ふしぎロマンス9~治癒~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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目を疑いたくなる光景だった。
少華の背中から化物のような物体が飛び出てくる。
何本ものうねりのある触手のようなものが、そばにいた美朱そして私に絡みつく。
「な、なんやアレは……!!」
「奏多!美朱!!」
体が浮かび上がる。
シュルルルル……と手、足、首、胸に巻き付く。
そのなんとも言えない感触にぞわぞわっと鳥肌が立った。
「……この手のものは苦手なのに……!!」
服の合わせ目から中に侵入してくる。もうこうなったら涙ものだ。
「いやっ……!!」
「奏多!」
叫びにも似た声が上がる。
柳宿が駆け寄ると、その怪力で引き千切ろうとする。
「くっ……なんて頑丈なの……!」
「うっ……ぬりこ~……!!」
「大丈夫よ!すぐに助けてあげるから!!」
その真剣な眼差しに、大きく頷いた。でもその柳宿にも触手は襲い掛かる。
「柳宿!」
「くっ……!!」
見れば星宿も翼宿にも絡み付いている。
その中でまだ襲われていない軫宿は、少華のその姿を見て目を見開いていた。
「それは……“病魔”か!!お前……取り憑かれていたのか!!!」
「……ごめんなさい……!」
さみしくて、悲しくて……そう、少華は言った。
少華は少し軫宿に歩み寄り、早く……と訴える。
軫宿が意を決したように左手に巻かれてある包帯を取った。
軫宿の手のひらに蛍の光のような綺麗な光が集まる。
「病魔、滅消ーー!!!」
病魔に向けて手をかざすと、光が無数に飛んでいった。
病魔が消え去った瞬間。
少華さんはとても綺麗な笑みをしてした。
「……この家も幻だったか……」
部屋だと思ったところが荒れ果てた景色になった。
触手も消えたことで浮いていた体が落ちる。衝撃が来るだろうと体を竦ませると、ドサッと落ちると何かが下にあった。
「……ギリギリ間に合ったな……」
その声に反応して顔を上げると、目の前に安堵の表情を浮かべている翼宿の顔があった。
その近さにグッと体が硬直する。
あの一瞬で、翼宿は私の下に入り込んで受け止めたというのか。
「なんかもう、ほんと……超人的なこの現実に頭がついていかないわ」
「人に乗ったまんまで、なに言うてんねん。早うどけや」
「あ、そうね。ごめん」
モソモソと起き上がって、あたりを見る。
美朱も星宿に支えられ座り込んでいた。
「どうだ、美朱。見えるか?」
「……ダメ。やっぱり見えない」
「何だって!?そんなはずは……!」
美朱が手を自分の前に掲げる。
そこに軫宿が近寄ると膝をつき、視線を合わせた。
「大丈夫だ。病魔の近くにいすぎたせいだ」
そう言うと美朱の顎に手をかけ、顔を上げさせる。
その目に自分の左手をあてがった。
先ほど病魔に向けた時とは違う、優しい光が立ち起こる。手に集まると、その光が美朱を優しく包み込んだ。
「あ……み、える……朱雀の証!!!」
だんだんと視野が戻ったのだろう。
軫宿の手のひらの文字を捉えると、その手を握りしめた。
もう大丈夫だ。
「軫宿」
「…………」
横たわっていた少華を抱き起こす軫宿に声をかけた。その瞳から、一筋の涙が見える。
「あの……たくさん力使ってたけど……大丈夫?」
「ああ。何をしたのか知らんがお前からの施しの力でな」
「そっか……あの、今度は少華さんの服を綺麗にさせて?」
「そんなこともできるのか……」
軫宿はその場にしゃがんでくれた。
私のことはまだ話していないのに、そうしてくれたことが嬉しく思う。
そっと両手で破けてしまった服に触れた。
少華さんの元の姿を思い浮かべる。優しく微笑んだあの姿を。
唇をつけると軫宿の力のように、黄色の光がその場に集まる。
少華の体の全てを光が包み込むと、光が消え去った時には、少華の服は見事に再生されていた。
「少華さん、すごく綺麗……」
眠るように目を閉じる少華を見つめる。こんな風に一途に人を想える人になりたい。