ふしぎロマンス11~キスの嵐~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「奏多……!」
「ち、ちり……ッ……!!」
取り残された私は、必死に起き上がろうと力を入れるがものすごく激しい痛みが走る。
呼吸も出来なくて、これほどの痛みは経験したことがなかった。
どうすることも出来ない。
目の前では翼宿がどんどん傷ついているのに。
動け……動いてよ。翼宿が死んだらどうするの。
鬼宿も、翼宿も……死なせてはダメなのよ。私を……翼宿のところに行かせてよ!
「奏多……どこに行こうとしてるの……」
声がして、首だけをどうにか動かし見上げると、眉をきゅっと寄せて見下ろす透と目が合った。
「と、おる……くん……」
「そんな大怪我までして……」
「たす、きを……」
「どうしてそこまで……どうしてそんなになってまで……ここの人達は……そうまでする必要があるのか」
どうして……。確かに私もそう思う。
彼らは物語の中の人。それはわかってる。だけど……そうだとしても勝手に体が動いてしまうんだ。
目の前で傷つくなら治してあげたい。ただそれだけなんだ。
「…………」
透がスッと手を動かした。途端にふわっと体が浮き上がる。
「翼宿の元へ連れていってあげるよ……」
透が風で私を包み込んだ。
その風がふわ……と動くと、私を翼宿のそばへと連れていく。浮いていることもあって、背中の激痛はいくらか緩和された。
「翼宿!」
すでに翼宿はボロボロだった。
鬼宿がヌンチャクの鎖で首を絞めにかかっている。
殺させない。
目の前に現れると、翼宿も鬼宿も目を見開いていた。
「……奏多……?なに、しに……おまえ、怪我……してンや……でっ……」
首が締められているのに、途切れ途切れに私を心配する。
今はそれどころじゃないのよ。あなたには……生きていてもらわないと困るの……。
私は手を伸ばした。
「「!?」」
優しく風が吹く中、苦しそうに歪む翼宿の顔を両手で包み込んだ。
そして私は、翼宿の口に自分の唇をそっと押し付けた。
弱く、細々としていた命が再生されていく。
後ろには鬼宿が首に鎖を、前では私が口付けているため身動きの取れない翼宿は、目を固く閉じて耐えていた。
大人しく受け入れてくれたことに心底ほっとした。
目を開けると翼宿の後ろにいる鬼宿と目が合う。
あなたは間違ってる。こんな鬼宿は、嫌いよ。そんな気持ちを込めて見たあと、瞳を閉じた。
鬼宿の手から徐々に力が抜けると、翼宿の体がぐらりと傾く。
一度唇を離すと、翼宿が膝をついた。
「な、何が起こったんや……」
意識はハッキリしたようだ。
それでもまだ、その体中には傷跡が見える。体の中の見えない部分もまだ、負傷したままだろう。
「翼宿、まだよ」
「へ?」
翼宿の目線に合わせると、もう一度、頬を包み込んだ。
「ッ……!!」
今度もまた、翼宿は体を固くする。翼宿の中に力を送るため、深く口付けた。
なぜ、こうしたのだろう。ただ無我夢中で、体中を治したいと思った。
思いは通じたらしい。唇を離すと、翼宿の体の傷は綺麗に再生されていた。