ふしぎロマンス12~錯誤する想い~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「今……申したことは……確かか、井宿。鬼宿はもう戻ってこない……奏多は怪我をして捕らえられている……そう申すのだな!?」
「はい……ですのだ」
井宿は平伏した。
自分は何をやっていたのだろうか。目先のことに囚われ、美朱を守ることに必死になっていた。
彼女は大丈夫。どうしてそんなことを思ってしまったのだろう。
星宿が美朱を見舞うと良い、退出した。
残された柳宿は盛大に息を吐き、ワナワナと震え始めた。
「鬼宿も何やってンのよ……信じられない!翼宿、あんたもよく無事に帰ってこれたわね」
「…………」
柳宿が話しかけても翼宿は目を吊り上げ、一点を見据えていた。そこに美朱を診終わった軫宿が入ってくる。
柳宿に美朱はどうだ、と聞いてこられ、軫宿は頷いて大丈夫だと答えた。
「翼宿。お前の体も診よう」
「オレは平気や。もうどこも……痛いとこなんてあらへん」
「だが美朱がお前も相当やられていたと……」
「平気や言うてるやろ!!」
バッと立ち上がってドカドカと部屋を出ていった。立ち去る翼宿を目で追い、柳宿達は溜息を吐いた。
「何だか……荒れてるわね……奏多が心配なのはわかるけど……」
「自分を庇って受けたそうだ。気にもするだろう」
「そうねェ」
「早く……あいつを治してやりたいものだな」
「ホントに……」
柳宿も1人取り残された奏多が心配だ。だがもう1人……今なお、その場に佇む井宿が気がかりだ。
「あんな井宿……初めて見たわ」
柳宿は悟った。
どうやらあのコには……早く帰ってきてもらわなくては、と。
体が……痛い。動かない。
この温かみは……何?
体に……力が戻……。
「フッ……そんなに欲しがるな」
今のは誰の声?
閉じていた目を、スゥ……と開ける。
「青い……目……青い目!?」
バッと目を開ければ焦点があってくる。横たわる私を抱き上げ、目の前に見える金髪に碧眼だなんて誰のものかはすぐわかる。
「心宿!?」
「ずいぶん効き目があったな。すでに気をもらったことがあったのか……」
「……なに?何だって?」
心宿から離れようと試みる。まだ背中は鈍い痛みはするものの、あの激痛ではない。
「私の“気”を与えてやった。感謝するがいい」
「……気?」
「わざとわからないフリをしているのか?……貴様もあの男にしていたではないか」
「あの男って……」
「名は……翼宿、と言ったか」
翼宿にしたことと言えば……じゃあ、何か?
心宿は今……私に……キスした?
「ひどっ!寝込みを襲うなんて!!犯罪だわ!!」
「あのまま死なれては困るんでな」
心宿はうっすら笑みを浮かべると、“黄龍の依り代様”と、嫌味にも聞こえる声で言った。
「心宿、そこまでにして。意識戻ったのなら退くべきだ」
「これは透様。いらしてましたか」
ちょっと!同じ黄龍って言うのに扱い違いすぎやしないか!?
部屋に透がやってきたことで、心宿は私をベッドへと下ろし部屋から出ていく。
え、心宿行っちゃうの!?
今はちょっとまだいてもいいよ!
普段なら絶対に思わないはずなのに、そう思えるくらいに今の状況に耐えかねていた。
「奏多……大丈夫?」
「う、うん……」
直視できない……!だって覚えてるんだから!
透くんが私にしてきた事を……。
「奏多……怒ってる?」
「お、怒ってるわけではないんだけどちょっと驚いて。それに何も薬を使ってまで眠らせなくても……」
「うん。そうだね。でも、あの時はああするしかなかったんだ。怪我もしていたし」
「……でも帰ってたら軫宿に頼んで治してもらえるわ」
「ゔ………ごめん」
透は素直に謝ってくれた。
一体なんのためにこんなことをしたのだろう。
「も、いいよ。帰してくれないのは……何か理由があるの?」
「………うん」
「それが解決したら、帰っていい?」
「…………」
「透くん」
帰っていい、と言われると思った。言ってくれると思えるほど透は優しい人だと知っていたから。
だけど、それはすぐに戸惑いに変わる。透がベッド脇に手をつくと私を抱きしめてきたから。
一気に顔に熱が集まる。
「と、とと透くん!?」
これでもか、と動揺する。ドクドクと心臓が高鳴る中、さらに追い打ちをかけられる。
「君が好きだ。俺のそばにいてほしい」
耳元で囁かれる夢にまで見た愛の言葉。今日はここ数年分を一気に体験した気がする。
完全にキャパオーバーだ。