ふしぎロマンス10~哀しみの序曲~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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軫宿が仲間に加わり、ぞろぞろと山道を歩いた。
日も沈み、どうやら今夜はここで野宿になりそうだ。
翼宿が火を起こし、軫宿が途中の川で捕った魚を焼く。
美朱の大荷物から出された塩をふりかけ、その日の夕食はすんなり終わった。
みんなそれぞれ適応能力、高いなぁ……。
どれも普通なことと言わんばかりにことが済んでいく。
美朱の性格ではすぐに慣れるのだろう。
翼宿に至っては山のことはお手の物、と言った感じに生き生きとしている。
私がおかしいのだろうか。そう思っていると、いや、違った。
1人、そわそわとしている人に気づく。
「星宿?」
「!……奏多か」
「さっきから行ったり来たりしてるけれど、どうしたの?」
「あ……いや……」
この声に少し離れたところから翼宿が大声で「小便ならこっちでやったらええでー」とかなんとか言って、柳宿に殴られている。
「断じて違う!」
「星宿、無理は……いずれ来る問題だし」
「違う!!」
そんな必死に言わなくても……。
「私はただ……この状況を受け入れようとしているのだ」
「……こんなこと、初めて?」
「そうだな……幼い頃から、外へはあまり出れなかった」
「宮殿に帰りたい?恋しくなっちゃった?」
「そんなことはない!こうして、そなたらと旅をして国を見て回れて、私は幸せだ」
「宮殿のように整ってなくても?」
「無論だ」
真剣な面持ちを見て、嬉しく思う。
星宿がこの国の皇帝で良かった。この国はこれから栄えるだろう。星宿がいるのだから。
「私も、星宿と同じ」
「奏多も、か?」
「うん。私の世界はすごく整ってた。何でもあった。でも……今の方が“生きてる”って思える」
「生きてる、か……」
「星宿も、自分がしたいことをしたらいいと思う」
「奏多……そうだな。今は、井宿が私の代わりを務めていてくれているからな」
「うん!そうだね!せっかくだから楽しんじゃお」
少しでも好きなことをして欲しいと思う。
若干18歳なのだ。私の知るこれからの未来は、星宿も短命。絶対にその命、守り抜かなくては。
ここにいるみんなに目を向ける。
7つの光のうち4つが消える……。その4つの光の持ち主が今、ここに3人いた。
どの人もなくてはならない人。もうこの人達がいない世の中は考えられない。
夜も更けて美朱と奏多が寝入った頃、その場にいた星宿と柳宿が目を開ける。
「2人とも眠ったか?」
「えぇ。ぐっすりと」
柳宿は美朱と奏多の寝顔を確認する。すると横になっていた翼宿がムクリと起き上がった。
「なんやお前ら。何する気ィや?」
「翼宿……あんた起きてたの?」
「あんなぁ、オレかて気配っちゅーもんを……」
奏多とのことを思い出したのか呆れながら答える。するとすぐに、木にもたれ掛かって目を閉じていた軫宿も目を開けた。
「俺も起きている」
「あら、やだ。星宿様、みんな起きてますわ」
「そのようだな」
柳宿と星宿は目を合わせて微笑んだ。
「は?見張りやて!?」
「そ。野宿の時はさすがにみんな寝てたらまずいでしょ。だったら交代で見張りをすればいいって、なったのよ」
「それなら俺にもさせてくれ。あんたらだけでは心配だ」
「せやな。女みたいなヤツよりオレらが見張っとった方がええで」
「あら、私達が美人ってそう言いたいのね~!やだわ、オホホホホ!」
「あだだっ!痛いねん!笑いながら叩くなや!!」
柳宿が翼宿の背をバシバシ叩くと翼宿が声を上げた。その声の大きさに、奏多が身じろぐ。
「よさぬか。美朱と奏多が起きてしまうぞ」
星宿が2人を止めに入る。しかし、奏多の身じろぎは寝返りやら首を大きく左右に降ったりと大きくなった。
「なんや!?」
「うなされている」
軫宿がそっと近寄る。体には異常は見られない。
「夢を見てるんだわ」
「夢、か……奏多はよく見るのか?」
「はい。詳しくは教えてはくれませんがいい夢ではないようですわ」
「そうか」
星宿が神妙な面持ちで見つめる。
「なんや、さっきより酷くなっとるで。何も出来へんのか?」
これには軫宿もお手上げだ。悪夢でうなされることを治せるわけがない。
男達4人は顔を見合わせた。