ふしぎロマンス9~治癒~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「星宿!ダメ……!!!」
「奏多!待ちなさい!!」
柳宿が私を呼び止めようとする声を振り切り、中に飛び込んだ。
星宿に飛びつくと、その背中に抱きついた。
「星宿!やめて!!あなたはそんなことしなくていい!あなたが!あなたの心が苦しんでる!!」
星宿の振り下ろそうとする剣がピタリと止まった。
悲痛な面持ちの星宿、そして苦しそうな美朱が私の方を見る。美朱とはやはり視線が合わない。
「奏多……そなた、声が戻ったのか……」
「うん。戻ったわ。治してもらったの。星宿。美朱のことは私に任せて。だからあなたは……そんなことしなくていい。美朱は死なせない」
「奏多……わ、私は……なんという事を……」
背中から離れ、その背を撫でる。小刻みに震えていた。
どれだけ辛いことなのだろう。星宿は、美朱を愛しているというのに。
「美朱ちゃん。あなたから離れていてごめんね」
「ううん。よかった……声が出るようになって……ッ」
美朱が苦しそうに息をつく。
あぁ、あんなに元気な子がずっと横になっているなんて。こんな姿は見ていられない。
「目は触れられないから治せないけれど、体は治せるわ」
すぐに治そうと美朱に近づく。
でもその時、ものすごく嫌な気がして、足がピクリとも動かなかった。
「……さ、せないわ………」
その声は、部屋の入口から聞こえた。
振り返ると、そこには体をブルブル震わせ立ちすくむ、少華の姿があった。
その少華の顔がカッと変わる。
目は大きく開かれ、口も大きく裂けていた。
次の瞬間、少華が目にも止まらぬ速さで私の前にやってきて、頭を掴まれる。
驚く間もなく、至近距離にまでやってきたその姿に体が竦み上がった。
ギリ……ギリギリギリ………
「い、痛ッ………!!」
「奏多!!その娘から離れろ!!」
星宿が剣を構えた。尚も頭を掴む力は止まない。
あまりの痛さに視界がボヤけ始めた。
その時だった。
一際低く、太い声が聞こえた。
「よせ!少華!!」
見れば身なりを整えた軫宿が、入口に立っていた。
「って、誰よこの男……」
柳宿のこの疑問も納得できる。
まだ私と翼宿以外、面識がないんだった。
「お、おま……まさか……あのオッサンなんか……!?」
翼宿が感づいたのか体をわなわなと震わせる。
「俺は妙 寿安。七星名は軫宿」
「七星!?じゃ、玉が示してたのはあんたなのね!」
軫宿が自ら打ち明けてくれた。
柳宿も星宿も喜びの表情を浮かべる。
「少華……この街に病を広げたのはお前か……人の精気を吸い、喰らう妖怪になったと言うのか……」
軫宿の静かな声が響いた。
その声がとても信じ難いものを、無理に理解しようとしているものに聞こえた。
「ちょっと、何アレ!どーなってるのよっ!」
「めっちゃ気色ワルイやんけ!!」
柳宿と翼宿が外にワラワラ群がる村人が入らないように窓を締める。
「操られている死人だ。そうだろう、少華……」
この2人に包まれる空気は、とても儚い。
少華はもう、あの綺麗なお姉さんの面影はない。
それでも……私の後ろから感じる気配は、全てが妖怪のものとは思えない。
少華がポツリと話し出す。病に倒れた時、待っても待っても軫宿は来なかった。寂しかった、と。
衰弱し最後かもしれないと思った時、愛する人に会えないのはどれだけ辛いことなのだろう。
私にはそんな経験が無い。でも彼女は……それを経験し、苦しんだのに、今もなお苦しんでいるんだ。
「少華さんを殺さないで!!」
美朱が起き上がるのも辛いというのに、バッと私たちの前に立ち塞がった。
美朱にはわかるんだ。少華の想いが。
「少華さん!悲しいからって好きな人と戦っちゃダメだよ!正気になって!少華さん!!」
「美朱……さん……」
美朱の声にハッとするかのように、頭を押さえつけていた手が離れる。
振り返ると、その姿はあの美しい少華に戻っている。
だけど、それもすぐに消え……背中から異様なものが出現した。