ふしぎロマンス10~哀しみの序曲~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「この先、起こることを聞いておきたいのだ」
私は未来を知る者。いつか、きちんと聞かれると思っていた。
部屋に入り、互いに正面を向いて顔を突き合わせて座った。見られていることに耐えきれず、目をそらした。
「言わないのだ?」
「…………」
いいえ、違う。“言えない”の。
正直言うとこの部屋に入ってからずっと頭が痛い。
ズキズキする痛みが、話したいことを口にしようとする度に襲いかかってくる。
何が起こったんだろうか。こんなの、初めてだ。
「奏多」
「井宿……ごめん。限界……ッ」
ついに、頭を抱え込んだ。
痛くてたまらなくて、体をくの字に曲げる。
「奏多?」
異変だと気づいた井宿が近寄る。
「どうしたのだ。頭が痛いのだ!?」
「……ッ………」
やっとの思いで首を立てに動かした。
井宿が部屋を出ていく。すぐに軫宿を連れてきた。
「すぐに治す」
「……ッ……ハァ……ッ……ハァ……」
軫宿に返事ができないほど、頭が痛い。軫宿は私の背を支え左手を頭に添える。
痛くて痛くて堪らなかった。話したいのに、話せなくなるほど。
次々に他の七星も集まってきた。
「井宿、どうしたというのだ」
「ちょっと!奏多に何があったの!?」
「お前ー!こいつになんかしたんとちゃうやろなぁ!!」
星宿、柳宿、翼宿が口早に聞く。
違う。井宿は悪くない。
「ま、待って……」
「まだ痛むか?」
「軫宿……」
軫宿からの力で、痛みはすっかり消え去っている。
それなのにまだ痛みがあるような感じがする。錯覚だと思うのに、余韻の痛みがしぶとく残る。
「ちょっと、経験したことのない痛みだったから……うん……。もう、大丈夫」
軫宿に笑いかけて立ち上がる。
「ごめん。みんな……井宿も、驚かせてごめんなさい」
「もう平気なんか?」
「軫宿に治してもらったもの。平気よ」
「顔、真っ青よ?少し休んだほうがいいわ」
「大丈夫。そろそろ美朱ちゃんも準備できるだろうから」
「奏多」
皆が心配する中、井宿の声が響いた。目を向けると、真剣な面持ちをしている。
「……話せないのだ?」
「…………」
「先のことを、話せない。そうなのだ?」
お見通しだった。口に出すことが出来ないほどこれからの事は教えるな、と誰かが拒んでいるのか。
誰が拒む……?
そんなの……決まってる。
私に力を貸す、黄龍の仕業だ。
準備が整った美朱の元へ行こうとする井宿に声をかけた。
「井宿」
「………」
背を向ける井宿は振り返ってはくれなかった。
「伝えることは出来ないみたいだけど、わかるから……連れて行って」
「……嫌なのだ」
「そんなこと言わないで、お願い」
「君が」
井宿の手が握り拳になっている。
すごく……何かに耐えさせている。そう感じ取れた。
「君がそこまで頼み込む時は、きっと相当な時なのだ。むざむざ殺られに行く必要は無いのだ。ここに……」
「それが嫌だって言ってるの!!」
低く、冷たく言い放つ井宿に重ねるように言葉を投げかけた。
「美朱ちゃんを護らせて。翼宿も……護らなきゃ」
「翼宿?」
井宿がようやく体をこちらに向けた。
「これは話せそう。痛くならないもの」
「……奏多、一体どういうことなのだ」
「翼宿もついてくると言うわ。美朱ちゃんはそれを拒めない」
「……4人は流石に多いのだ」
「でも私と美朱ちゃんは必ず行くから、井宿だけでは不安じゃない?」
「…………」
この苦虫を潰したかの表情。どうやら彼は折れてくれたようだ。
ある一室に、井宿と美朱が入っていった。
この中にある屏風を鬼宿の部屋とつなげるらしい。
これだけで考えると、井宿の術は空間をも操れるのだからすごいと思う。
「美朱、会えたかしら」
廊下で待つ中、柳宿がポツリと呟いた。
「会えてるよ。2人の想いは最強だもの」
「そうね」
美朱は喜んでる。
でも……今夜鬼宿は、鬼宿でなくなる。
胸の前で、ぎゅぅっと手を握りしめた。
どうか少しでも美朱の心が癒されますように。
そう願わずにはいられなかった。