ふしぎラビリンス3~力無きもの~
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私のせいだ。ちゃんと旺牙は忠告していたのに自分には関係ないと軽視した。
翼宿が短剣をくれていたのに、私はそれを落とした。私がこの屋敷に住みたいと言ったために、あの人たちはこんな私にさえ手をだそうとした。
………全て、私が招いたことだ。
「………っ、……あの!!」
未だこの部屋にいる彼らに声をかけた。一斉に視線が集まる。
「私が、暴れたからなんだよ!がむしゃらに暴れたから!!あの人たちのことも……たぶん……そう!蹴ったと思う!お互い様だ!」
「…………」
「それに……それに最初に言ったじゃん!女と思ってくれなくていいって!翼宿だって、女に見えないって言ったじゃん!だからさ……だからっ……」
私のせいで追い出すなんてことしないでよ……。
口早に叫んだ。
でも私の声以上に、もっと大きな声で言葉を遮られた。
「アホなこと言うなや!!」
翼宿がズカズカと大股で近づいてくる。
「お前がどんなに言うたかて、あいつらはオレとの約束を破ったんや」
「翼宿……!でもさ、仲間なのに!私が来てなかったら……今でも仲間のままだったじゃん……」
次第に声に力が無くなってきた。
ああ、ダメだ。頭の痛みも腹部の痛みも取れない。
「……もう気にせんと、休み」
バフッと布団が掛けられる。
「……女に見えん見えん言うて悪かったわ。お前の危機感……オレが弱らしてしもてたな」
「………?」
「……お前は、女や。オレの仲間が悪かったな」
「っ……!」
やっぱり、仲間だって……。翼宿だってつらいはずなのに!!
「待っ、……!」
でもその時には既に翼宿は部屋を出ていて。それに続いて攻児も部屋をあとにした。
最後に旺牙が残る。
すぐに出ていくものと思っていたら、旺牙が私の方へ歩いてきた。
「……なんてザマだ」
ごもっともだ。
でもなんで旺牙までその言葉とは似合わない苦しそうな顔をしてる?
旺牙は私の横に落とした短剣を置いた。
「拾ってくれてたんだ」
「頭から頂いたものだろ。落とすな。それから……次はすぐに使え」
「…………」
落としはしない。でも……使うかは……わからない。
私がしっかりしていたら、こうはならなかったはずだ。ちゃんと抵抗して、対応出来ていたらきっと………。
短剣を手に掴む。
……あれ、こんなしっくりと来てたっけ?
「……明日の飯は俺が作る」
な、なんか突拍子もなく言われた。
でもさ……これって“休んでろ”って言われてるんだよね、きっと。
「作れんの?」
「出来ないわけじゃない。ただ、まずいだけだ」
………それ、一番嫌なヤツだ。
「いいよ。ちゃんと作るから」
「……作れるのか」
「さあ、どうかな。仕込みは終わってるけど……今は頭がガンガンする。体中も痛い」
「……………」
「酒、飲んじゃった」
「……そんなの飲んだうちに入らない。うまくなかっただろ」
「うん。激マズだった」
「……………」
あんなのをこいつも翼宿も攻児も、そして……あの人も飲んでいたのか。
夢だった。
いつか柳宿と一緒に飲んで……人生相談なんか、しちゃってさ……。
「……っ………ねぇ、旺牙」
「なんだ」
「私に……ちゃんと剣の使い方、教えて」
「ちゃんとも何も、教えろと頭から課せられている」
相変わらずの無愛想。でも、優しくない訳ではない。
「……ああ、それと……」
旺牙が思い出したように呟く。
「あまり深夜にウロウロするな。こんな夜更けまで飯の準備なんかするからこんなことになるんだ」
「え?」
「あんたの部屋。どこにあると思ってる?」
「どこって……空いてた部屋、じゃ……」
そう言うと、旺牙はため息をついた。
「それもある。だけど、ここに来るには頭と副頭の部屋の前を通るしかない。通った先にある部屋はあんたの部屋だけだ」
「え、そうなの?」
じゃあ、つまりは……やっぱり守られていたわけ、か。
「部屋に入ってしまえば安全だった。……今夜はオレの失態だ」
「なんでさ」
「……見回りに時間がかかった」
……ああ、もう。こういうのやめてくれないかな。
優しさがしみる。
「旺牙も、ありがとね」
「……なんだ、いきなり」
「いや、ちょっと言いたくなってさ」
「礼より飯、なんか増やせ」
「はいはい」
「あの甘い汁がいい」
「おしるこ?」
「ん」
……甘党か?
「はいはい、朝からは無理だから夜にね」
「ん」
満足そうじゃないか。
きっと、こいつも剣の腕を鍛えるのも大変な思いをしたはずだ。
しっかりしろ、南央。強くなれ。
若さだけの怠け者にはなるな。
力無い者がすること。それは……努力だ。