ふしぎロマンス12~錯誤する想い~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
心宿に横抱きにされても、鬼宿の所へ連れていってくれるならと大人しくしていた。
なぜなら……やはり痛い!
夢の中では痛くはなくて、逆に引き戻される時のビリビリ感の方が痛いくらいだった。
痛いことづくし……最悪だわ。
こんな酷い痛み、この世界に来るまで経験することもなかったのに。
心宿の足が止まると、扉は勝手に開いた。
中に入れば、その部屋の悲惨な現状に目を大きくした。
「なにこれ……」
「フッ、血気盛んな男だ」
部屋のものほとんどが荒らされ壊されている。机も椅子も壁も……本来の鬼宿だったら決して壊すなんて有り得ない壺や置物まで粉々になっている。
「……奏多」
部屋の真ん中に佇んでいた鬼宿が振り返る。私が今横抱きという状況に置かれていることに、これでもかというくらい眉をひそめた。
「そう嫌そうにするな。これはお前への貢ぎ物だ」
「ん!?貢ぎ物!?聞いてないけど!」
心宿は私の言葉を無視して部屋の中を歩くと、ボスンッとベッドに下ろした。
その衝撃が背中に直撃して、悶絶した。
「唯様には内密にしてやろう。特と味わうといい」
「…………」
「……いったぁ……え……置いてくの!?味わうって何!?ちょっと!心宿!!」
必死の思いで起き上がるものの、私の体はすぐに黒いもので覆い尽くされた。
鬼宿が……私を抱きしめている。
「ッ……!……放して!」
「黙れ」
その声が、鬼宿ではない声色にビクりと肩を揺らした。
ダメだ。本気で逃げなくちゃ……ダメだ!
体を引き離そうと腕に力を入れた。足もジタバタさせてみる。
鬼宿は煩わしそうに顔を歪めると、一番触られたくない背中を押して刺激を与えてきた。
「っあぁぁ!!痛い……!痛いっ!!」
「フッ」
この状況で笑ってる!?人が痛がっているのに……!?
もう鬼宿の心はどうなってしまったのだろう。
「たま、ほめ……戻ってきてよ……っ」
涙がぶわっと出てくる。そのままベッドに押し倒され、目に溜まっていた涙が横にこぼれ落ちた。
「大人しくしてな。お前は貢ぎ物なんだからよ」
甘い雰囲気はない。優しく甘く、うっとりするような言葉もない。
ただ己の欲求を満たそうと、私の唇を奪う。抗おうにも背中の痛みで力が入らない。
口内に舌が滑り込めば言葉通り味わわれる。
何度も深く重なり、部屋には淫らな音が響き渡った。
「ふ…………ッ」
嫌なのに声が漏れる自分が嫌になる。これじゃ、鬼宿が傷つくだけだっ……!
「ンッ……鬼宿……やめてっ……」
唇が口から離れるもキスの愛撫は止まらない。顎を上に向けられると、鬼宿は首を舌でなぞっていく。
手を動かそうとすればその手に鬼宿の手が重なりベッドに押し付けられた。
「痛っ……!鬼宿っ!あんた、あとで後悔するわよ……っ」
その言葉に、首筋を舐めていた唇がピタリと止まった。
「後悔?オレが?……笑わせてくれる」
「する!絶対……するんだから!知らないから……!」
片方の手が離れたかと思うと、私の帯を解き始める。服の合わせ目が少し肌蹴ると、そこにもまた唇で愛撫を始めた。
「イヤッ……!」
どうしようっ……やめてくれない。こんなこと、あっちゃいけないのに!
また、涙が既にこぼれ落ちた跡を続けて落ちていく。鬼宿の手が胸に触れた時だった。
勢いよく部屋の扉が開かれ、そこから息を上げて透が入ってきた。
「……どういうつもりだ?鬼宿」
「邪魔するなよ……」
鬼宿は一言つぶやくと知らんぷりを決め込み、私にキスをしてきた。
「ンッ!……ぃやッ……!!」
透くんのいる前なのに……!
「鬼宿……離れろ」
「ッ!!」
透から低い声が聞こえたかと思うと、鬼宿は頭を押さえ込み私から間を取った。
今まで何ともなかった彼が、こんなにも苦しみ出すなんて……ただ事じゃない。
「そのくらいで苦しいの?本当に弱いね。俺を怒らせたら……お前、死ぬけどいいかな」
「透くん!?ダメだよ!それは!」
見れば透の周りに風がひゅうひゅう、うなり声にも聞こえる音を出して巻き起こっていた。
透の鬼宿を見る表情。その顔は完全に怒りを見せていた。
「いくらなんでもこれは許されない。鬼宿……死ぬ?」
「くっ……ざけんなっ!」
なおも苦しむ鬼宿を睨みつけながら、右手をスイッと横へ動かした。すぐに風は私たちの方に流れ吹き、鬼宿にも勢いよく向かった。
鬼宿は強風に吹き飛ばされた。でも、私の方へ来た風は私を包み込むと、ふわっと体ごと持ち上げた。
「えっ……えぇ!?」
ふわふわと浮く。私を包み込む風は、透の元へと戻った。
「……ごめん、来るのが遅くなって……」
風が体から離れると、透がしっかり体を支えてくれる。至近距離で見上げた彼の表情は、とても悲しみに満ちていた。