ふしぎロマンス12~錯誤する想い~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
風に乗って進むと、時間のかかる道のりがあっという間に過ぎていった。
鬼宿には追いつけるだろうか。鬼宿の身体能力はずば抜けてはいるから気は抜けない。
でも焦っても仕方ない。この風は透の意志を受け入れているのかこの身を任せられる気がした。
この時にしっかり体を休めさせられるよう振動のない風の層の中で、少しばかり目を閉じ休息をとった。
しばらく行くと赤を貴重とした宮殿が目に入る。雨がまだ残る中それはすぐに目に入った。
「鬼宿……!星宿……!!」
すでに2人は剣を交えていた。
風は敷地にスィーッと降下する。足が地についた瞬間、風がふわっとかき消えた。
「行かなきゃ……!」
体に一気に痛みが走る。それでもムチを打って奮い立たせる。
鬼宿と星宿のさらに向こう側。宮殿の中から、2人に目掛けて走っていく美朱が目に入った。
ほかの七星は鬼宿と星宿の闘いに視線が集まり気づいていない。
その時、星宿が雨に濡れた地に足を滑らせた。その隙を見逃すわけもなく、鬼宿は地を蹴りあげ、上から剣を振りかざした。
誰もが決着の時。そう思っただろう。
でも、わからないの?美朱の悲痛な思いを……!
「ダメーーーーっ!!!!」
美朱が叫び飛び込むのと、2人が剣を振り下ろし突きの攻撃をするのと、私が腕を振り上げるのと、全てが同時だった。
地が2人に目掛けてモグラが進んでいるかのようにモコモコッと突き進む。
美朱が鬼宿を守るかのように星宿に体を向けて立ちはだかる。その前に巨大な石柱が突きあがった。
振りかざした星宿の剣は美朱に刺さることなく、その柱にガキンッとあたった。
しかし、残念なことに鬼宿と美朱の方には隙間がなく、石柱を作ることが出来なかった。振り下ろした剣は美朱の肩を切りつけた。
「「「「 美朱!!!! 」」」」
星宿が柱を避け、鬼宿と美朱に駆け寄る。鬼宿は無意識に美朱を受け止めていた。
美朱はぐったりと意識がなく、彼女の目からは涙がこぼれた。
お願い、鬼宿。……気づいて。自分のした過ちを。これ以上はダメよ。
「チッ……浅かったか」
そん、な………。
「鬼宿……そなた……美朱になんてことをっ……!」
……ダメ……だった……?
美朱が息をしていると知った鬼宿は舌打ちをした。
その場にいる全員が絶望する。軫宿がすぐに美朱を治癒し始めた。
鬼宿……何してるのよ。美朱まで傷つけて……。
バカよ、ほんと。
「奏多……!!」
「あんた、また無茶して!どうやってきたのよ!!」
私に気づいた井宿と柳宿が駆け寄ってくる。でも私の視線は鬼宿をずっと捉えていた。
「……オレを追いかけてきたのか」
「えぇ、そうよ」
「フッ……そんなにオレの女になりたかったとは、知らなかったな」
「……どうとでも言うがいいわ」
私達の会話に七星が驚きの眼差しを向ける。
ほんとにもう……。
どうしようもないんだから……。
美朱をチラリと見れば、軫宿によって傷は治って入るものの意識は戻ってなかった。
今のうちかもしれない。まだ……眠っていてくれてる間に。
「鬼宿」
ゆっくりと近づいた。柳宿や翼宿が止めようと叫んでいる。
「鬼宿……望みを叶えてあげるわ」
「……ああ?」
「しっかり味わいなさい。これが最後よ」
目の前に立つと、鬼宿の胸倉を強引に引き寄せた。
そして、近づいた唇に自ら口づけした。
さっきはされるがままになってしまったキス。今度は……あなたを引き戻すために口づけをする。
主導権は、渡さない。
余裕を決め込んでいた鬼宿の様子が一変する。私から離れようと、必死だ。ここで離すわけにはいかない。
そんなのは許さない。何度も深く口付けては舌を絡ませた。
みるみる私の再生の力が渡され、鬼宿の体が綺麗になる。傷、服の破れ、すべてが戻る。
そう。彼の表には出てはいけない感情も。
引き離そうとしていた腕の力が弱くなった。
さっきまでとは違う対応。唇から伝わる相手の戸惑い。
私の体も力の与えすぎにもう限界のようだ。ゆっくり唇を解放した。
「………ハァ………」
間近で鬼宿と目が合う。胸倉から手を離すと、その場にへたり込んだ。もう、ほんと……疲れた。
「奏多……オレ……何……」
額には赤く“鬼”の字が浮き上がっていた。この字を取り戻すのが、こんなにも大変だなんて。
目の前で戸惑いの表情しかない鬼宿をじと……と見上げた。
「後悔しなさい。忠告したのに唯に飲まされるからよ、バカ」
その顔。
頼りなく不安げに見てくる顔だったけれど、私はその顔の方が好き。
「あ……雨やんでる」
空も段々明るんできた。
ようやく……鬼宿が戻った。