ふしぎロマンス1~本の中へ~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「何がおかしかったのだ……?」
「だ、だって……!年頃って……!」
「間違ってないと思うのだ」
「“お年頃”はもう過ぎ去っちゃったわ」
「だ?」
私の中で“年頃”と言うのは恥じらいがある若い頃、というイメージがあった。
まだまだ女を捨ててはいないけれど、学生の頃のように夢をただ無心に追いかけることは出来ない。
それくらい、時が経ってしまった。
「とにかく、部屋を用意してもらってくるのだ」
そう言って部屋を出ていこうとする。
思わず手を伸ばすと、井宿の袈裟を掴んでいた。
「離すのだ」
「井宿、そんなこと言ってられないんじゃない?」
「…………」
「お金は、大事だと思う」
また、盛大にため息をつかれた。
「……別に君がいいなら、オイラも構わないのだ」
「そ?よかった。それじゃ、これ、半分こしようね」
「これ?」
「そう。おにぎり」
「だ……」
井宿の袈裟から手を離し、おにぎりの包みを見せる。
全てを察した井宿は苦笑いを浮かべた。……ように思える。
この顔はお面だとわかるから表情はよくわからないけれど。
でも、半分にしたおにぎりを受け取ってくれた。
「おいしいのだ」
ここに来ての初めての食べ物。
量はとても多いとはいえないけれど、誰かと一緒に食べるおにぎりは、とても美味しかった。
2人で軽い夕食をとった後、新たな問題が発生した。
「……これ、どうやって着るの?」
「だっ?」
いい加減、砂や汗で汚れてしまった体をどうにかしたいと思っていた時だった。
井宿が用意した服を手に取る。
手触りはサラサラ。
色も白やら赤やらとても綺麗だ。
だけど……
一見、ただの布にしか見えない。
「これ……なに?帯?」
「だっ!?わからないのだ!?」
「ビラビラしすぎてるし……これが袖ってのはわかるんだけど……」
「着てるものからして、なんとなく嫌な予感がしてたのだ~……」
井宿はガクリ、と肩を落とす。
そうは言われてもさすがに着物の着付けはできない。
これはどちらかと言うと、見に纏う、が合うようだけれど。
「君はオイラが困ることばかり言うのだ~」
「順番教えて。がんばって着てみるから」
渋々近寄ってきてくれる。
井宿は指を指しながら「次にこれ」と教えてくれた。
やっぱり基本は着物。
でも重ね着が普通なんだろうか。
着物の上に袖のない着物を着て、帯を結ぶ。これが基本らしい。
「わかった。着てみるわ」
「ならオイラは部屋の外にいるのだ」
「あ、ごめんねー?」
「いいのだ」
すぐに部屋を出て戸を閉める。
こんな気遣い……現代では出来るだろうか。
さすがだ。
では、いざ!着てみよう!
「ち、井宿……」
「…………」
「井宿ー?いないの?井宿?井宿ってば!」
「何なのだ!いるのだ!」
「着たには着たんだけど……ちょっと入ってきて」
入ってきてほしいと言っても暫くは動く気配がなかった。
痺れを切らしてこちらから開けようとした所で、ス……と戸が開く。
私の姿を捉えるなり、井宿は固まった。
「な、何をどうやったら……そう着れるのだ」
「ナンデデショーネ」
「……不器用だったのだ!?」
「失礼ね!着物が複雑なのよ!」
「有り得ないのだ……」
「もういっそ、井宿と同じのでいい……」
「だっ!?男物なのだ!」
「はぁ……疲れたわ。眠たい。いや、でも体洗いたい。顔洗いたい。あ、トイレにも行きたい。歯も磨きたい」
「だ……だっ……?」
口早に言う私の要望に目をパチパチさせる。
これは……
まだまだ問題は山済みのようだ。
ほんと、別世界……大問題だわ。