ふしぎロマンス9~治癒~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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どこへ行ったのだろうか。
美朱に追いつかない。
「おかしいわね……まだそんな遠くには行ってないはずなのに……」
どうしていないのだろう。まさか、道が違う?
柳宿、引き返して。
そう言葉にしようと口を開ける。
それなのに……出てきたのは声ではなく、息だけだった。
(え……?)
思ってもいなかった違和感に喉元を押さえた。
その時、右手の方で炎が見えた。
柳宿と顔を見合わせ頷くと、柳宿は馬の手網を引いた。
炎が見えた所は思いの外、近くだった。
灰になりきれなかった、その“何か”が無数に転がっていて、決して気持ちのいい光景とは思えなかった。
「美朱!星宿様!!」
柳宿が馬から素早く降り、駆け寄る。
そしてそのすぐ横に堂々と立つ、翼宿の姿があった。
「あ、あんたが翼宿ですって~!?なんでもっと早く言わなかったのよ!ボケ!!」
「全くだ。苦労かけおって」
「しゃあないやろ。オレかて頭にならなあかんかったんや」
でもな、と言葉を切ると、私を見てきた。
ゔ……。
あれは私のやったことがバレている。
「誰かさんがえらい律儀にオレの仲間に頼み込んだらしぃからのー。デコの代わりなんや、オレは」
……げっ、そんな事まで……。
巧児から聞いたとばかりに口角をあげて笑ってくる。
「……翼宿はどこに字があるの?」
「「「!?」」」
美朱の言葉に、私以外の3人が驚く。
翼宿に至っては、ズイ、と美朱の前に腕を突き出した。
「何……言うてんねん。ほら、見えとるやんけ」
「んー???」
「美朱!どうしちゃったのよ……!」
「美朱、私の姿は見えるか!?」
「ぜ…全然……」
星宿が美朱の前に顔を出す。星宿と目が合わなかった。
「すぐに戻るぞ。少華さんならば、わかるかもしれん」
星宿がぐったりしはじめた美朱を馬に乗せる。
翼宿が乗った美朱を支え、その間に星宿が後ろに乗った。
「ほら、奏多。あんたも乗って」
「……って、オレは歩きかいな!」
「あったり前でしょー」
ブツブツと何か文句を言う翼宿に、ペコ、とごめんの意味を込めてお辞儀をした。
「……なんや、今日はえらい大人しいやないか」
「…………」
私も困っている。
自分に起き始めた異変。この状況でこれは……確実に心配させる。
「奏多?」
柳宿が怪訝な顔で見てきた。馬に乗せようとした手が止まる。
「あんた、なんで喋らないの?」
「お前……まさか……声でぇへんのか!?」
翼宿の大声で星宿も美朱も反応する。隠し通すなんてことは無理なんだろう。コクンと頷いた。
何故かはわからなかった。
星宿から熱があったのかと聞かれるものの、特に思い当たることがなく、首を捻って応えた。
(もしかして、あの時……)
軫宿が私の下腹部の痛みを消し去ってくれた時のことを思い出す。
体がだるいと思っていたのは、もしかして熱があったのだろうか。
それをわからず、痛みを消す時に一緒に熱も下げてくれて……でも完全に病は治されてなく、マヒが起こった。
(なんて……そんな漫画の中の話のようなこと……)
いや、……漫画の中の話だった、ここは……。
何でもアリだな、と思わず笑いがこみ上げてきた。
「悠長なもんね。喋れなくて不安とかないわけ?」
後ろから声をかけられる。声を出す代わりに笑って返した。
不安だとは思わない。
この病はきっと軫宿なら治せる。あの人の力を、見たら。あの優しい力を見たら……それだけで活力になる。
「少華さん!!」
「美朱と奏多を治してくれぬか!?目が見えず、口が利けなくなってしまったのだ」
ちょうど水を汲もうとしていた少華を柳宿と星宿が呼び止める。
しかし少華は自分の能力は死んだ者を蘇らせるもの。私と美朱が命をなくさない限り、どうすることも出来ないと言った。
そんなことを美朱にさせるわけにはいかない。彼女が何者なのかわかるだけに、そっと目を背けた。
「しっかりせい。他になんか方法あるやろ」
翼宿が肩に手をポンと乗せた。目を背けたことを、私が落胆したと思ったのだろう。
平気よ。
そう伝えたいけれど、言えない。コク……と小さく頷いた。
(そうね。方法はあるもの)
美朱もここの医者をあたってみようと前向きだった。普通の医者はまず無理だろう。
探してあたってみるのは時間の無駄。
でも。
美朱たちの行動を制限はできない。
だけど先に“彼”に接触できていれば……少華にとっても何かいい方向に変わりはしないだろうか。
試してみる価値は充分にある。