ふしぎロマンス8~山賊~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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翼宿は最後まで名乗り出てはくれなかった。
頭の座についたのだから気持ちもわかる。
それにここで私が出しゃばらなくても、きっと彼は来てくれる。だから、知らないフリをした。
「今日はもう暗くなってもうたし、泊まってくやろ」
「うん……」
美朱の元気がない。
それもそうだ。 “翼宿”は死んだ、と、“翼宿”から言われたのだ。
美朱は喜んだり悲しんだり、感情が豊かな子だ。
今日も1日で沢山の喜怒哀楽をさせた。
私も……ひどい人間だ。
美朱に教えてあげたいのに、それができない。
もどかしい。
「美朱、これ、食べて。美味しいよ?」
「え!いいの!?やったー!」
これくらいでしか、喜ばせてあげられなさそうだ。
そっと自分の分の皿を美朱の前に差し出すと、ものの数秒で美朱のお腹に入っていった。
「ちょっと美朱!奏多の分まで食べるんじゃないわよ!」
「え、でも奏多さんがくれたんだよー?」
「ただでさえ食べない子なんだから、そんな子からもらわない!って言ってるのよ!」
「柳宿……“食べない子”って……お姉さんに向かって“子”はないでしょ」
「んま!なら、妹を安心させなさいよ!」
「弟じゃ……」
呟いた瞬間、柳宿の目の前にあった皿がパリン、と割れた。ただちょっと手をかけていただけなのに。
柳宿が笑いながら「なんか言った?聞こえなかったわ」と黒い笑みを浮かべている。
……やめとこ。柳宿を怒らせると怖い。
「おい、なに皿壊しとんのや」
「あ。オホホホホ!ごめんなさ~い」
「……オカマがきしょいねん」
ボソッと言ってはいけないことを呟く翼宿に、柳宿が頭の上から皿を落とした。
パリンッと高らかに音が鳴り、割れた。
「何すんじゃおのれは!!痛いやろ、ボケェ!」
「あんたが腹立つこと言うからでしょうが!」
「ホンマなこと言うたんが悪いことなんか!?」
あぁ……もう。
ぎゃあぎゃあと賑やかになったもんだ
でもこういうのを見ると年相応な子達だと思う。まだ10代の男の子はこのくらいじゃないと。
「元気がよいな」
星宿……あなたは落ち着きすぎ。
いくつよ。落ち着きすぎてあなたはあなたで怖い。
テーブルの上や下に割れて落ちてしまった皿を拾い集める。
そっと……そぅっと……。
「お前!何しとんねん!」
「ッ………」
いきなり手の中から破片を奪い取られる。
手から離れる瞬間、かすっていく感覚。チリ……とする痛み。
「奏多!?あんた、何やって……!」
「割れたから直そうと思って……そっと拾えば怪我なんてしないのに……幻狼が奪い取るから……切れた」
「お、オレのせいなんか……?」
見れば翼宿だって手の中にある破片で切れている。
「あ……」
「な、なんや………?」
近づくと翼宿が後ずさる。
見守っていた星宿が私の隣に立って手を優しく包み込んだ。
「まずはそなたからだ。そなたは両の手で触れなければ治せないのだろう?」
「それは……その通りだけど……」
「幻狼の傷も深くはない。気がかりなら皿もあとで直してあげるといい。だが私も力はある。後日ここに数多もの皿を持ってくるように手配しよう」
星宿の言葉には有無を言わせない力がある。
柳宿に処置を託すと、私と柳宿に部屋へ行くように言った。