ふしぎラビリンス5~決意~
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翌朝、翼宿と攻児は紅南国の首都、栄陽まで出かけていった。
たった1日。明日には戻ると言っていた。
いつもと同じようにみんなに飯を食べさせ掃除をして、旺牙に稽古してもらって……そうやって一日が終わると思っていた。
あっという間に過ぎ去る。
そう……思っていたのに、事態は急速に動いた。
「南央はん!!南央はん、おられますか!?」
「え、なに?」
朝はあんなに天気も良かったのに、雨が降り始めた昼頃。
昼飯の準備をしていると、屋敷が騒がしくなった。
「旺牙はんが……やられてしもた!!」
「!!!」
な、なんだって?よく……理解出来なかった。
それでも急き立てられれば、足は勝手に動いた。
案内されるままに広間に入れば、そこにはうずくまる旺牙に数人の仲間達が群がっていた。
「旺牙!?」
慌てて駆け寄れば脇腹に大量の血がついているのな見えた。
「なっ……!何があった!?」
「お、旺牙はん……オレを……庇って、腹……」
横でガタガタと震える姿が目に入る。
この人は最近入ってきた人ではなかったか。
「……騒ぐ……んやない。こんくらいで……」
「旺牙っ……止血……止血するから脱いで!」
「せんでええ。自分でやる……」
「あんたバカ!?えぐれてるんだよ!!なんだ、これ!!自分でどうやんだよ!!」
外套の留め具を外して脱がせる。
中の服が破け、その下に本来あるはずの肉が……なかった。
「な、なんだってこんな……っ」
旺牙が小さく呻く。
そんな、本当なら叫びたくなるほどの傷じゃないのか。それだけひどい傷だ。
「旺牙……無茶するなよ……っ」
手ぬぐいを受け取り旺牙を寝かせると、その部位を強く押さえつける。
血……止まって……!!
「う……………ぐ、……」
「が、我慢して……!そこ!あんたも押さえて!!」
驚きと、恐怖しかなかった。
あれだけ強い旺牙。血を流すことなんてないと言われていた旺牙が、今や顔を苦痛に歪めている。
腹部からの血は止まることを知らず、旺牙も次第に顔色が青ざめてくる。
「や、やめてよ……!冗談だろ……!」
私には治癒なんて出来ないんだよ!
自力で回復してもらうしか、ないんだよ!!
どれだけの手ぬぐいが真っ赤に染まっただろうか。
やっとその流れる血は止まってくれた……。
「お、旺牙……?……ねえ、生き……てるよね……?」
「…………」
今、旺牙は腹部をものすごくグルグルに巻かれている。
ぐったりとする旺牙を見るのも初めてだった。
「南央はん、血はようけ出とるんけんど、旺牙はんに意識ありますで」
「えっ……」
慌てて旺牙の顔をのぞき込む。
額に汗を浮かべたまま、旺牙は横目で私を見てきた。
「な、なんだよ……意識あるなら返事してよね」
「……無茶言うな………喋ると……響く」
「あ、……そ、そうだよね。ごめん、もう喋んなくていいから!」
そう言うと、旺牙は目を閉じた。
「他の人に怪我は?」
「手当て、済んどります」
ホッと胸を撫で下ろした。
確かにみんな、所々負傷してあるものの、旺牙ほどではない。
「みんな、無事に帰ってきてくれてよかった……生きててよかった」
そう、呟いた時だった。
傍らにいた、旺牙に庇われたと言う彼が、か細く、震えた声を出した。
「ま、まだあの人が……」
「やめろ!!そいつに言うなっ!……つぅ……」
旺牙?
そんな、大きな声……出せるはずないのに……。頑なに皆にはここの話し方をしていたのにそれすらも無くなるほど……。
そうまでして、何を、言わせたくなかったの……?
「……まだ、誰か戻ってない、とか……?」
この時の私は、随分と冷静だった。