ふしぎロマンス10~哀しみの序曲~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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ここのところ見ていなかった夢を見た。眠る前に思い出したからだろうか。
また目の前で4つの光が消える。
この世界にある限りずっとこの夢を見せられるのだろうか。見れば見るほど体が震えるというのに。
でも今日は輝き続けていた残っている3つの光も一瞬、揺らいだ気がした。
目を凝らすとやはり消えようとしてはまた光り輝いた。
その現象を見て、心臓がドクンと鳴り響く。
どうしてその光たちまで消えそうになるの……!?
思わず駆け出す。近寄って確かめなくちゃ。
光り輝く姿を確認して安心したい。
走ってまた走って息が切れ始めた頃、初めて光のそばまでやって来れた。
目の前でポワッと浮かぶ光。
そっとその光に触れると、視界が一変した。
あたりはまだ暗いままだった。
でも明らかに今までいた夢の中とは違う場所だった。
歩みを進めていくと、暗闇から薄暗い闇へと変わる。
牢屋。
この景色はこの言葉がよく合う。そう思った時だった。前方から叫び声が聞こえた。
『うああぁぁっ!!!』
初めて夢の中で声が聞こえた。夢なのに穏やかではないその声に、緊張しながらも歩みの速度が早くなる。
近づくと牢の中で両手足を吊るし上げられている鬼宿の姿があった。
鬼宿の前にはあの心宿の姿も見え、咄嗟に物陰に隠れる。
これは……何?私はどうしてこんな夢を……。
鬼宿が倶東国へ行ってしまったから?だからこんな夢を見てしまうのか。
でも目の前に広がる光景はいつもの夢のような抽象的ではなく、妙にリアルだ。まさかこれは……現実?
戸惑っていると心宿がまたも鞭で鬼宿を痛めつける。叩きつけたところの皮膚が裂け、血が肌を伝う。
「鬼宿……!!!」
思わず声を出してしまった。だが心宿は振り返ることも牢にしがみついて様子を見ている唯も気づく事はなかった。
ただ……俯いていた鬼宿だけが……ふ、と顔をこちらに向けて笑った。
気づいた……?
真意はわからない。でも先ほど確かに鬼宿と目が合った。僅かに微笑んだことで、心宿が「気が触れたか」と言っている。
これはやはり私の夢だ。心宿や唯には見えないし聞こえていない。でも……鬼宿には見えている。
私の願望なのだろう。
『愚かな男だ。貴様だけでなくあの者も連れてさえ来ていれば……今からでも遅くはない。呼び寄せろ』
心宿は鬼宿の顔を鞭で上げる。
私を呼び寄せろという心宿に舌を出して「嫌だ」と言った。
途端に鞭で打たれ、悲痛な叫び声が響きわたる。
「鬼宿!!も、もういいから!これは夢!私を呼ぶって言っていいから!!」
夢の中だけでもこの惨劇から早く解放してあげたかった。呼ぶと言えば済むはずだ。
それなのに鬼宿は心宿にわからないよう、小さく首を横に動かす。
そして、独り言のように呟きだした。
『美朱……美朱は大丈夫か……』
『フッ。まだ朱雀の巫女を口に出すか。よほど打たれたいらしい。朱雀の巫女も死に至る奇病を発したと耳にした。時間の問題だろう』
違う。
違うよ。美朱はもう大丈夫なんだから。
鬼宿が不安げに私に目を向ける。
安心して欲しくて、精一杯笑って頷いて応えた。
「美朱ちゃんは大丈夫。七星もあと1人」
声が届いたのだろう。
今度は本当に、鬼宿がふわっと笑った。
怪訝に思ったのは心宿だった。
視線があらぬ方を見ていたかと思うといきなり笑ったのだ。
何を見ていたのか……視線を鬼宿がみていたであろう場所に向けるものの、やはり私は見えなかったのだろう。すぐに鬼宿に目を向けると、また鞭を振り上げた。
『貴様は“貢ぎ物”だ。唯様のためだけに生かされている。覚えておけ』
何度も、何度も打ち付ける。
ごめんなさい。ごめんなさい、鬼宿……!
何もしてあげられない。夢の中でさえ助け出すことも出来ない。
手で顔を覆って涙する。鬼宿も打たれ続け、意識を手放した。
その瞬間、私の周りが光る。次に目を開けた時には、不安げな表情を浮かべている4人の顔があった。