ふしぎロマンス11~キスの嵐~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「心宿……」
目の前に堂々と立つ心宿に心臓がバクバクと波打った。何度会ってもこの人の威圧感は怖い。
「透様、どちらへ参られますか」
「退いてくれる?唯のところに行きたいんだけど」
「それは……私達を裏切る、と……?」
ギロリ、と視線が私に来る。萎縮して後ずさりそうになるところを、透が1歩前に出て私を隠す。
「さぁ……どうかな。俺は奏多を護りたいだけだから」
「透くん……」
透と心宿が見据え合い、どちらも譲る気配がない。でもその時、確かに聞こえた。
美朱の叫ぶ声だった。
「透くんっ、美朱ちゃんが……!」
声をかけると一瞬で風が巻き起こる。それが心宿に向かって放たれたものとわかると、透は私の背中を押した。
「行って!俺もあとから行く!!」
その言葉に頷くと、声のする方に走った。
ここだ、と扉を勢いよく開けると壁からズルズルと座り込んだとわかる美朱がいた。放心状態で焦点が定まっていない。
「美朱ちゃん!」
駆け寄り、左腕に目が行く。
「あっ……美朱、ちゃん……」
これは……鬼宿がしたものだ。手が震える。
こんなことが……こんな痛々しいことが、これ以上にあるだろうか。
「ど……して………どうしてなの!鬼宿!!!」
そこにまだいるであろう鬼宿に叫ぶ。でも、そんなこと言ってる場合じゃない。美朱の腕を治さないと。
「美朱ちゃん、腕……腕を見せて……」
触れるのも躊躇ってしまう。それだけダランと力無く垂れ下がる腕。
砕かれている、そう言ってなかっただろうか。骨が砕かれるなんて……どれだけ痛いのだろう。
「おい!さっさとあの目障りな娘を連れていけ!」
鬼宿が兵を呼んだ。
まずい。美朱が連れていかれる。
「鬼……宿……」
「美朱ちゃん!待って、まだダメよ!放して!!」
「っ……奏多さんっ……」
「待って!美朱ちゃんを連れていかないで!」
私の声は虚しく部屋に響き渡った。
無理やり美朱を立たせ、引っ張り出し連れていかれる。
私がどれだけ兵たちの腕を引き離そうとしてもビクともしない。
「やめて!その子の腕、折れてるのよ!乱暴しないで!!」
後に続いていこうとするのに、それは鬼宿の腕によって妨害される。
「待て。行くなよ」
「……放しなさい、鬼宿。私、今怒ってるの」
「………ふっ」
「た、鬼宿……その人……」
その場にいた唯が静かに口を開く。
目を向けるとこの状況に戸惑っている唯の姿に、奥歯を噛み締める。
言っちゃダメだ。
この子も被害者なのだから。
でも……これはもう見過ごせない。
「唯ちゃん」
「えっ……あ、はい」
「そんな鬼宿でいいの?」
「え?」
「そんな操り人形に成り下がった鬼宿に愛されて嬉しい?」
「え……」
「操り人形か……言ってくれるじゃねェか」
鬼宿がヌンチャクを構える。出来るかわからない。でもこの場を乗り切るにはやってみなければ。
スッと手を前に出した。
「悪いけど今の鬼宿は仲間だと思ってないから。使い方知らないからどうなっても知らないわ」
「やってみろよ」
ヌンチャクが飛んでくる。それと同時に手を横に振った。途端に塀のように目の前に岩が出現する。
「で、出来たっ」
それでも私は実践には向かない。すぐにその壁を乗り越え、間近に鬼宿が接近してきた。
「ッ……!!」
「フッ……遅せェよ。それとも今、続きして欲しくて壁を作ったのか?誘われたんじゃあ応えねェわけにはいかないよな」
ムカッと来た。17の男が誰に迫ろうとしている?冷やかしにしか思えない!
「奏多!」
今すぐにでも唇が奪われそうになる中、透の声が聞こえた。すぐに鬼宿が呻いて離れる。
「くっ……こいつ、破壊の力……使いやがったな……ッ!!」
「これくらいで痛がってるの?弱いね。強くされないうちに行ってよ」
奥歯を噛み締めながら鬼宿は唯に支えられながら部屋を出た。
嵐が…過ぎ去った……。
「……ハァ………透くん、助かった……」
「大丈夫?」
「うん。鬼宿……完全に操られてる。私、行かなきゃ。美朱ちゃんを治せなかった」
「治す?それが奏多の黄龍の力?」
透が興味いっぱいという目で聞いてくる。
そうか。再生のことは、知らないのか。
「治癒力じゃないよ。軫宿みたいに完全には治せない」
「それなら……」
「元に戻せるの。イメージしたら。再生の力と言われてる」
「再生……」
話しながらこの部屋をあとした。
急がなくちゃ……美朱が壊れてしまう前に……!