ふしぎロマンス11~キスの嵐~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「……!何すんじゃい!」
「ごめん。でも、治った……」
「お前の方が重症じゃ!ボケ!!!」
でもまた、元気な翼宿が見られた。ホッとする間もなく、近くで大きな音が聞こえる。
翼宿は勢いよく振り返った。
「翼宿……見てきて」
そう言うと、翼宿は駆け出した。その場に鬼宿と一緒に佇む。
「どうして出てきたんだんだよ……」
「…………」
「……ッ……オレ、は……!くそっ!!」
鬼宿が頭を抱え、苦しみを紛らわすためにそのあたりの木を蹴りつける。
そこに透は落ち着いた表情で近づいてきた。
「奏多。心宿が井宿達を追い詰めているよ」
「!?」
「そろそろ井宿が結界を破くとは思うけど……」
透の言う通り、それはあっという間だった。
井宿は術を使えるようになる。結界が壊れたのか衝撃音が響いた。
これで帰れる。
「透くん……私、行かなきゃ……も、苦しいの……」
どんどん痛みは増してくる。早く、軫宿に治してもらいたい。
「奏多!」
井宿が印を結んで私を引き寄せようとする。
でもその術は透の手によって遮られ、私は透に引き寄せられた。
「え……」
「ごめん、奏多……俺も、青龍七星の中にも治癒出来る人はいないけれど……」
至近距離に彼の顔がある。あまりにも思いつめた表情に目が離せなかった。
「とおる、くん……?」
「帰さない……」
……え?
端正な顔が近づく。
その口に、何か白く小さなものが入っているのが見えた。
「っ……」
今度は何が起こっているの?しかも、何か口の中にその舌で押し込まれた。
飲み込んではダメだと思うのに、抵抗できる体力もなく、喉の奥にやられたものに自然と喉が動いて体の中へと引き入れた。
ゴクン、と飲んだのがわかると透は唇を離した。
「おんどりゃー!!何しよんねん!!」
「奏多さん!!」
「何を飲ませたのだ!」
皆の声が徐々に遠く聞こえる。
頭が……まぶたが重い。ふらり、と体が傾いた。
「眠らせただけだよ。奏多は渡せない。君たちだけで戻るといい」
力が抜けて倒れ込む私を、透が抱き込む。そこで私の意識は途絶えた。
奏多を残し、3人は戻った。美朱は星宿に抱き寄せられ、涙した。
「美朱……何があったのだ!!鬼宿は……奏多は……」
「……鬼宿と……さよなら、してきたの……奏多さんは……」
そこまで言うと、美朱は口を閉ざした。星宿は美朱の腕に気付き、軫宿に治してもらうため部屋に戻らせた。
「翼宿。井宿。何があった」
美朱が去ってから、星宿は厳しい顔つきになった。
何がどうなってこういう状況になったのか聞かなくてはいけない。
「なんで……お前なら連れて帰ること出来たんとちゃうんか!?」
翼宿が井宿の襟を締めあげた。井宿は力無く、されるがままに翼宿に引き上げられた。
「ちょっと、翼宿!」
「……いいのだ。翼宿の好きにさせるのだ……」
「な……なんやねんお前ェ。オレをバカにしとんのか!」
さらに手に力を入れると、井宿が小さく呻いた。
「……だったらどうしたら良かったのだ!あのまま居続けてもオイラたちに勝ち目はなかったのだ!君と美朱を連れ帰るだけでやっとだったのだ!」
それは初めて井宿が大きな声で感情を表に出した。
そして、ペラ……と面が役目を果たしたかのように剥がれ落ちる。
「オイラだって今、ものすごく腹立たしいのだ」
「井宿……あんた……」
傷のない方の瞳が怒りに満ちていた。その井宿の手も先程からきつく握られて血が滲み始めている。
「……放すのだ。オイラはまだ、やらなくてはいけない事がある」
井宿は一度息を落ち着かせると、星宿に平伏した。
「陛下、お話しますのだ」
井宿は感情を殺し、ゆっくりと事の経緯を話し始めた。