ふしぎロマンス9~治癒~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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美朱がぶつかった人はとても綺麗な女の人だった。
案の定、この人があの少華だった。
彼女もまた、具合が悪そうだった。
それでも村人の所へ行かなくてはと言う彼女を、美朱は放ってはおけなかった。
「私、少しここで休んでるから、行ってきて?」
本当は関わって欲しくない。
だけどこの人がいなくては……あの人も現れない。
柳宿は私についていると言ったけれど、美朱に何かあっては困る。
ううん。美朱はこれからも色んなことがある。七星は一人でも多く一緒にいて欲しい。
ここで休んでいるから、と強く訴えると柳宿はようやく承諾した。
3人が少華と共に行ったところで、道の端に避けて座り込んだ。
お腹痛い。
自分で自分のことも治せたらいいのに。
よくよく考えたら1人になるのは久しぶりかもしれない。
この世界に来て、いつも誰かそばにいた。
どのくらい経った頃か、ふと、目の前に影ができた。
美朱達が戻ってきたのかと顔を上げると、私は息が止まった。
「え………」
目の前に壁ができたのかと思うくらいの大柄な男。
髪は好き勝手に伸びて、鼻下にも顎にもヒゲが生えている。
どうして……。
どうして今、この人がここにいるのだろう。
よくよく手元を見れば、魚を手にしている。
「……座り込んで何をしている」
まさか、声をかけてくるとは……。
ぽかん……と口が開いていたかもしれない。
それだけ、こうして会えるとは思っていなかった。
「腹が痛いのか?」
「わかる……んですか?」
「先程から腹を摩っている」
あ、確かにお腹に手を当てて温めていた。
やっぱりお医者さんはすごい。
「でも、大丈夫です。女に生まれたからにはついてまわる事なんて」
「……そうか」
これだけでわかったのだろうか。
それ以上、聞いて来ることは無かった。
でも、何も聞きはしないが膝をつき、私の前にしゃがみ込みながら手に巻いてある包帯を取った。
その大きな手が、私の腹部にかざされる。なんで、と思いながらもそっとお腹を守っていた手を退けた。
暖かい光。
これが……この人の、軫宿の治癒力。
こんなに……
こんなに優しい力だなんて……。
「……なぜ泣く。まだ痛むのか」
「いいえ。もう全然、痛くないです」
「そうか」
ダメ。
行かないで。
立ち去ろうとする軫宿の裾を掴んだ。
先程までの優しい雰囲気はどこに行ったのか、見下ろされるその瞳は鋭かった。
「放せ」
「…………」
首を横にブンブンと降った。
それでも軫宿は体をひねると、簡単に私の手を裾から引き離した。
「誰だか知らんが、この村の者ではないだろう。もうお前に関わるつもりは無い。早く去れ」
一度も振り返ることなく、どんどん歩いていった。
私では彼の心は動かせない。
このまま私達と関わらなければ、この人も死ぬことはない。
でも……関わらないでいることはできない。
「ごめんなさい……きっとまた、会うことになる……」
私は死なせたくないと思いながら、こうして関わりを持ってしまう矛盾に顔を歪めた。
軫宿に出会った後、美朱たちが行った道を歩いていた。
もうあのどうにもならない痛みはどこへやら。すっかり回復している。
暫く歩いていると、馬を連れた見知った顔が前から現れた。
「柳宿!」
「あ、奏多!今、ちょうどあんたを迎えに行こうと……そのまま待ってなさいよね」
「柳宿……美朱ちゃんと星宿は?」
「それがあの少華って人、すごいのよー!」
柳宿が口早に経緯を説明する。
そのすべてが、私が読んで知っていた内容と同じだった。だったら……この後はどうなった?
「柳宿!美朱ちゃんの所へ行こう!」
「え、あんた、お腹は大丈夫なの!?翼宿の亡骸は美朱が棺ごと持ってくるのよ。待ってたらいいわ」
「柳宿……翼宿は死んでない……!!」
「え?ちょ、ちょっとどういうこと!?」
第一、棺ごとなんてどうやって持ってくるのか……
柳宿に馬に乗るのを手伝ってもらう。すぐに柳宿も私の前に跨った。
「揺れるけど、いいわね!?」
「平気!追いかけて!」
柳宿の背に腕を回してしがみついた。勢いよく柳宿が馬の腹を蹴る。
瞬く間に馬が駆けていった。