ふしぎラビリンス7~約束~
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翌朝、皆がぞろぞろと朝ごはんを食べに来た。
今日このあと翼宿の故郷に出発する。
「昨日の晩、そないなことがあったんか」
昨夜のことを掻い摘んで聞かされた攻児が、じと~、と旺牙を見た。
「旺牙」
「……へい、副頭」
皆はもう食べ始めているのに、旺牙はまだ料理に箸をつけていなかった。じ、と攻児の言葉を待つ。
「ええ根性しとるなぁ、お前」
「………すんまへ……」
「ウラァ!!頂きぃ!!!」
「!!!」
あ。旺牙のみたらし団子、取った。
「こ、攻児はん……?」
呆気に取られた旺牙はそのみたらし団子の行方を見守るしかない。
「それを……どないする気、で……?」
「お前の力を南央にやったやて!?オレのじゃあかん言うんか!!」
「!!……ち、ちゃいます……」
何かを感じ取ったのか、旺牙は焦りを覚え始める。
手は既にみたらし団子を奪還させたくて仕方が無いのか、前に出されていた。
「どうちゃうんか説明してもらうで!オレの南央にちゅーまでしたんやからな」
いや、誰が誰のだって?
呆れてものも言えない。
コト……と旺牙の前に別皿に乗せられたみたらし団子を置いてため息を吐いた。
「アホらし。はい、残ってたからあげるよ」
「いいのか……?」
「別にいいけど」
「……今初めて、あんたがいい女に見えた」
「おい!!」
サッ、と皿を引き下げようとすれば、旺牙が私の手に手を重ねる。
「やめろ、これはもう俺のだ」
「……ああ、そうかい」
「そうだ」
こいつ……いっそ今斬り捨ててやろうかな……。
「………南央、お前も早う食え。出るで」
「え?あ……うん」
汁物も最後の一滴まで飲み干した翼宿が口早に言って立ち上がる。
「準備できたらオレんとこ来い。井宿もや」
「……わかった」
「だっ」
少しだけその声のトーンが低いのは気のせいだろうか。私たちが話している間も不機嫌そうだった。
それに、なんだかんだ初めてだ。
翼宿がまだ人が食べてる最中に先に席を立つのも。
この屋敷での仕事を終え、私は翼宿の部屋の扉を叩いた。
「出来たか?」
「うん。待たせてごめん」
「ええんや。ほな、行くで」
翼宿が出てくると、後ろに井宿の姿も見えた。
先に来ていたらしい。
「荷物、それだけなのだ?」
「え?そうだけど」
「…………」
私の背にある袋の包みを見ると、井宿は無言になった。何か、変だった?
「何しとんねん。行くで」
「あ、うん!ほら井宿、行こう!」
「だ。オイラもすぐに行くのだ。先に行ってるのだ」
うん?先に?
不思議に思ったけれどすぐに来てくれるなら構わない。私は「わかった」と言うと、翼宿を追いかけるために小走りになった。
私たちは屋敷を出た。
振り向けば、見送る攻児と旺牙の姿が見える。
「あいつらも律儀なやっちゃ」
「それだけ心配してるんじゃないの?」
「ただ里に帰るだけや」
「………うん」
そうだと思いたい。でも……予感はする。
暫くは戻ってこれないのではないか、と。
ここからが正念場。始まりだ。