ふしぎロマンス9~治癒~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「こんなことなら馬でも借りとれば良かったなぁ」
軫宿の家を出て、翼宿と走る。翼宿が隣で哀れみにも聞こえる声で呟いた。
「ホンマ、アホみたいに遅いんやなぁ……」
チラリ、と目線が送られる。その顔を逆に睨んでやった。もう声は出るようになったのに、先程からはゼェゼェと言った荒い息しか吐けない。
わかってほしい。
私は、年相応な普通の人間なだけ。周りにいる者達が、異様なまでの体力の持ち主なだけなんだ。
「なぁ……怒るんやないで?」
「……?」
翼宿が私の手を取り、ブンッと上に持ち上げた。
腕が上がった私の懐に翼宿が身を屈め、入り込む。
何が起こったのかと思ったら、グンと視界が高くなった。
「翼宿!なに!?」
「遅いねん!夜が明けてしまうわ!徹夜させる気かい!」
翼宿の声が後ろから聞こえる。
私は今、どんな格好!?
体が“くの字”に曲げられ、お腹は翼宿の肩に圧迫され、目の前は翼宿の背中が見える。
「担がれてんの!?」
「この方が早いで。なんや、睿けんの時のことを思い出すやんけ」
確かに翼宿に担がれるのは2回目だ。
よいしょ、と抱え直すと、翼宿は走り出した。
私を担いでいるというのに、さっきよりも早いというのは……どういう事なのだろう。
「……理不尽だわ……頑張って走ったのに」
「ああ!?なんか言うたか!」
「なんでもなーい!ちょっと苦しいけど楽だな、って思っただけ!」
「なんやとー!!楽せんと、筋力つけぇ!」
これは無理な話だ、と聞く耳を閉ざした。
頭に血が上りそうになるのを、必死に頭を持ち上げて耐える。
あぁ……これはこれで腹筋と背筋が限界……。
プルプルと震えてきた。明日は筋肉痛だろう。
……走ってないのに。
「着いたで。ほれ」
少華の家の前に着いて、翼宿が私を下ろす。
「ん?どないしたんや。変な顔しとるで」
「ちょっと……酔った」
「酔ったァ!?」
まさか、と言わんばかりに大きく口を開け、驚いている。
うん。私もまさか、と思った。
でもずっと上下に揺れ、しかも自分からは後ろに下がっている感覚。
進路方向と逆に流れる景色に酔っていた。
「弱っちぃヤツやのう……」
「返す言葉もないわ」
家の中に入ろうとする翼宿がピクリと反応。あたりをキョロキョロし始めた。
「翼宿?どうかした?」
「なんか……おかしないか?」
そう言われてあたりを見回す。
特別変わったことはないように思える。寝静まった街という……。
「あ、れ……?」
「そうや。なんで、この家だけ灯りがついとるんや……?」
翼宿と目を合わせる。
何か嫌な予感がして、私達は中へ急いで入った。
美朱たちが寝ているであろう、部屋の前に柳宿、そして少華がいた。
「柳宿!」
「奏多!?あんた、声……!」
私たちに気がつくと、柳宿が駆け寄り、口早に言った。
「今までどこに行ってたのよ!大変だったんだから!美朱が急に熱も上がって、手足も動かなくて……それはもう生き地獄よ……!」
そんな……
どうして………。
「そ、それで美朱は……星宿は……?」
嫌な予感は当たった。
柳宿の曇った表情を見れば、何をしようとしているかがわかる。
バッと部屋を見据え、考える間もなく、中へと続く扉を開けた。
扉を開けるとそこには剣を掲げ……
今まさに振りかざさんとする星宿の姿が目に入った。