ふしぎロマンス10~哀しみの序曲~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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翌日、鬼宿の村を後にし私たちは7人という大人数で宮殿へと向かった。
馬で移動する分には大した距離ではない。でも今、馬は1頭しかいない。星宿と美朱に乗ってもらい、私たちは隣を歩いた。
連日、酷使し続けた私の体は限界を迎えようとしている。もう既に筋肉痛になりまくり、その痛みを癒す時間はなくまた筋肉を使っている状況だ。
「1ついい点は、体が引き締まったってことだけだわ……なんて健康的……」
私の呟きにも聞こえる独り言に、いち早く柳宿が反応する。
「あんたは持久力がないのよ。聞いたわよー。走るのも遅いんですって?」
「……別に普通だから!私、もう若くないの!」
「あーら、やだ。何でも年を言い訳してるんじゃないわよ」
「う……それはそうだけど……」
勘弁して欲しい。
ここまでよく長距離を歩けるようになったもんだと逆に褒めて欲しい。
いくら何でも今からアスリート並の体力なんてつくはずもない。
「奏多さん、あたしと代わる?」
「あ、いいの!美朱ちゃんに譲ってもらってまで自分を甘やかそうとは思わないわ。気遣わせてごめんね」
「いいのに」
「ううん、大丈夫よ。ありがとう、美朱ちゃん」
ほんとにいい子。
危ない危ない。悪い大人の見本を見せるところだった。
「せやけど、年、年言うけど、そないオレらと変わらへんやろ」
んっ!?
「んまっ!!あんた、それ言ったら奏多が……あ、遅かった」
柳宿の言うとおり翼宿の言葉を聞いた瞬間、翼宿の頭をなでなでしていた。
「たーすーきー!!いい子!!」
「はっ!?何すんねん!!」
背が高くてあんまり撫でられなかったけれど、気分がいい。これで良し。
「翼宿ー、奏多は28よ?」
「「「!!!」」」
「あっ!!別にバラす必要ないよね!?」
柳宿によって、翼宿、軫宿、亢宿……いや、張宿に年がバレる。
「俺より上だったのか……」
チラ、と軫宿が見てくる。
えぇえぇ、どうぞ見てくださいな。私だって軫宿が22ってこと信じられませんから。
落ち着きすぎ。貫禄ありすぎよ。
「どーりで鈍くさいはずや」
「今さら年で皮肉言われても堪えないわよ?大人ですからね、ガキんちょ」
「なっ!ガキやて!?」
余裕ぶって答えると翼宿は顔を真っ赤にさせて反論してくる。
柳宿が「そーゆーところがガキって思われるのよ」と呟いた。
長く果てしない道のりになるかと思っていた宮殿には夕方にはたどり着いた。
段々と近づく宮殿に、翼宿と軫宿、張宿は目を丸くする。
「なんでこないなとこ……なんか用事あるんか?」
「ここに井宿がいるのよ」
「ちちりやて?」
「井宿には世話になってしまったな」
「たまにはよろしいんですのよ~」
柳宿が星宿の腕に縋り寄せる。
それを翼宿が目にすれば、「男の癖になにしよんねん」の一言に殴り飛ばされた。
「翼宿も懲りないね」
「あんなやつ放っといて行くわよ。あんただって井宿に会いたいでしょ?」
「え?」
「井宿さんってどんな人なんですか?」
張宿が聞いてくると、思わず体が固まる。
ダメだ。彼は張宿。今から井宿に会うというのにこれでは嘘だと悟られてしまう。
私は本来の張宿の姿を思い出し、目の前の張宿に笑みを向けた。
「少し、変ってるかも」
「変わってるんですか?」
「どんなヤツや?強いか?」
「うん。井宿は術を使えるし、しっかりしてる」
「井宿のことなら奏多に聞いちゃいなさい。付き合い長いからよく知ってるわよ」
何を言い出すんだろうか、柳宿は。
「付き合い長いっちゅーても、こいつ、この世界の人間ちゃうんやろ」
「そうよー。でも、奏多がこの世界に来て面倒見てたのが井宿なのよ。だから、あたし達よりも一緒にいる時間長いのよ」
「それでも数ヶ月だけど……」
これでは何年もいたように聞こえる。
そっと横から修正を入れた。
「奏多、見知らぬ世界に来て大変だったな」
横を歩く軫宿が、ポンと肩に手を置いてくる。それを見上げて、行いがもうお兄ちゃんじゃない、とわずかに微笑んだ。
門をくぐると、星宿はスッとどこかに消えていった。井宿が身代わりで皇帝陛下の役をしている手前、今、自分の身分を知る人に出会うのはまずいと思ったのだろう。
柳宿や私の顔を知る武官や文官とすれ違うと、あたりがざわめき出した。
「これは一体……」
軫宿も何かおかしい、と気づいたのかあたりを見回す。どうしてこうも柳宿はスタスタ中に入っていこうとしているのだろう。行けるのだろう。
そう思いはじめたようだった。
宮殿を抜け、政をする宮廷に向かう。そこに井宿はいるはずだ。