ふしぎロマンス9~治癒~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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医者探しは夜が開けてからとなり、少華の家の一室を借りて休むことになった。
暫く目を閉じ、様子を伺う。美朱と柳宿の寝息はすぐに聞こえてきた。
顔を上げると、星宿も規則正しく胸が上下している。
翼宿は……と思って顔を向けると、目の前でムクっと起き上がった翼宿と目が合った。
「ッ………!!!」
声が出なくてよかったと思う。
あんぐりと口を開けるものの、驚きの声は息となって吐き出された。
(び、びっくりしたーっ!!!)
暗闇の中で睨みにも似た目線を向けられていたら、さすがに心拍数が上がる。
ドキドキさせながら、へら……と笑って見せた。
「チッ……」
(……舌打ちされたーーー!?)
しかも今度は外に向かって顎をクイッとする。
これは外に出ろ、と言っているのだろうか。
小さく頷くと、翼宿が立ち上がった後についていく。
外に出て家から少し離れると、翼宿は振り返った。
「お前……何する気ィやったんや」
「………?」
「そのすっとぼけーな顔やめろや。バレバレやで」
なぜ、翼宿は気づいたのだろう。
その思いが顔に出てたのか、盛大にため息をつかれた。
「オレはあいつらの頭になった男やねんぞ。気配が寝るヤツとちゃうことくらい、わかるわい」
あ、そういう事か。
寝るのを確認したいがために、息を殺してたのがそもそも間違ったらしい。
(翼宿、侮れない……!)
「で?何しようとしてたんや」
「…………(えへ?)」
「おい!笑ってごまかしたって、オレは引き下がらへんぞ!」
「…………」
こうなったら……撒くしかない!
「あっ!おまっ……!ええ度胸やないか!」
脱兎の如く走り出したものの、後ろから「うぉぉぉお!!」と地響きのような声と共に追いかけてくる翼宿の姿。
しかも………早い。ものすごく早い。
追いつかれるなんて、一瞬だった。
「待たんかい!女に負けるわけないやろ!!」
後ろから手首を掴まれ、グン、と力いっぱい引き止められる。
体勢を崩して、その場に尻餅を思いっきりついた。
い、痛すぎる……。
この年になって素で転ぶとかないわ。
まじ、ないわ……。
「あ、すまん……」
(すまん、じゃないからー!!済ましてやらないんだから!!)
立ち上がって睨みつけると、少華の家を指さした。
「……帰らへんぞ」
「…………(ん!!)」
「だから、指であっち行け、言うても行かんで!!」
「…………(むぅ)」
「何しようとしてたんや!どこ行く気やったんか!少しは……話せえや!」
「…………」
「……て、話せんのやったな……オレは納得するまで離れへんぞ!」
「…………(しつこい)」
こうして睨み合っていても時間は過ぎていくばかり。観念するしかなかった。
「…………」
「お?なんや、ついてくで?ええんな?」
ええも何も、もう横をついてきてるじゃないか。
コクっと頷くと、町外れを目指して歩き出した。
「なぁ、どこ行くねん。もう真っ暗やで?」
「…………」
「なんや?ハリセンがどないかしたんか……あ。」
やっと気づいたか。
翼宿がついてきた時はどうしたものか、と思ったけれど、ものは考えよう。
翼宿がハリセンで落ちていた木の棒に火をつける。
………便利ぃ~。
「拍手なんぞされたからって嬉しないわ!あ、ちょお、待ち!」
「……?」
翼宿から棒を奪い、さくさく歩こうとする。
するとすぐに翼宿が棒を持つ私の手から、そろりと取る。
「火ならオレやろ」
ニカッと笑いながらそれだけ言うと、私より少し先を歩き出す。なんだ今の笑顔は。可愛いにも程がある。
でも、これで随分と歩きやすくなった。
暫く木々の中を歩いた。
この先に家なんてあるのだろうか、と思い始めた頃に目的地は見つかった。