ふしぎロマンス8~山賊~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「それで、幻狼の話ってなんや?」
攻児は私を部屋に通してくれた。
ここは最初に連れてこられたところだ。上着を脱ぎ、椅子にドカッと座る。
「突っ立っとらんで座ったらどうや?あ、茶でも飲むか?」
初めて会った時とはえらく違う待遇に、思わず堪え切れずに笑いが出た。
ここの人たちは、基本世話好きなんだろうか。
「攻児」
「んー?」
「……幻狼を、下さい」
「…………」
ス、と攻児の前に膝をついて三つ指を付く。
「幻狼が必要なんです。翼宿が欲しいんです」
「……なんや、あいつを嫁に出すみたいやな」
攻児が笑った。
頭を上げずにいると、その頭に重みを感じる。攻児が手を乗せてきた。
「頭、上げてくれや。今、幻狼が来たら言い訳すら聞いてもらえへんで」
「でも……」
「オレに任せとき、言うたやろ?」
攻児が腕を引っ張りあげ私を立たせると、椅子に座らせた。
目の前に立ち、私を見下ろす目を見上げる。
「お前なら……幻狼を大事にしてくれそうやな」
「します!護ります!!」
「護るて……護るんは幻狼やろ?」
「私は巫女を護る七星のみんなを護りたいんです」
「……ややこしやっちゃな」
「自分でもそう思う」
でも、本心だ。
きっと私がこうまでしなくても翼宿は来てくれるだろう。
でもそれじゃ嫌だった。
翼宿も翼宿になるために、何かを我慢してくることになるんだ。翼宿がこの山を出ることで、ここにも影響が出てくるだろう。
「……お前はなんや、よう考え込む女やのォ」
「え?」
「こないな所で、気を許したらあかんで」
目の前に影ができる。
攻児が身を屈めたのだと、すぐにわかった。
チュッ
ん!?
オデコになんか当たった!
「な、何……っ!?」
「オレの大事な幻狼やる代わりに、ここもろたで」
「はぃ!?」
驚きすぎて声が裏返った。
見ると、ペロっと自分の唇を舐める攻児に一気に顔が赤くなる。
「お、大人をからかわないでくれる!?」
「年上なんか?」
「だいぶ上ですけど!ごめんなさいね!」
「ほな、年上もええもんやな」
「んなっ……!」
調子狂う!この人といると、ペース呑まれる!
ガタッと立ち上がると、攻児の脇をすり抜けて扉に向かった。
「い、言ったからね!幻狼はもらうから!!」
「へいへい。そこはオレのやからな」
ニヤッとしながら攻児は自分の額を指さす。
バッと私は額を隠すと、一目散に部屋に戻った。
顔が熱い。
年下の男……恐るべし!
翌朝、朝食までもらい私達は出発した。
“翼宿”を生き返らせれるかもしれないと言う人を探して、張宏(チョウコウ)に向かう。
アジトを出る際、振り返る。翼宿はまだあそこにいる。
……待ってるから。
絶対、来て。
奏多達が山の向こうに消えるまで、翼宿と攻児はその場にいた。
「さてと……ほな幻狼、準備するか?」
「なんの準備やねん」
「お前が旅立てる準備や」
「なんやて?」
攻児はフッと笑った。
「お前の代わりなんてオレくらいしか出来ひんやろ」
「攻児……」
「やったるで、ここの頭。お前がやることやって戻ってくるまでオレに任しとき」
「何言うとんのや……」
「昨日、お前を嫁に出したんや」
「はっ?」
「お前のこと、何度も“ほしい”言うやつがおってな」
「おい、何の話や」
「礼ももろたし、お前を嫁に出すことにしたわ」
こいつは何のことを言ってるんだろう。
翼宿はふと考え、ある女を思い浮かべる。
「あいつか……」
「せや。お前がいらん言うならホンマにオレの女にしてもええんやけど……」
「はぁ!?」
「今は辞めとくわ。せやから早う行きィ」
「攻児……」
すまん、と言おうとした。
それなのに、聞き捨てならないセリフが。
「あ、でもデコはオレのやからな。ちゅーすんやないで」
「なっ……なんっ、なんやて……?」
「お前をやる代わりにもろたって言うたやろ?」
翼宿は思わずハリセンに手を伸ばす。
げっ、と思っても時既に遅し。
「結局手ェ出しとるやないか、ボケー!!」
「おわっ……!からかい過ぎたわー!」
それでも、翼宿は心の中で送り出してくれた攻児に感謝する。
翼宿が美朱のもとへ追いつくまで、あと少しーー。