ふしぎラビリンス3~力無きもの~
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翌日。
私は早くも心が挫けそうになっていた。
「はい、ご飯。多めにしといたけどいいよね?」
「へ、へい!」
「…………」
まただ。完全にビビっている視線を向けられる。
私にじゃない。私の背後にいる……旺牙に、だ!
「なんでずっと後ろにいるんだよ!」
「頭からの命令」
「はあ!?仕事の邪魔!ただでさえ今朝は寝過ごしちゃったのに」
「昨日の今日だ。許される」
「だからって仲間内で圧力かけんな!あんたが睨むから怖がってんじゃん!」
大体、頭からの命令ってなんだ!
旺牙は私の護衛か!?んなバカな!
「そうカリカリすんなや。オレが頼んだんや」
「いや、だって……って、えぇええええ!!!」
振り向いたそこには、順番に待つ翼宿の姿。その後には攻児もいる。
ペアだ。こいつらいつもペアだ。
「な、ななななんでここに翼宿が……!」
「今日からお前らと飯、食うことにしたんや。ええやろー?」
「!!!」
なんで!?
いや、私だって最初は一緒に食べないことに驚いた。
一々部屋に運ぶのも、正直いって面倒だった。でもさ、実際現れてごらんよ。
みんな、ドン引きだよ……。
頭と副頭……その2人が来たら……ビビリまくってんよ?
「オレはいっつも一緒に食べたかってん。けど攻児が……」
「頭の威厳は大事にせなあかん」
「これやもんなあ。せやけど、今日からはオレもここで食うで。ええやろ!お前ら!」
「へ、へい!!」
「か……頭と一緒やなんて、嬉しいですわ!」
「ほ、ホンマやな!」
………いや、明らかに無理してるって。萎縮しすぎてる。
「お前ら、頭に失礼や。いつも通りせえ」
「へ、へい!旺牙はん!」
……追い討ちかけるなよ。
「お前、もう平気なんか?」
「え?……あ、はい。どうにか……二日酔い?にもならなかったみたいで」
「腹は?」
「……まあ、ものすごくアザになって触っただけで悶絶しますけど」
「そか……すまんな」
「いや、翼宿がしたわけじゃないから……」
「南央。きつい時は言うんやで。ええな?」
「ぅ、あ……はい。わかりました」
た、翼宿と喋ってる……!こんな普通の会話を……!しかも心配された!
そう!これだよこれ!翼宿はこうでなくちゃ!!
昨日の翼宿は………怖かった。
知らない顔。朱雀七星士ではなく、山賊の頭の顔。
「お前はもう食ったんか?」
「え?あ、私はあとで……」
「こいつは俺らの残りもん、食ってるんです」
「げっ、旺牙……」
後ろにいたの忘れてた……!旺牙から聞かされた翼宿は顔をしかめる。
「そらあかんな。ほんなら、オレらと食うで」
「………はい?」
「ああ、それええな!旺牙、お前も一緒に食べようや」
「光栄です、攻児はん」
旺牙が脇を通り過ぎて翼宿らの所へ行く。でもその時、すかさず私は手を取られた。
「早くしろ。頭と副頭を待たせるな」
……いや、ちょっと待て!!いきなりやってきた夢のような展開についていけないんだ……!
昨日の今日で気にかけているのはわかる。
わかるけども……急に優しくされるとむず痒い。
……そういや、私。
攻児となんかしなかった?
チラリと攻児をみる。
食卓についた攻児は私の視線に気づくと、口角を上げた。
「ん?どないしたん?」
「………いやぁ、別にぃ……」
「そか?」
至って普通。そうか、あれは普通なのか。
よし普通ってことだな!
「攻児さん!昨日はありがとうございました!水もものすごく美味しかったです!」
声高らかに言い放った私に、旺牙がげんこつを落としてきた。
「いって!!」
「やっぱり、あんたはバカだ」
「はあ!?なにが!」
「ええんや。南央ー、美味かったん?」
「はい!生き返りました!」
「そらよかったなあ」
「はい!!」
にこやかに返せば、また旺牙が頭を小突く。
こんにゃろ……たっかい位置から落としやがって。
昨日の頭痛がぶり返したらどうしてくれるんだ。
睨んで返すと旺牙はふんっ、と鼻を鳴らした。