ふしぎラビリンス5~決意~
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案の定、無理をして部屋から出た旺牙は、あの後寝込んだ。
何日も熱が出て傷もまた開いて、今は翼宿からの完全命令で部屋に閉じ込めてある。
「しっかしまぁ……あの化けモンは何やったんや?」
攻児が焼き魚を食べながら翼宿に聞く。
今、まさに私たちは朝食をとっている所だ。もちろん旺牙は私室での食事で、今はいない。
「知らん。せやけど……また新しいもん出てきたみたいや」
おる、と言われて攻児も表情を固くする。
「あんなん俺ら太刀打ち出来んで。お前の火ィやとあっちゅー間やけどな」
「……ここだけならまだ良かってんけど……この国中になるとたまらんで」
2人が深刻になるのも無理はない。
まだ私は実際には見たことはないにしろ、どんなものかはわかる。あんなものがいきなり現れては……人々はパニックに陥るだろう。
「翼宿……やっぱり太極山に行きたい」
「またかいな」
「太極山?……て言い伝えとちゃうん?」
「……いや、実際にあるで。せやけど行き方がようわからんとこなんや」
行き方……。そんなのあの人ならすぐにわかるじゃないか!
「翼宿!!」
「……なんや?」
私は思い切って席を立った。
目の前で翼宿がその三白眼で見上げてくる。
「……井宿に会おう!!」
「………どこにおるんか、わからんて言うとるやろ」
ええと、どこだった?
彼は今どこにいる?あ、現代?転生したんだっけ?
いやいやいや、あれは違うって。ただのお話。
そうだよ。
井宿は……呼んだら出てくる!!!
「ちーちーりー!!」
突然、大声で名前を呼び出す私に、翼宿も攻児も目を見開いた。そんなの気にしてられない。
私の声なんて聞こえないかもしれない。
だけど……やってみない手はない!
「井宿!!井宿!!井宿ぃー!!!!」
お願い!!出てきてよ!!!
私、不審者じゃないからーー!!
「呼んだのだ?」
おっしゃ!きたぁーー!!!
「ち、井宿ィイ!?」
「……君は翼宿なのだ?という事は……ここは厲閤山なのだ?」
「お、おう……」
「久しぶりなのだー!元気だったのだ?」
「……おう……って、どっから来たんや!?」
「愚問なのだ。オイラ術者なのだ。忘れたのだ?」
………う、わあ……。目の前にいる。
いるよ、すんごい丸っこいのが。
と思ったらすぐに背が伸びたー!おっきくなった!
顔は相変わらず、のぺっとしてるけど。
「お前、ホンマにこいつが呼んだから来たんか?」
「こいつ……?」
翼宿に言われて井宿が私を見る。
目が……合ってるかわからないよ!その糸目……!!
「オイラを呼んだのは君だったのか」
……う、わ。話しかけられてる。
話かけられてるぅ~っ!
「おい、南央?どないした」
「ちょ、ちょっと待って……感動した」
「なんやねん」
ここに来て翼宿以外の初めての七星。
しかも夢の話をずっと読んできていた相手だ。目の前にその本人が現れて、感動しないはずがない。
「うわあああ!!私には柳宿という人がぁあ!!断じて井宿じゃないんだからー!!落ち着け!私の心臓ー!!」
思わず仰け反って、ワシワシと髪をぐちゃぐちゃにした。
「………この子、大丈夫なのだ?」
……はっ、呆れられた……。
「…………知るかい。変なやつやねん」
……見放された!?
「ご、ごめん。ちょっと……ごっちゃになっちゃって」
「ごっちゃってなんや。前にも言うたことあったな」
「オイラ、なにか混乱させたのだ?」
「ああ!違う!気にしないでいいから!!」
まずい。これでは本当にただの不審者だ。