ふしぎロマンス11~キスの嵐~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「おはよ、柳宿、星宿」
朱雀廟にいる柳宿と星宿に声をかけた。目の前では星宿お付きの者の方たちが忙しなく動いていた。
「これ、儀式の準備?」
「そーよぉ。鬼宿と四神天地書が戻ってくれば、すぐに呼び出すんだから」
「うん。そうだよね……」
「ゆっくり休めたか?」
「うん。これでもかってくらい寝たかも」
「よいことだ。そなたは眠りが浅いようだからな」
星宿を安心させたい。あなたが政をしやすいようにしたい。
「あ、そうだ。奏多にいいものあげるわ」
「え?なになに?」
柳宿が布に包まれたものを出す。布を広げてみると男女が寄り添うように立つ、陶器で出来た人形だった。
「愛人(アイレン)人形っていうのよ。都の女のコの間で流行ってンの。美朱にもあげようと思ったんだけど、あんたにもあげるわ」
「柳宿……」
「いくらなんでも、好きな人がいないわけじゃないでしょ!?」
「え?えー……」
2人の視線が痛い。
好きな人。最近、それ……もっとも遠い縁だったなぁ……。
遠い目をしているのがわかったのか、ワナワナと柳宿は震えだす。
「あ、あんた……!その年で好きな人もいなけりゃ、ずっと独りモンよ!!美朱を見習いなさいよ!」
「うっ……!!」
い、一番言われたくない予言を……!!
「柳宿、よすのだ。奏多もあまり気にするでない」
「ですが星宿様……!」
「いいの……わかってる。好きになっても叶わない。叶ったこともないし、もう恋愛するほど若くない!」
「奏多……」
「あ!奏多!待ちなさい!」
逃げ出した割にはしっかり手には人形が握り締められていた。私もこれに書いて、永遠の愛を願う時が来るのだろうか。
~~~♪
どこからか、綺麗な音色が聞こえる。
そう言えば昨日の食事の時にも聞こえてきた。あの時は気に留められなかったけれど、今はわかる。
彼の音色だ。
暫く音を便りに宮廷内を探すと、彼はいた。
周りには翼宿や井宿、軫宿もいて彼の音に聞き入っている。
「やめて」
張宿に近づいてその笛に手をかけた。張宿がハッとして、音が止む。
「なんや。どないしたんや」
「……ここで笛を吹かないで」
キツめに言った私に、張宿は驚きの表情を浮かべる。
「あの……何か気に触りましたか?」
「……私には………ッ……」
わかるのよと言おうとすれば、頭に痛みを覚える。
これは言うなってことなのね……。
頭を軽く振りながら、痛くならないで言える違う言葉を口にした。
「張宿……私はあなたのこと、嫌いじゃないわ」
「え?」
「だから……考え直して欲しい……」
「…………」
そっと張宿にだけ聞こえるように、近づいて小さく呟いた。
「おい、どないしたんや!」
「何でもない。ごめん、邪魔して」
その場から離れようとすると、井宿が腕を掴んできた。
「何?」
「…………」
じっと見られると、困る。
手を引っ込めようと力を入れても放してくれない。何度か押し引きを繰り返すと横から翼宿が井宿の腕を掴んだ。
「何しよんねん」
井宿は翼宿に一瞬目を向けると、そっと手を放した。
い、いったい何?
いたたまれなくなって、今度はその場から離れた。井宿から見られると何でもバレそうで怖い。
奏多が去った後、その場の空気は重いままだった。
「何しよったんや、井宿」
「何でもないのだ」
「んなわけあるかい!なぁ、……前から聞いてみたかったんやけど」
「…………」
「お前、あいつのなんや?デキとんのか」
「下手な勘ぐりはよして欲しいのだ」
「なんやと!?」
「では聞くのだ。君はなぜ、オイラと奏多を気にするのだ?」
「……な、」
「奏多に好意があるのだ?」
「オレはちゃうで!女なんか好かん!」
「……似たようなものなのだ」
「なんやて?」
「オイラももう、人を好きになることはないのだ」
「お前……」
「それに」
張宿がハラハラと見守る中、険悪な雰囲気は縮んだ井宿によって終幕した。
「オイラは彼女の“ますこっと”らしいのだっ」
「………は?ます……なんやて?」
「意味はわからないが、男として見られたことはないのだ」
「は、はぁ……そうなんか。そら、ちと気の毒やな」
翼宿は殺気立ってたのがアホくさくなったのか、ドカドカと去っていく。井宿もいつの間にかいなくなり、残された軫宿はポツリと呟いた。
「井宿。なんとなくお前がその姿になるからだと……思えるが……」
どうだ?と張宿に目をやれば、聞かれた張宿は困った表情を浮かべた。