ふしぎロマンス11~キスの嵐~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「し、知ってた?」
「うん」
「だって、あれ……少女漫画……よ、読むの!?」
「ぷっ……おもしろい顔。そうだね。少女漫画だね」
透は体を離し、口に手をやって笑いを堪えている。
「学校で君が友達と話してるのを聞いてたんだ。部活が終わって、楽しそうに話してた」
確かに学生時代、あるふとしたきっかけで友達と会話が弾んでいた時がある。
「最初はなにを話してるのかなって気になった。ある時、漫画を友達と持ち寄って読んでる時もあった」
あった。そんな時もあった。
懐かしい思い出が蘇る。
「また気になって近くに寄ってみたんだ。友達は俺に気づいたけれど、君は近づいても気づかないほど熱中してた。ある時は……笑ったり、悲しんだり、驚いたり、涙声になって熱弁してた」
「……う、うそでしょ」
「黙って見ててごめん。見てるだけで楽しくて」
こ、この驚きをどうすれば……!
学校中の憧れになるような人に興味を持たれていたとは……!
きっとその時一緒にいた友達も驚いたはずだ。
熱弁していたところを見られていたなんて……恥ずかしくて顔を上げられない。
今、めちゃくちゃ赤くなってるに違いない。
「ふむ、その顔は初めてだ。そんな顔もするんだね」
「と、透くん……ちょっと色々忘れて欲しいんだけど……」
「忘れられないよ。俺の大切な思い出だからね」
くっ……心臓ヤバイ……っ。
イケメンの破壊力……!
「それで君の好きなものを知りたくて、君と話がしたくて、君が読んでた本も読んでみたってわけなんだけど」
「っ……」
何が起こってるの?
何この甘酸っぱい感じは!?
「あ……えと……あの……」
こ、れは……顔が熱い。
「ふふ、おもしろいな。なんだ。嫌われてるわけじゃなかったみたいだ」
「……………へ?」
なんで?なんでそんなこと言われるの?
「クラスでも部活でも必要以上に話せなかったし、名前もやっと呼ばせてもらえたし。君はいつだって俺から目を逸らしてた」
「そ、それはだって……!」
恥ずかしくて話せなかったり目を合わせられなかったり……そういうの、イケメンを前にしたらよくあると思う!!
言いたいけれど、もう情報過多すぎて頭が回らない。
落ち着いて。もう私もいい大人よ。大人な対応だってできる。
そうだ。私は……やらなきゃならないことが……ある。
残念だけど、今は浸っている場合ではない。
……とても残念だけど。えぇ、とても。
「奏多?」
「透くん……知ってるなら……協力してくれない、かな」
「…………」
「唯は美朱が離れていくことが寂しいだけなの。そんなことはないってわかってもらえたら……!」
透の顔を伺い見る。スッと笑顔が消えていた。
「俺もそう思った。だから、それとなく説得もしてみた。まだ子供だ。傷つけたくはない。でも……彼女の傷は深い」
「そんな……!もっと何かやれるかも!」
「彼女は朝から迷ってるよ。何を迷ってるかはわかるよね」
「ッ……!鬼宿はどこ!?教えたいの!鬼宿さえ、唯に気をつけててくれれば……!」
透の袖を思わず掴む。
頭一つ分以上は背の高い透の顔を見上げた。
「君は……こういう時は俺を見るんだね」
透は一度目を伏せ、それからふわっと微笑みかけてくれた。
「俺たちは今夢を見てる。夢を通して話してるんだ。だから、夢の中は……自由だ」
「それって……」
「願えば、なんでもできる」
行けるんだよ。そう言って私の頬をひと撫でする。
途端にボンッと顔が熱くなるのがわかった。
「あ、……え……?」
「伝えるだけ伝えるといい。未来が変わるかは……わからないけれど」
まただ。透は憂いを帯びた顔をする。
儚い。行かなくちゃいけないのに、離れたくなくなる。
「またね、奏多」
その声を聞きつつ、後ろ髪を引かれながらも暗闇の中に駆け出した。