ふしぎラビリンス4~与えられた力~
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「おったんか……」
「おるんなら……なんでわからんねん……」
「そら幻狼、純粋なんか、天然なんか、バカか、それのどれかやな」
……ちょっと、攻児サン。
あなたまでそんなことを言っちゃう?
「言っとくけど眼中にないだけだから。お父さんって眼中に入らないものでしょ」
「……不憫なおとんや。そしてオレらも不憫やわ」
「あ、オレんとこもおとん、存在薄いわ」
「幻狼。そっち食いつくんやな。おとん、そうなん?」
「おう。知らんかったか?」
翼宿のお父さん……か。
あ、ダメだ。顔覚えてないや。
そう言えば、こんなことを私の想い人が知ったらどう言うだろうか。
“あんた、女に生まれたんなら恥じらいっつうのを持ちなさいよ!”
……あ、言われそう。
「なんや、急に笑い始めよって」
「ごめんって。ここはさ、家族みたいじゃん」
「家族?」
「みんな仲良くって、私のこともすぐに受け入れてくれてさ」
「誰のおかげでそう出来とる思てんねん……」
「え?」
「なんでもあらへん」
「でも、さすがに風呂にズカズカ入ったのは、ダメか。ごめん」
「おう……わかっとるならええねん」
「今度からちゃんと声かけてから入るから」
「それ、あんま変わらへんな」
「俺が言い聞かせときます……頭も副頭も、体、ちゃんと拭かれてください」
「あー、ホンマや。幻狼が血相変えて出てくさかい、拭いとらんやった」
2人が互いの姿を見やる。ほんと、足元までよく濡らしてくれている。
誰が拭くと……いやいや、それ言ったらまたドヤされる。
「入り直しやな」
「せやな」
攻児の言葉に翼宿が頷くと2人は風呂へと戻った。
「あんた、本気で思ってるのか」
「ん?」
なんだ?2人がいなくなったらすぐに旺牙もどこかに行くと思ったのに、まだいる。
「なに?」
「家族」
「……思ってるけど?」
「家族にあんたは暴行を受けたわけか」
「あ、あれはまだ来てすぐだったからじゃん!」
何を思い出させてくれるんだ!
さっさと部屋に入ろう。こんなことして、明日起きられなくなると困る。
「もう、いい?明日も早い……」
「人は慣れた頃が一番油断するってほんとなんだな」
え、何?
と思った時には中に入ろうとしていた体を引き寄せられた。
あっという間に、旺牙の体が目の前に立ちふさがった。
ふわっ、と……旺牙の外套が体に降り掛かった。
「なんの真似……?」
「…………」
「ちょっと!!」
首を上げて上を見る。
体は旺牙の腕に拘束されて身動きが取れない。
これは、なんだ?抱き……いや、違う!断じて違う!!
だって……目の前にある顔は、とても険しいものだったから。
「………いつになったらその剣は抜かれるんだ」
「はい?」
「遅い。また襲われるぞ」
………ホレみろ。
「あ、あのなあ……あんたはもう、知ってるやつだ!こんなことされたら嫌というよりは……!」
「?……嫌というよりは何だ?」
「いや、と言うよりは………」
え?
なんて言おうとしたんだ?
…………!?
「う、わああああ!!離れろ!近寄るな!来るな!!」
「それでいい。あんたはたまに危機感を思い出してもらわないと迷惑だ」
「こんなことこそ迷惑だ!!」
ふざけんな、何なんだ!!
ああ、動揺するな、私!
「ここにいる奴らは家族じゃない。どんな時でも、油断するな」
「っ……わかったから……口で言って………」
「言うだけならあんたは聞かないからな」
「……あーそうかい。今度から抜いてやる。近寄ってきた瞬間、斬りつけてやる」
「いい心掛けだ。頭もこれで安心して出かけられる」
……なんだって?
どうして、そこで翼宿が……。
「翼宿が、何かしてるの?」
「……頭があのことがあって、何も手を回してないと思ってたのか?」
「………まさか……」
あのこと、とは襲われたことを言うのだろう。
手を回すというのは……。
「これを言うと意味をなさない。あんたは……男を、俺たちを甘く見てるからな」
「甘く、なんて……家族……いや、友達と思っちゃ、ダメなのかよ……」
「男女に友達関係は存在しない」
「っ………!私は……!あんたのことも友達だと思ってる!!」
なんでそんな事言うのさ。
ここに来てようやく自分の居場所を見つけたと思ったのに。
「……俺はあんたを友だとは、思っていない」
「………ああ!そうかよ!!そりゃあ、悪かったな!!」
部屋に駆け込むと、バンッ、と扉を閉めた。
その場に、ズルズルとしゃがみこむ。
「なん、だよ……」
無愛想でも、厳しくても、それでも……。
気心しれない友達ができたと思っていたのに……。