ふしぎラビリンス1~夢は現実に~
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「あーあ……終わっちゃったか」
私、南央は自室のベッドの上で寝転びながらスマホを操作していた。
ただ今、外は真っ暗な深夜の時間帯。
私は夜な夜なスマホを操作して、あるものを読んでいた。
きっと知る人はよく知るジャンル。
夢小説だ。
「明日の夜から、何しよ」
ポト、とスマホをベッドに落とした。そのまま仰向けになって目を閉じる。
なんて幸せな終わり方だっただろう。
何がってそりゃあ……あの人が生きていたことだ。それだけでこの話は私にとって、救いになる。
“柳宿”
彼女、いや彼を知ってからと言うもの、私の全てを持っていった人。あんな人はどこを探してもいない。
私は彼を知ってしまってから、彼に惚れ込んでいた。もう何年も。
「よし!次だ、次!ここは井宿オチだったから、他で柳宿オチを探してやる……!」
そう。
今まで読んでいたのは大好きな作品の、とある話。
誰オチか未定と書いてあったから、もしかしたら柳宿かもしれないと読み進めた。
どんどん井宿へと話が向いてしまったけれど、気になって結局は最後まで読んでしまった。
結局、そのお話は井宿との恋物語で終わった。
「ああ~、柳宿ー!ごめん!あなた以外の人にときめいてしまったよ!」
ベッドの上でジタバタ手足を動かした。
本当に不覚にも、井宿……そして翼宿にもトキメキを覚えた。
「私にはあなただけ~……」
ふふん、とまた1人自分の世界に入ってスマホを弄る。
さて、どこかにないかな。
柳宿と……楽しく笑いあって……怒られても大事にされて……甘い、夢を書いてくれる……サイトは……。
「ぐぅ………」
まだまだ平気な時間なはずなのに、この日は何故かスマホを見ながら寝入ってしまった。
寝落ちる前、スマホの画面に朱色の大きな鳥が見えたような気がした。
「うお!?やっば……!!」
ふいに起きた時の、なんとも言えない緊張感でガバッと起き上がった。
スマホで時間を確認すれば、やはりいつもの起床時間より大きく遅れている。
「自分、寝すぎ……!」
服!服……!
顔も洗って歯も磨こう……髪も簡単に後ろでひとまとめ。
味気ない黒いゴムだ。
でも朝ごはん。
これだけはきちんと食べよう。座って手を合わせる。
「いただきます」
今日と言う日は、この朝ごはんで決まると思う。ちゃんと食べないとその日1日元気にならないよ!という昔からの母からの教えだ。
「よし!」
しかし食べるのは早い。いや、いつもはもっとちゃんと噛むさ。
でも今日はやばい。バタバタと鍵を持って玄関に向かう。
ーーーー。
「ん?」
今、なんか部屋に……一瞬、紅いものが見えた気がした。
振り返ってみても、何も無い。
当然だ。私は一人暮らしなのだから……。
「いやいや、やめてよー?……あっ!スマホ!」
あぶない、あぶない。
テーブルの上にスマホを置きっぱなしだった。
慌てて手に取る。先ほど感じた何かは、やはり部屋の中にはいない。
気のせい!気のせいさ!
玄関の鍵を閉めて、自転車に跨った。
私は、この日を最後にこの家に戻ることはなかった。