ふしぎロマンス12~錯誤する想い~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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君が好き?誰が好き?
……透くんが好きと言ったの?私を?透くんが?
「う、うそでしょ!?なんかの冗談!?気の迷い!?」
「どうしてそう捉えるかな……」
「だって透くんだよ!?あの全女子生徒が一度は好きになるほどの透くんだよ!?」
「プッ、何それ。初耳だな」
抱きしめたまま透は笑う。笑う時に吐息が首にかかって、思わず首を引っ込めた。
「でもそれならさ……」
「ッ……」
話す度に首に……柔らかなものが当たる。
「奏多も一度は俺を好きになった、ってことかな?嬉しいな」
「ッ………!!!!」
チュッとリップ音をさせながら透が首にキスをする。
なにこれ、なにこれ……!!どうしたらいいの!?
透くんってこんなことするの!?
「奏多……やっと告白できた」
「透くん……あの……」
「君に、愛されたい。ダメかな」
透は私から離れると顔を覗き込んでくる。
あぁ……もう今は見ないで欲しい。
「その顔なら自惚れてもいいのかな?」
「透くんっ……も、解放してっ」
「俺、困らせてる?」
「……少し。……こういうの、慣れてなくて」
そっかぁ……と、体にもう一度抱きつく。
言ったそばから……この人は……!
「ま、なんだかんだ10年も待ったんだし、今は意識してもらえるだけでいっか」
「えっ……じゅ、10年?」
「そうだよ。さあ、今日はもうゆっくり休んで」
透はそう言うと、頬に軽くキスをした。また、カァッと熱くなる。心臓が痛いくらい高鳴る。
「それにしても……」
透はスゥ……と目を細めて先程心宿が出ていった扉を見据える。
「まさかこんな方法だとは……」
「え……?」
「心宿に頼んだんだ。心宿は気功の達人だから何か特別な力を持って奏多の痛みを取り除けないかって」
心宿の力を思い出せば確かに何だかすごいことが出来そうだ。
「その“気”を送ることで生命力が高められるんだ。だから、奏多に心宿の力で高めてほしいってお願いした」
「気……」
「なのにこんな事に……ごめん。軽率だった」
ーーすでに気をもらったことがあったのか。
どうして今、心宿の言葉を思い出したのだろう。
気なんてもらったことはない。しかも、そのやり方が口からとかなら尚更記憶にない。
「奏多?どうかした?」
ぼーっと考え込んだ私に透は問いかけてきた。
「あっ、ううん。なんでもない。大丈夫……正直、助かったから……」
「そっか。奏多は優しいな。優しすぎて心配だよ」
「え?」
「なんでもないよ。それじゃあ、また明日」
透は部屋を出ていき、私は緊張の糸が切れたようにベッドに突っ伏した。頭に血が上ってふわふわする。
思わず唇に触れる。
ああ……なんて1日だ。
鬼宿から始まって……翼宿。あ、でも翼宿はあくまで治療だし……いや待って。あれは私から勝手にした。
……会わせる顔がない……。
訴えられたら終わるやつだ!
いたたまれなくてまたベッドに突っ伏した。
色んなことがありすぎて頭から湯気が出そう。いや、実際に熱が出たかもしれない。
窓の外では雨が激しくなってくる。
その音を耳にしていると、体は正直ですぐに眠りについた。
夢なんて見ないくらいには熟睡する自信があった。
だけどやはりどこかで考えていたのだろうか。
私はいつ、どこで“気”をもらっていたのだろうか、と。
真っ暗な空間に、じと……と冷や汗を浮かべた。
まずい。夢の中に入り込んでしまった。
暫く歩いてみるとうっすら明かりが見え、どこかの部屋につながっていた。
入ってみると見覚えのある部屋に、あたりを見回す。
すると、この部屋の持ち主はいた。
この雨にでも打たれたのだろうか、髪は濡れたまま、服も着替えようとしたのか前だけ開いた状態。
着替えを終えた様子はなく、ただ床に座り込んで窓の外を見ていた。
その手元には、外された面が落ちている。
その唯ならぬ雰囲気に声をかけてもいいものか悩みながら……思い切って口を開いた。
「井宿」
その瞬間、バッと起き上がる井宿に面食らった。
キョロキョロと視線をさまよわせ、私の姿を捉えると一目散に駆け出した。
こんなに慌てる井宿は見たことがない。私からも近づくと井宿も腕を伸ばした。
でも、その腕は……体ごと私を通り過ぎた。
「あ、触れない……んだ」
通り過ぎた井宿に振り返れば、彼は口元を覆って俯いていた。井宿の前に移動して彼を見る。
「……実体がないのだから……当然なのに……オイラは何を……」
これまた珍しい。井宿の耳が赤くなっている。
もしかしなくても……井宿は今、私を抱きしめようとしてた……?
井宿が、私を……。