ふしぎラビリンス2~居場所は自分で~
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翌朝、ここを使えと割り当てられた部屋で体を丸めて爆睡していると、いきなり布団を剥ぎ取られた。
「んあ!?な、なに……!?」
「起きろ。飯はまだか」
………あれ、私いつ結婚したんだっけ……?
にしてももうちょっと言い方あるんじゃ……。
「今から朝の作業を終えた50人が食べに戻ってくる。飯がなかったら……あいつらどう出てくるかな」
「…………」
「ああ、そう言えば。一度飯をひっくり返されて、半殺しにまであった奴が……」
「作ります!作ります!!うわあ!起きた!起きたぞ!私の脳!!」
ガバッと起き上がれば、無表情の男、旺牙が腕を組んで立っていた。
くっそ……昨日の今日でまだ腕痛いって言うのに……。
「……早く作れ。すぐに作れるなら話は別だが」
「…………素直にお腹空いたって言えば気持ちよく作れるんだけど?」
「腹が減った」
「素直!!」
もう少し性格の悪いやつかと思ったけれど、そうでもないらしい。
そこまで言ってくれるなら、やらないわけにはいかない。身支度を整えると、私は持ち場へと向かった。
順調に人数分を用意していく。
すると、やけに騒がしくなった。怒鳴り声にも聞こえる。
「何してくれんねん!そりゃ、俺のじゃボケェ!」
「ぼーっとしとんのが悪いんや!こいつは頂いたで!」
……これは一体どうしたことか。
「ちょ、ちょっと……何?どうしたのよ」
「アネキ!!」
「は?」
調理場から出てくると、一斉に群がられた。
「アネキ、最高や!」
「メッチャうまいで!!」
「これ、もうないんか!?」
え、えーと……これは褒められてるんだな。うん。
「あ、ありがとう……え、でも“アネキ”って、なに?」
「自分よりも秀でている人への呼び名だ」
「あ、旺牙」
気づけば後ろに立っていた。
彼を見上げれば、すかさず群がっていた彼らが姿勢よく立ち直った。
「剣豪のアニキ!」
「け、剣豪のアニキー?」
「……………」
そんな称号が……!?
じゃあ、何か?私は“料理のアネキ”?“食堂のアネキ”?
………絶対、嫌だ。
「あほ!旺牙はんは名前で呼べ、てなっとるで!」
「し、しもた……!す、すんません!旺牙はん!」
「……別に構へん」
「あ!私も!!私も名前がいい!!」
「せやかて、アネキ……」
うわあ……嫌だ。嫌だ。
なんで私よりも上だと思われる人に“アネキ”と呼ばれなきゃならんのだ。
「……名前で呼んでくれたら、一品増やそっかなー……」
「へい!!南央はん!!」
「はやっ!!」
口々に名前を呼ばれる。
それはそれで気恥しい部分もあるけれど、アネキよりはマシ。
「南央」
ふいに呼ばれた声に、一瞬、本当に一瞬だけ驚いた。
「え、何?」
「……呼んだから、もう一品」
「…………」
くっそ、なんかメチャクチャやりたくない。
でも、その待ってますと言わんばかりに差し出された手を見れば……渡さないなんて良心が痛む。
「はい。お手製、食後のデザート。おしるこだよ」
「ん」
ほい、と乗せてやると、じ…とそれを見て、旺牙は満足そうに去っていった。
か、可愛いところがあるじゃないか。