ふしぎラビリンス5~決意~
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「…………やっぱ、だめだ」
パッと体を持ち上げ、ギリギリのところで思い止まった。
「無理だよ……旺牙のなんて、私には扱えない……」
あんな強い剣の腕なんて、今の私では無理だ。
反動がきっと今よりキツイ。
「……早く、治ってよ、旺牙……!」
今の私はそれしか願えない。
そして、さらに強く願うのは……。
「早く、帰ってきて……翼宿……」
明日にしか戻らないその人を思う。
翼宿はそこにいるだけで、ここの人たちは勇気が、元気が出る。私だってそうだ。
「…………疲れた、な……」
ストン、と寝台の横に座り込む。
背中をあずけるとそのまま目を閉じた。
あの薬には、少なからず睡眠導入剤も含まれていたのかもしれない。睡魔に襲われると私はそのまま眠りについた。
「んがっ」
………は!
今、イビキかいちゃった!?
ま……まずい……今、何時だろう!
「飯、作らなきゃ!!」
バッと立ち上がると、スル……と手を掴まれた。
「!?」
振り返ると、横になったまま目を開けてこちらを見る旺牙と目が合う。
………あ、ここ、旺牙の部屋だった。
「お、おはよう?」
我ながら気の利いたセリフは思い浮かばない。
でも旺牙はさほど気にも止めず、そのまま言葉を発した。
「……飯なら若いヤツらに頼んだ」
「へ!?なんで?」
「聞きたいことがある」
もう昨日のように力無い声ではなかった。
顔色も血の気が戻っている。回復……早いな。
「聞きたいこと……?」
「“2回したら俺の力が手に入る”ってなんだ?」
………………。
「…………………」
「…………無視か?」
……いや!ちょっと待って!!
「ご、ごめ……なんか、意味……わかんなく、て……」
ああ、どういう事だ……。
昨日、口に出した言葉だよね?なぜそれを……。
どうして旺牙が知ってる……!
「………寝てなかった」
「寝てなかった!?」
「目を閉じてただけだ」
な、なぜそんなことに……!!
私が目をパチパチさせていると、ゆっくりと旺牙が起き上がった。
「ちょ、何してんだ!」
「……だからちょっと肉を持ってかれただけだ。騒ぐな」
いやいや!あれ相当痛そうだったけど!?
痩せ我慢!?
「む、無茶だよ……休んでなよ……」
「だったら、教えろ。俺に何をしようとした」
「うっ………」
旺牙の深紫の目が、私を捉えて離さない。
思わず一歩下がるものの、未だ掴む手が離れることを許さない。
だ、めだ……。
こういう時のこいつ、言うまで離さないやつだ!
押し問答を繰り返して悪化させるわけにはいかない。私は意を決して、ポツリと呟いた。
「……ごめん、キスしようとした」
顔が見れない。
掴まれた手を引っ込める。すると今度はすんなりと離れた。
「ごめん!あのさ、キスってのは口と口をつけることを言う言葉で……」
「……何のために?何か理由があるんだろ」
思っていたよりも旺牙は静かに聞いていた。
もっと怒られるかと思った。何を勝手なことを、って。
「……朱雀が………」
声が、弱々しい声しか出てくれない。
それでもちゃんと聞いてくれるから……私は、打ち明けることにした。