ふしぎラビリンス3~力無きもの~
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それからと言うもの。
ぼぼ毎日、三食とも4人で食べることになっていた。
最初こそ緊張もしていたが、これも慣れである。もとより男友達が多かったくらいだ。
私はこれをすんなり受け入れた。
「今日から稽古、つけるんやてな」
「へい」
「あまり最初から飛ばすんやないで?」
「心得とります。こいつの力量、見さしてもろてから、と」
「せやな」
翼宿と旺牙の会話に耳を澄ます。今、話していることは今日のこれからのこと。
私の仕事が終われば、旺牙に短剣の扱い方の稽古が始まる。
「あとで打ち身に効く薬、持ってったるな?」
「……攻児さん、さらっと恐ろしいこと言わないでもらえます?」
「オレ、あいつの太刀は受け止めるだけでいっぱいいっぱいやねん」
「……加減、してくれますよね?」
「最初くらいはしてくれるんとちゃう?」
……まじか。
いや、でも加減ばかりされていては上達なんてしない。このもらった短剣を……使いこなせるようにならなくては。
左手で短剣の鞘を持つ。触るとやっぱり不思議だ。
あの時、旺牙から拾った短剣を持ってからだ。
この手に馴染む感じ。
これはなんだ?
「旺牙さ……短剣に何かした?」
「何もしてへん」
「……そう?」
気のせい、なんだろうか。
でも、不思議な事がこの後、起こった。
「始めるか」
ついにこの時が来てしまった。
屋敷の外。いつも調理場から見えていた、旺牙が稽古をつけている場所に、私は立っていた。
少し間をあけたところに旺牙が立つ。
「どんなやり方でもいいから、打ち込んでこい」
……うわ、さすが剣の達人。言うことがすごいね。
「それさ、ほんとに平気なわけ?」
「あんたの剣筋くらい見切れる」
「ど素人だから筋とかわかんないけど……」
「それなら尚更だ」
自信たっぷり。まあ、そりゃそうだ。
じゃ……見様見真似……想像でやってみるか。
「……抜かないつもりか」
「いや、飛びかかって抜くもんじゃないの?」
「そんな器用なこと、あんたに出来るとは思わない」
「ああ、もう……やってみないとわかんないじゃん!!」
どこまでも小馬鹿にしやがって!
ダッと走るも、旺牙はピクリとも動かない。
本当なら、走りながらなんて抜く事も出来ないはずだった。
たとえ抜けたとしても速度は落ちるか、抜けずにモタモタしてしまうか。どちらにしても初っ端でスムーズにいくわけがなかった。
だけど……私は抜いていた。
走る速度も落ちず、抜いたらヒュッ、と剣筋が弧をえがいていた。
「!」
思わず旺牙は仰け反った。
そのままの流れで私の体は回転して、もう一度踏み込んでいた。
旺牙の驚いた顔が見える。目と目が合うと、その時には……ガキィン!とお互いの剣がぶつかり合っていた。
「………あ、あれ……?」
「…………」
目の前で鞘から半分抜かれた旺牙の剣と小競り合う。
力に適うわけもなく、弾かれるとそのまま後ろに尻をついて倒れた。
「いってー……」
「………お前……どこが素人………」
旺牙がマジマジと見てくる。
しかも自分が剣を抜いたとわかると、その剣を全部引き抜き、剣先を私に突きつけた。
「貴様……欺いてたのか」
「っ……ま、待ってよ!知らない!なに今の!?なんかした!?」
「バカか、お前」
「そんなこと言ったって……」
既に疑いをかけてくる旺牙は耳を貸さなかった。
剣が高く持ち上げられる。
「ま、待ってって!!どうする気!?ほんと、出来ないんだって!!」
「出来るか出来ないかは俺が判断する。受け止めてみろ」
「……っ!!むりっ………!!!」
ヒュンッと落ちてくる。
ムリだムリだムリだ!!
だけど、何故だ!!
「な、なんで手が……!!」
手だけじゃない。体全部が勝手に動いた。
受け止められない体勢だったのに、まだ握っていた剣を頭の上に持ち上げた。
ガキィィン……!と更に甲高い音が鳴り響いた。
「……………」
「……………」
嘘だろ。
なんで……旺牙の剣を受け止められてんだ……?
「………有り得ない」
でしょうね!!
私でもそう思ってるからね!!
「ちょっと来い」
「へっ?あ、ちょっ……ど、どこに……!」
戸惑っていると、剣を握ったままの手首を掴まれる。そのまま私は力強く引っ張られて歩いた。