ふしぎラビリンス3~力無きもの~
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夜もだいぶ深まった頃、私はせっせと翌日の下ごしらえをしていた。
今のペースでは徹夜になってしまう。それもこれも屋敷内の掃除をしていて随分と時間を取られたからだ。
だから焦っていた。
いつもなら風呂に入っている時間だ。
ああ早く入りたい。こんな汗だくで作業しているんだ。でも今日は風呂はなしと先に旺牙を言われてしまった。
聞けばどうやら私が入っている時は、彼が見張りについていたらしい。
旺牙は、“頭からの命令だから”と言っていたけど、この外見とこの性格。翼宿がそんな指示を出しているとは思わなかった。私を女扱いするなんて……思ってなかった。
お礼を言いたい。
こんな私を気にかけてくれてありがとう、と。でも翼宿はここの頭。話す以前に会うことも難しい。
それに今は……。
“女を抱きに行ってる”。
旺牙の言葉が脳裏をよぎる。翼宿も今、誰かの相手をしているのだろうか。
翼宿だけではなくて攻児も。
「……………」
考えたらムカムカしてきた。私の持つ翼宿のイメージが崩れてしまいそうだ。
「翼宿は!純情が!いいのに!!!」
ダンダンダン、と勢いよく大根を切った。
どうもここにいるとリアルだ。知らなくてもいい私生活を見せつけられている気がする。
「いらないってぇの。男の!事情なんてさ!!」
最後にダン!と大根を切った。
……野菜は丁寧に扱いましょうね。ごめん、野菜さん。
下ごしらえが済む頃には、もう月の位置は随分と傾いていた。
やばい。本当に早く切り上げなくては。ちょっとでも寝ないとしんどい。明日の朝も早いのだから。
そう思った時だった。疲れもあってすぐに反応できなかった。
明かりの乏しい暗闇から……手が伸びてきた。
「っ……!?」
影に気づいた時には口を手で塞がれていた。
思いっきり鼻と口が塞がれて瞬時に息がしづらくなる。
「むぅっ!!」
すぐに体が持ち上げられ、足を掴まれた。
驚いてバタバタと暴れるとすぐに腹にドンッと打ち込まれた。
殴られた……?
よく理解出来ずにいると、痛みが遅れてやってきた。ズグンズグンと腹部が痛い。
ぶわっと身の毛がよだった。
一体、何がどうなっているんだ。私を後ろから羽交い締めにして口を塞ぐ者と、足を掴む者、2人いる。
「んんーーっ!!」
「ちっ……大人しゅうせえや」
耳元で聞こえた声に聞き覚えがあった。
この人は……いつも喜んで……私の作ったご飯を食べてくれていた人だ……。
「ええ子にしとき。頭らだけ色街に行ってもうて、ずるいやん」
「俺らも溜まっとんねん。日頃働いとる褒美くらいもらわなやってられへんで」
「旺牙もおらんなんぞ、こんな日ぃは滅多にないで」
……な、なんて奴らだ……!
耳元で気持ちの悪い息遣いをしてくる。
「んっ!!うーーー!!」
「暴れんな!」
「酒蔵や!こいつ、下戸や!!酔わせりゃ自分から股開くやろ!」
「!!」
「運ぶで!」
ま、まずい。
今まで絶対に入らないようにしていた場所へと連れていかれる。
相手との体格差から私の足は地についておらず、暴れた拍子に腰に下げていた短剣がカシャンと落ちた。
目の端でその場に取り残された短剣を追った。
ガチャリと開いたその部屋。開いた瞬間に塞がれていた手が緩んだ。
「たすけ……っ!!」
大声を出そうとした瞬間に、鼻をつく酒の匂いに、ぐっと喉がなった。
もわっとした匂いが容赦なく鼻から体に入ってくる。
「っ………!」
声を出せない。
むしろ、息をしてはダメだ。
逃げたいのに体は未だに羽交い締めにされて、更には服の上から体をまさぐられている。
「こいつ、息とめとるで」
「今だけや。苦しゅうなってどうせ口開ける」
こいつらの言う通りだった。
ジタバタと抵抗すると余計に息が苦しくなる。
吸いたくない。でも、もう既に頭がクラクラする。
「っ……はあっ!」
「おっしゃ、吸ったで」
「おら、これでも飲んどけ」
そう言うと、酒瓶を私の口に押し込んだ。
「ぅぐっ……ごほっ!」
あ、熱い。ものすごく喉が熱くて堪らない。
「……ごほっ……く、ぅ……」
「すぐに気持ちよくさせたるさかいな」
「……触るな!気色悪い!!」
頭が痛くなってきた。服が剥ぎ取られ、なけなしの胸を掴みあげられた。
あまりにも乱暴で、痛くて、そして下品な息遣いに触り方。
ああ……なんてことだ。
力いっぱい押しているのにこいつらは逆に力で押さえつけてくる。
首を左右に振ることしかできず、這い上がろうとすれば腰を掴み引き戻された。
情けない。
無性に思い出すのは……“気をつけろ”と言ってくれたあいつの言葉。
せっかく忠告してくれていたのに、このザマだ。
渾身の抵抗が全て何も意味をなさない。
このまま、ヤられてしまうのか。
酔いが回り始めたのか、私は抵抗すら出来なくなった。
男共の荒い息が聞こえる。何をそんなに興奮することがある?日頃、男ばかりだからか?
だから……こんな私でもいい、のか。
「……たす、けて………」
身体中を触られながら私は手を固く閉ざした扉へと伸ばした。
目尻に涙が浮かんだその時、今まで閉じていた酒蔵の扉が………開いた。