ふしぎロマンス8~山賊~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「さっすが星宿様よねー。さ、これで大丈夫でしょ」
「ありがと、柳宿」
「これくらいどうってことないわよ。でも、あの幻狼ってやつ腹立つわね!荒いし!」
「不器用なんだよ、きっと」
「不器用にも程があるわ!」
破片を触るのは危ないから、翼宿があんな風に行動に移したことを柳宿もわかっていた。
優しいのに不器用。
死んだと嘘をついて罪悪感に囚われているし、気になってるのに気にならないフリ。
仲間思いの翼宿、か。
それならきっと、功児が助け舟は出してくれる。任せときって言ってくれた功児。
柳宿に先に星宿の所へ行ってと伝えると、功児のもとを訪ねることにした。
「あのー、功児はどこにいますか?」
人声がすると思って中に入ると、たくさんの幻狼のお仲間と思われる人たちが食事という名の……つまりは飲んだくれていた。
お酒くさっ。
度数の高そうな匂いがする。酒は飲めないこともないから匂いに抵抗はない。
でも、さすがにこちらの世界の酒は独特で、今まで口にすることはなかった。
井宿とも飲んだことなかったな。
むしろ、飲めるんだっけ?と考え込んでいると、あれよあれよと部屋の中に通されていた。
……ん?
「あの?」
「今日はこの姉ちゃんと飲むで~!」
………え?
なんか、ものすごい盛り上がってますけど……いつの間にそんな話に?あ、私が注ぐのね。
別にそれくらいならいいけれど。
「お前はさっきから、何しとんねん……」
「え?」
「か、頭ァ!?」
頭上から声がしたかと思うと、酒瓶を持つ私の手の上に、自分の手を重ねて動きを制した。
これはもしかして……さっき破片を奪い取ったから今度は握ってきた?学習した、と言うことなのだろうか。
「たす……おっと、幻狼だった」
「今、本気で間違えるとこやったやろ」
「うん。ごめん」
今のは本気で言い間違える所だった。
なんせ私は幻狼よりも翼宿の名前の方が慣れ親しんでいる。
「お前ら……こいつに酌させるつもりやったんか」
「い、いえ……まさか、そんな……!」
「そそそそうですぜ!」
「幻狼。何もそこまで気にすることでも……」
「アホか!お前は妓女やったんかい!」
「ぎじょ……?いえ、そんな名では」
「せやろが……行くで」
「あっ……」
重なっていた手が離れたかと思うと手首を掴まれ、引っ張り挙げられた。
そのまま部屋を出て行かされる。
「待って!私、功児に会いたかったんだけど!」
「……功児やて?」
ズンズン歩く足がピタリと止まった。
危うく体当たりしそうになるところを、足にぐぐっと力を入れてギリギリ止まる。
「あいつになんの用や」
「……いや、言えないなぁ……」
遠い目を向けた時に、翼宿の手に目がいった。
あれ、怪我してたのどっちだったっけ?
手のどちらにも包帯が巻かれていない。……え、まさか………。
「まだ手当てしてないの!?」
「なんや!?」
両方の手をむんず、と目の前に持ち上げる。
あ、右手だ。
スッと赤い線ができている。
「痛くないの?」
「……なんや、これか?こんなん……」
「もう……!」
「!?」
翼宿の話なんて聞いてられない。
さっさと治すんだから、と右手を手で包み込んで、その傷口に唇をつけた。
「んなっ……!!!!」
バッと手が引っ込められる。
目の前からなくなったことで、顔を上げ翼宿を見上げた。
「ちょっと、じっとしててよ」
「な、にしてくれてんねん……!!オレの手、舐め……舐めっ……」
「舐めてないわよ。もう、あと少しだったのに」
「何がや!」
「傷、治してたの。私の力のこと言ってなかった?」
「さ、さささ再生が出来るっちゅーやつか!?」
「そう、それ。今は皮膚の状態を元に戻してたのよ」
「そないなことが……」
驚かれることには結構慣れたけれど、ここまで驚かれると、笑いが込み上げてくる。
「幻狼、可愛いのね」
「なんやと!?」
「もういいから功児がいるところ、教えて?」
そう言うと、また「何の用や」と振り出しに戻る。
困った……と思ってると、都合よく前方から功児の姿が見えた。
「あ!ついてるわ、私。じゃ幻狼。また明日!」
「ちょお!待てや!」
ついてこられちゃ面倒だ、と功児の元へ駆け寄り、手を引いた。
「早く、早く!」
「なんや?」
「幻狼のことで話があるの」
「ふーん……。幻狼ー、ちょお、こいつ借りてくで!」
「功児!?」
「安心してええで。手は出さへん」
ほな行こか、と片方の目を瞑ってくる。
幻狼は煮えきらない顔をしていたけれど、それ以上追いかけては来なかった。