ふしぎラビリンス4~与えられた力~
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「待ってってば!!ほんとにさっきの……!」
「いいから、歩け」
ドンドン早くなる旺牙の足に私はついに駆け出した。
ついた先は、攻児の部屋。
「な、なんでここに……」
「副頭。旺牙です。おられますか?」
程なくして、扉が開くと気だるそうな攻児が出てきた。
「お休み中やったんですね。すんまへん」
「ああ、ええねん。稽古、もう終わったんか?」
「いえ……ご足労かけてまうんですが、頭の部屋までええですか」
「幻狼んとこ?ええけど……」
ここで攻児が私の繋がれた手を見た。
「どないしたんや」
その声に旺牙がパッと手を離す。
「話は頭の前で」
攻児が首をかしげて見てくる。そんな目で見ないでくれ。私だって何がなんだかわからないのだから。
「とりあえず、行くか?」
正直、行きたくない。
無表情男は今や険しい顔だし、攻児まで引き連れて翼宿のところなんていいことない。
うん。絶対、ない!
だけど無言の圧が痛い。私は仕方なくトボトボと歩き出した。
「かし……」
「ちょい待ち」
翼宿の部屋について旺牙が声をかけようとする。それをものすごい速さで攻児が引き止めた。旺牙の表情が、嫌そ~うな顔になる。
……こいつの感情表現、わかってきたかもしれない。
「そうやない、やろ?」
ん?とにこやかに攻児が何かを促す。ため息混じりに旺牙は「へい」と呟いた。
一度息を吐いて心を落ち着かせているかのように目を閉じた。再度目を開けると、旺牙は口早に言った。
「ごめんください。どなたですか」
……うん?
「……副頭と南央を引き連れて頭に会いに来た旺牙です。まあそれはようこそいらっしゃいました。お入りください。………ありがとう」
「おし、合格や。入るでー!」
これって………。アレじゃん。
「ぶはっ!」
「笑うな」
……いや、笑うでしょ!
まさか攻児のあのセリフを旺牙で聞くとは思ってなかった。今も笑いを我慢していると、コツンと頭を小突かれた。
やばいやばい。これ以上笑うとキレられそうだ。
「なんやお前ら、揃いも揃ってどないした」
部屋に入ると、翼宿は汗だくで出迎えた。
「……翼宿、何してたのさ……」
「あ?何て運動や。鍛えとかなな」
「……………」
そう。するよね。うん、いいんだよ、別にさ。
汗だくな人なんて仕事でよく見てたよ。
だけどさ……気になるよね。
「がむしゃらにすればいいってもんじゃないんだけどな……」
「あ?なんやて?」
「今さ、腹筋してたよね。うおーー!ってものすごい勢いで」
「………見とったんかい」
「あ、オレが開けてもうたからな」
横で攻児がへらりと笑う。
「負荷かけるのもいいけど、もう少し呼吸も大事にしないと」
「呼吸?」
「力を入れる時に、ふぅーって息吐くんだよ。息してなかったら意味なし」
「ほう」
「やってみる?教えてあげよっか?」
「ええで」
翼宿が先程のように横になったところに、横に膝をついて腕に触れた。
「手は頭の後ろね」
「ほう」
「膝を曲げて足持って……息を吐きながらおなか……はい、丸めて」
体が上がったところで背中に手を添え、もう片方はへそに触れる。
「はい、ここでおへそ見てー」
「…………」
「はい!ストップ!じゃない、止まって!」
ここで5秒、心で数える。
力の入った腹筋に手を添えると、きちんと負荷がかかっている。
「…………」
「はい、息吸いながら体を戻す……」
横になったところで手を離した。
「これ、あと20回を3回やって!翼宿なら余裕!」
「おう……」
「へー、そないゆっくりでええんか」
見ていた攻児が身を乗り出して聞いてくる。興味津々なようだ。
「たった今のでもさ、結構おなかに来るんだよ」
「せやけどなんでそないなこと知っとんねん?」
「私こうやって教えるのが仕事だったから。うん。また何か教えてあげるよ」
「ええな。オレにも頼むわ」
「うん、いいよ。じゃ、私はこれで!」
サッと片手を上げて部屋を出ていこうとした。
いいぞ。これはスムーズだ。なんの違和感もない出方。これが一番だ。
でも……。
「待ちぃや」
行く手を太い腕が遮る。まるで踏切のごとく立ちはだかった腕に、ぐっと喉が当たった。
「うっ……」
背の高さから腕の位置は私の首元。危うく呼吸困難になるかと思った。
「俺はこのために連れてきたんじゃない。怒らせるなよ」
「………ハイ、ソーデシタネ」
ちくしょ……やっぱダメか。
思いっきり私にしか聞こえない低い声出しやがって。