「………お?」
翼宿が小さく声を出す。聞き取れなくて耳を片寄せた。
「お前はホンマになーんも言わへんのやな!!!!」
「わっ、ビックリした!」
あまりに突然の大声にビクッとなって離れた。
「ご、ごめん……だって、変でしょ」
「変やな!!」
「信じられないでしょ」
「ああ!信じられへんな!!」
「言ったら、こいつ変な奴だって思うでしょ」
「そらもう思とる!!」
まじか。思われてたのかい。
「ええか!こん先また隠しとったりしたら、承知せんで!!」
「うっ……」
「返事せい!!!」
「はいっ!!」
思わず敬礼してしまう。
い、勢いに押されてしまった……。
「しかし、これが本当だとして……体の負担は大丈夫なのだ?」
「大丈夫も何もあらへんで。稽古のあと手が痺れる言うとったやん」
「うん。最初よりは良いけど……」
そう言われて手を見る。
手のひらに出来ては治りを繰り返したマメがある。
「随分と頑張った跡があるのだ」
「えっ……あはは。これは旺牙が厳しくて」
「旺牙?」
井宿が首を傾げる。ああ、そうか。知らないはずだ。私だって知らなかったのだから。
「ああ、拾たヤツおるて言うてへんやった?」
「君が山で行き倒れていた所を助けた少年のことなのだ?」
「そいつや!剣の腕、めっちゃ凄いヤツやってん」
「そうだったのだ?」
井宿が驚いたように私も驚いた。
“山に生き倒れていた”
旺牙は私と同じだったんだ。
「旺牙が翼宿と攻児に従順なの、納得した」
「そうかぁ?あいつは無鉄砲やからな。己の命も平気で投げ出そうすんねん」
「それだけ、幻狼に恩があるんや」
「お前にもやろ」
翼宿と攻児が笑い合う横で、井宿は自嘲気味に笑った気がした。
「井宿?なんかあった?」
「命を投げ出すのは……感心しないのだ」
その言葉はとても小さくて、ただの独り言にしか思われないような声だったけれど……いつまでも耳に残った。
「井宿。お前、今どこにおんねん」
「オイラは南央ちゃんに呼ばれるまで紅南国を離れていたのだ」
ぞわっ
……うん?なんだ今の鳥肌。
「そんなら今日は泊まっけ。寝るとこないんやろ」
「それはそうなのだが……ん?どうしたのだ、南央ちゃん」
ぞわわっ……
まただ。
「ち、井宿……もっかい、名前呼んでみて」
「だ?南央ちゃん?」
「それだあ……!」
ああ!ぞわぞわする……!!さっきからムズムズするのはこれか!!
「名前!!“ちゃん”なんてやめろよ!」
「だめなのだ?」
「ダメ!!南央でいい!もうここに来てそんな呼ばれ方されてないし!井宿って、人を呼び捨てで呼ぶことだって出来るんだろ!」
身を乗り出して全力で言えば、井宿は片眉を下げて笑った。
「できるのだ。わかったのだ」
「どうも」
「南央は変わった娘なのだ~」
「!?」
「これでいいのだ?」
「………いいよ!もう、別に無意味に呼ばなくていいから!!」
「練習してみたのだー」
練習って……。
ああ、どうも調子が狂う。