ふしぎロマンス12~錯誤する想い~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「くそっ……」
頭を押さえていた鬼宿が部屋から駆け出した。追いかけようとするも、透に支えられていては無理な話だった。
「大丈夫?奏多……」
透の声に眉を下げた。大丈夫といいたい。こんなの、平気だと。でも、体が小刻みに震え出す。
心臓は早鐘のように鼓動を増していた。
「……大丈夫じゃないよね……ごめん」
ふわっと抱きしめてくれる透の体も震えてる。あなたの方が痛々しいのはなぜ?自分の事のように私を心配してくれているの?
透の暖かな体温が、私を落ち着かせてくれた。
「透くん……鬼宿、紅南国に……行っちゃうよね……」
「たぶん」
「……蠱毒、破れるよね?」
「…………」
2人とも思っていることは同じだったと思う。
こうなってしまった鬼宿は美朱への愛で蠱毒に勝つ。でも、今、私達の知る鬼宿は……どうだ。
美朱への愛もあるだろう。でもその愛は……打ち勝てるほどの愛だろうか。
「奏多、君はどうしたい?」
「……鬼宿を戻したい」
あんな鬼宿は、嫌だ。
「俺もだ。あの鬼宿は全てを破壊したくなる。跡形もなくなるくらいに」
「……え゙……冗談、よね……?」
「好きな人に乱暴するような奴に冗談は言えないよ」
「えっ……」
好きな、人……。
カァッと顔が熱くなる。さらりと言ってくるところが心臓に悪い。
「とりあえず服を着て。目のやり場が……」
「え!?わわっ……ちょっと待ってね」
帯が緩まり肩が憐れもなく露出していることに気がついた。あたふたと着直していると、そっと髪をすくわれた。
「透くん?」
「髪も……乱れてしまったね。せっかく綺麗なのに」
「え……あ……。そんなのまた縛れば……」
透は結っていた紐をスルリと解く。
「おろしてるのも可愛い。好きだよ。俺は」
!!!!!
も、ほんと勘弁して……。
こんなセリフ、言われたことない!さらっと言える人って存在するのね!
髪をなでなでされているけれど、やめてと言えない。また結べばいいって思ってたのに……そう言われちゃ結びにくい。
「結ばないの?」
「え?あ、うん……たまには……ね」
「そう?可愛いよ」
あ、嬉しそう。
その笑顔は色々とくるものがある。
「そうそう。奏多にいいもの、あげるよ」
「え?なに?」
「はい、どうぞ」
手の中にポン、と置かれたものを見る。
巻物?
「四神天地書だよ。美朱ちゃんが持っていた」
「………えぇ!?それがどうしてここに!!」
透を見ると、くすくす笑っている。
まさか、くすねてきた?……ほんと、恐れ入っちゃう。
「もらっていいの?」
「うん。心宿にはうまく言っておくから。俺は心宿にもムカついてるからね」
「透くん……」
「さてと……あとは、君だけだね」
透はそう言うと、風を幾重にも作り出した。
「透くん!?」
その風はすぐに私を包み込む。体がふわりと浮いた。透の姿が下の方に見える。
「俺達は黄龍の力を持ってる。君は使いこなせてはいないかもしれないけれど、この与えられた力は計り知れない。君の再生の力だって、どんどん強さを増しているだろう?」
そう聞かれて風の層の中で頷いた。
「もしかしたら最悪な状況になってるかもしれない。癪だけど君がいって助けてあげるしかない」
「私に出来る!?」
「君の再生の能力はすごいと思う。完全に治せない?まさか。翼宿は完全に治ってた。それはどうして?」
翼宿が完全に治った理由……?
「くち……?」
でも、まさか……。
「風や破壊の力を生み出す時、気を高めてるんだ。だから君も少なからず気を扱えるんだと思ってた。本当は行かせたくない。だから、できれば美朱が戻してくれることを願っているよ」
そう言うと、彼は手をなめらかに動かした。私の体はどんどん高いところまで浮かび上がって、自然の風に合流する。
「気をつけて……奏多」
透の声も姿もあっという間に小さくなった。